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新作映画
 マンマ・ミーア!
『マンマ・ミーア』
〜あなたにもハッピーエンドが待っている!〜

監督:フィリダ・ロイド (2008 アメリカ 1時間48分)
出演:メリル・ストリープ、アマンダ・セイフライド、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルス・ガルド

2009年1月30日(金)〜日劇1他全国ロードショー
公式ホームページ→
 世界的な大ヒットミュージカルが映画になった。誰もが一度は耳にしたことのある親しみの持てるABBAのナンバーの数々と、母と娘がドタバタ織り成すハートフルな物語。
 舞台は、愛の女神アフロディテの泉の伝説が残るギリシャのリゾート、カロカイリ島。明日、結婚式を控えたソフィー(アマンダ・セイフライド)には、母親のドナ(メリル・ストリープ)にも婚約者のスカイ(ドミニク・クーパー)にも秘密にしていることがあった。父親を知らずに育ったソフィーだが、どうしてもバージンロードを一緒に歩きたい!と、20年前のドナの日記を手がかりに父親候補の3人の男性に結婚式の招待状を送っていたのだ。何も知らないサム(ピアース・ブロスナン)、ハリー(コリン・ファース)、ビル(ステラン・スカルスガルド)は、自分こそが父親だと思い込み、それぞれの思いを胸に島を訪れる。それを知ったドナは大慌て。ソフィーの父親探しも難航して…。さぁ、結婚式の始まり始まり!
 実際にギリシャの島でロケが行われたという、その景色はうっとりするほど美しい。宝石のような空と海の青さ、太陽の暖かさ、緑の鮮やかさ、大地のぬくもり―澄み切った空気が、どこまでもイキイキとした自然のきらめきを生み出しているかのようだ。この島では人もイキイキしている。喜び、悲しみ、愛の告白も、自然と体が動き出すリズムとストレートな歌詞が、登場人物の気持ちを奥深くまで浸透させてくれる。
 しっかりものの娘と天真爛漫な母親。理解できないこと、衝突することだってある。でも、結婚式当日、寄り添う二人の姿があった。ドナはソフィーを抱き寄せ、老眼鏡をかけて爪の手入れを始める。「あなたがいたから頑張れた」、その思いを共有しあう濃密でやさしい時間のどれだけ心地良いことか。
魅力的なキャスティングの中でも、母として、女として、何よりもドナとして、圧倒的な輝きを放っていたメリル・ストリープが素敵!

(原田 灯子)ページトップへ

 ブロークン・イングリッシュ
『ブロークン・イングリッシュ』
〜ありきたりの自分探しでは飽き足りない人へ〜


(2007年 アメリカ・日本・フランス 1時間38分)
監督・脚本:ゾエ・カサヴェテス
出演:パーカー・ポージー、メルヴィル・プポー、ジーナ・ローランズ、ドレア・ド・マッテオ、ジャスティン・セロー
ティム・ギニー、ピーター・ボグダノヴィッチ
12月〜梅田ガーデンシネマ、シネマート心斎橋、京都シネマ、シネ・リーブル神戸
公式ホームページ→ 
 30代の女性の立場というものを未だかつて体験したことはない。聞くところによると,結婚しろ,子供を産めなどと言われるし,仕事もしなければならず,身だしなみも疎かにできないという。結構大変みたいだ。そんな30代の女性の孤独感や不安感を出発点として,主人公ノラ・ワイルダーが自分自身を再発見していく過程が描かれている。そのタッチは割とドライだが,決して冷静な観察者の視線ではなく,共感を持って見守っている感じだ。
 NYという大都会で生活する等身大の女性像が映し出される。オープニングで短いショットを重ねてノラを活写していくシーンがいい。パーカー・ポージーが一人でいるときのノラを演じて,表情だけで雄弁に彼女の心境を語っている。このとき何の脈絡もなく「再会の時」のオープニングのリズムが脳裡に蘇ってきて,その後の展開への期待が大きく膨むのを感じた。ゾエ・カサヴェテスにとって初めての長編映画だとは思えない出来映えだ。
 彼女は,ジョン・カサヴェテスとジーナ・ローランズの実の娘で,わずか1歳で父親の監督作「ミニー&モスコウィッツ」に出演したそうだ。彼は,1989年に亡くなったが,米インディーズ映画の旗手などと言われ,「グロリア」などの作品を残している。そのタイトルロールを演じたのは母親だ。彼女は,本作でもノラの母親役で登場し,健在振りを示してくれた。また,兄のニック・カサヴェテスは「きみに読む物語」などを監督している。

 ところで,河瀬直美が監督した「七夜待」では,自分の意思とは無関係にいきなり知らない場所に放り出された女性がありのままの自分を直視する様子が描かれていた。本作では,ノラは自分の意思でNYからパリに行く決意をし,そこで改めて自分自身を見つめ直すことになる。ここには日本と米国の感覚の違いが表れているようだ。もっとも,ノラがラストでファンタジックな体験をするところなどは,おそらく日米共通の感覚なのだろう。
(河田 充規)ページトップへ
 ブロークン
ブロークン
『ブロークン』
〜写真界の寵児ショーン・エリス、待望の長編第2作〜

(2008年 イギリス・フランス PG-12 1時間28分)
監督・脚本・製作:ショーン・エリス
出演:レナ・ヘディ、リチャード・ジェンキンス、ケイト・コールマン、アシエル・ニューマン、 メルヴィル・プポー、エリオット・ホームズ、ウルリク・トムセン、スタン・エリス、ほか
12月上旬〜 テアトル梅田、シネ・リーブル神戸にてロードショー

公式ホームページ→
 世界的写真家として名高いショーン・エリスが『フローズン・タイム』に続いて放つ長篇映画第2弾。前作では“時の静止”を描き、いかにもフォトジェニックなアプローチで独自の世界感を築き上げて見せた。続く本作のテーマは“鏡=分身”だ。考えてみれば、レンズを通して、そこにある風景や光景をそっくりそのまま映し出す写真も、一種の鏡である。となれば、本作もまた、すこぶる写真家らしい作品と言えよう。

【X線技師をしている美女ジーナが、ある日、赤いチェロキーを運転する自分そっくりの女性を目撃する。これが恐怖の始まりであった……】というホラー風味のサスペンス作品。

 冒頭、エドガー・アラン・ポーの短編小説『ウイリアム・ウィルソン』の最終節が画面に引用される。自分の分身が存在するという妄想に駆られて破滅する男の姿を描いたこの小説が本作の源泉だとか。

 “鏡が割れると7年間不幸が続く”というイギリスの迷信を恐怖の扉に据えたことで、作品全体にどこかしら残酷寓話めいた浮遊感が生まれている。現代を舞台にしているが、敢えて時代を限定し過ぎないのも、意図的な演出に違いない。本作の目指す地平は、怪奇幻想譚(日本で言うところの怪談)である。その証拠に、エリスは重要なモチーフとなったもう一つの作品に『赤い影』(1973 ニコラス・ローグ監督)を挙げている。その影響は、“赤い色”を不吉の予兆として随所に配置しているところに表れているが、『赤い影』も怪奇幻想譚の傑作であった。

 しかし、どうにもしっくり来ない。神経質なまでにこだわった映像・音響は素晴らしく、鏡やレントゲン・電話といった小道具が雰囲気を高めているにも関わらず、ストーリーの練りが足りないためか、サスペンスが持続せず、本来な
らフックとして、より観客の興味を惹き付けるべきショック描写が浮き上がってしまっている。瞬間の完成度はすこぶる高く、そこはさすが天才写真家と言えるが、物語を紡ぐという連続性が今後の課題であろう。

【喜多匡希の映画豆知識:『ブロークン』】
・本作のモチーフとなった『ウイリアム・ウィルソン』は、一度映画化されている。エドガー・アラン・ポー小説3篇を映画化したオムニバス『世にも怪奇な物語』(1967)の第2話『影を殺した男』(ルイ・マル監督)がそれだ。アラン・ドロンとブリジット・バルドーが共演。不当なまでに世評の低い作品だが、隠れた逸品である。『ブロークン』の予習・復習に見比べてみるのも面白い。
(喜多 匡希)ページトップへ
 初恋の想い出
『初恋の想い出』
〜ハッピーエンドかどうかは自分の目で!〜


(2005年 中国 1時間52分)
監督:フォ・ジェンチイ(『山の郵便配達』)
出演:ヴィッキー・チャオ(『少林サッカー』『レッドクリフPartT』)、
ルー・イー、ソン・シャオイン、チャン・チアン、ツイ・ミンチエ、シン・チアトン
12月13日(土)〜梅田ガーデンシネマにて(関西独占公開)

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 結婚写真が撮られたのはその年の2月14日だった。切なさが込み上げるラストシーンに更に追い打ちをかけるように,この字幕が示される。そのときの2人の心情が痛切に迫ってくる。ホウ・ジアの何とも言えない複雑な表情とチー・ランの両目から溢れ出ようとする涙を懸命に堪えている表情に目が釘付けになる。本作では,このラストの感銘を2人と共有するために,その10年以上にわたる心の軌跡を追体験してきたと言って良いくらいだ。
 フォ・ジェンチイ監督は,本作でもまた,淡色系のリリカルな映像詩の世界を築き上げている。いつしか惹かれ合う2人の視点を交互に示しながら,ラブストーリーを織り上げていく。新聞に連載されていたノンフィクションに着想を得た作品だという。舞台の中心となる1980年代は,家族が個人に大きな影響を及ぼしていたそうだ。本作でも,親同士の反目を縦軸として,そこから生まれる2人の心の葛藤を穏やかな口調で美しく綴っている。

 本作で特に印象に残るのは,向き合ってキスをしているような2人のシルエットとフリをする2人の屈託のない笑顔が映し出されるシーンだ。この2人の恋の行く末を見届けなければならないという気持ちにさせられる。その一方で,2人の小学校時代にホウ・ジアの父親が自殺し,これにチー・ランの父親が関わっていることが示される。事の真相が少しずつ明かされていくのだが,そのタイミングが2人の恋愛模様と上手くリンクしている。
 親同士の確執が若い2人の恋愛の妨げとなる構図は,ロミオとジュリエットそのものだ。ホウ・ジアとチー・ランも,自分たちを悲劇の主人公の姿に重ね合わせていく。親には背けない2人のせめてもの代償行為だといえよう。本作では2人が別々の席でバレエを同時に観ているシーンが象徴的だ。意識し合う2人の距離感が端的に表現されると共に,時代背景が反映されている。シェイクスピア風の悲劇とはかなり異なる味わいに満ちた逸品だ。
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 ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』
〜ストーンズ×スコセッシ=∞(無限大)〜


(2008年 アメリカ 2時間02分)
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ザ・ローリング・ストーンズ
ミック・ジャガー(43年生まれ)、 キース・リチャーズ(43年生まれ)、
ロニー・ウッド(47年生まれ)、 チャーリー・ワッツ(41年生まれ)、
クリスティーナ・アギレラ、 バディ・ガイ、 ジャック・ホワイト
12月5日(金)TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条 他全国ロードショー

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 ストーンズは,1962年にロンドンで生まれたロックバンドだ。本作は,2006年10月29日と11月1日に行われたライブを中心に構成されたドキュメンタリーで,その臨場感には圧倒される。目からウロコどころか,全身のウロコが飛び散るような凄まじい衝撃が走る。ストーンズの魅力が余す所なくフィルムに収められている。きっとカメラの位置や撮影のタイミングが絶妙で,いつどこから何を撮れば良いのかがよく考えられているからだろう。

 コンサートが行われたのはNYのビーコン・シアターという2800席のホールだそうだ。程良い大きさで,ステージと客席やステージ上のメンバーが一つのフレームにぴたりと収まる構図が鮮やかだ。ストーンズと観客との親密感やメンバー同士の一体感を出そうという意図が見事に実現されている。そして,メンバーの表情や動き,これに対する観客の反応が手に取るように伝わってくるので,スクリーンを通して彼らと同じ空気を体感できる。
 ミック・ジャガーのシェイプアップされた肉体が描き出すパフォーマンスには目を奪われる。チャーリー・ワッツが演奏の後で大きなため息をついてチラッとカメラを見るシーンは,心が和む感じだ。キース・リチャーズがゲストのバディ・ガイにギターをプレゼントする場面も見られる。単にライブを客観的に記録しただけの映像ではなく,ストーンズのドラマがあり,そのエッセンスが凝縮されている。スコセッシの手腕が冴え渡っている。
 また,ストーンズのアーカイブ映像がライブの流れを損なわないように巧みに挿入され,彼らの歴史をさりげなく実感させて効果的だ。それに,ライブが始まるまでの撮影する者とされる者のせめぎ合いがユーモラスに捉えられる。いつどんな風にライブが始まるのかと興趣が盛り上がったとき,いきなり「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のイントロがガツンとくる。ライブが終わった後の舞台裏の様子とNYの夜景も茶目っ気たっぷりだ。
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 未来を写した子どもたち
『未来を写した子どもたち』
〜未来に向かって生きる子供たちのために〜

(2004年 アメリカ 1時間25分)
監督:ロス・カウフマン,ザナ・ブリスキ
出演:コーチ、アヴィジット、シャンティ、マニク、プージャ、ゴウル、スチートラ、タパシ
★アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品
12月〜梅田ガーデンシネマ、 以降順次公開〜京都みなみ会館、神戸アートビレッジセンター

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 インドはカルカッタ(現コルカタ)の赤線地帯の子供たちを描いたドキュメンタリーだ。ラテンアメリカの映画で見た子供たちは,貧しい生活の中で生き抜くための活力に溢れ,ぎらついていた。それに引き換え,インドの子供たちは,厳しい現実にからめ捕られているにもかかわらず,どこか穏やかな輝きを見せている。文化や社会の違いが反映しているのだろう。運命に立ち向かうというよりも,運命と折り合おうとしている趣が感じられる。
 監督の一人ザナは,ニューヨークのフォトジャーナリストで,赤線地帯の女性たちにカメラを向けてシャッターを切るため,1998年から彼女たちに混じって生活を始めたそうだ。その中でザナは子供たちにカメラを与えて写真の撮り方を教える。スクリーンに映し出された子供たちの写真を見ていると,子供たちがカメラを通して見たものだけでなく,被写体を見ている子供たち自身の心の輝きと純な感性が写し出されているような感銘を受ける。
 この子供たちの変化には魅了される。だが,本作が何よりも素晴らしいのは,困難な境遇にいる子供たちの姿を伝えるというだけでなく,その子供たちを赤線地帯から救い出そうとするザナ自身の物語でもあるという点にある。子供たちを寄宿学校に入学させる手続だけでも,出生証明書その他の書類を揃える必要があるなど,色んな面倒がある。子供たちのHIV検査が必要だという悪い知らせがあれば,全員が陰性だという良い知らせもある。
 ザナが奔走した結果,何人かの子供が学校に入ることができる。だが,映画のラストで示されるその後の子供たちの姿には,胸が痛む。なかなか思うようにいかない現実の重さが横たわっている。もちろん学校を卒業した子供や在学中の子供はいるが,親の都合や自分の意思で退学した子供もいる。とはいえ,子供たちの写真が生み出した資金で子供支援基金「KIDS WITH CAMERAS」が設立された。正に子供たちの写真が未来へ希望を繋いだのだ。
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 ワールド・オブ・ライズ
『ワールド・オブ・ライズ』
〜この”嘘の世界”に黙って身を委ねよう〜

(2008年 アメリカ 2時間08分)
監督:リドリー・スコット

出演:レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング、ゴルシフテ・ファラハニ、オスカー・アイザック
2008年12月20日(土)〜梅田ピカデリー他全国ロードショー

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 本作は,CIA工作員フェリスを主人公としたスパイ・アクションだ。彼は,アラビア語に堪能で,上司のホフマンから電話で指示を受けながら,イラクやヨルダンを駆け回り,テロ組織のリーダーを捕まえるために奮闘する。CIAと中東問題に詳しいジャーナリストの小説を基にしているそうだ。脚本のウィリアム・モナハンは,アカデミー賞脚色賞を獲得した「ディパーテッド」(06)を思い出させる,速射的な展開でドラマを構築していく。
 そして,フェリスに扮するのは「ディパーテッド」に「ブラッド・ダイヤモンド」(06)と大活躍のレオナルド・ディカプリオだ。上司の非情さや現場の苛酷さに囲まれながら,なお人間としての情を保ち続けているという,好感の持てる役柄だ。そんな彼と心を通わせる看護師アイシャには,イラン人女優ゴルシフテ・ファラハニが扮している。彼女は,本作がアメリカ映画デビューだそうで,嘘の世界の中できらりと光る誠実さを見せてくれる。
 監督のリドリー・スコットは,「エイリアン」(79)で,宇宙船という密室を舞台に正体の見えない敵に対する不安と恐怖,「ブレード・ランナー」(82)で,レトロな感覚の近未来を舞台に限りある生命の輝きと哀切を描いている。いずれも忘れ難い異色のSFだ。その後は「テルマ&ルイーズ」(91),「グラディエーター」(00),「ブラックホーク・ダウン」(01)という違ったジャンルの作品でアカデミー賞監督賞に3回ノミネートされている。

 今度の新作は,期待外れだと思う向きがあるかも知れない。個人的なレベルから国家的な規模に至るまで,様々な嘘を交えた駆け引きの面白さを堪能させてくれるわけではない。だが,「アメリカン・ギャングスター」(07)で見られたような重厚感のある映像で,激しい銃撃戦や軍用ヘリによるミサイル攻撃というアクションから,フェリスがGID(ヨルダン情報局)局長らとの間で見せる人間ドラマまで,手際よく描かれているのはさすがだ。
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 WALL・E/ウォーリー
『WALL・E/ウォーリー』
〜肥えた土の匂いと温もりに募る懐かしさ〜

(2008年 アメリカ 1時間43分)
監督:アンドリュー・スタントン
声の出演:ベン・バート、エリッサ・ナイト
ジェフ・ガーリン、フレッド・ウィラード、ジョン・ラッツェンバーガー、キャシー・ナジミー、シガニー・ウィーバー
2008年12月5日(金)より日比谷スカラ座他全国ロードショー
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 29世紀の地球,そこで黙々と健気に働く一体のロボットが存在した。しかも,700年間にもわたって地球上のゴミをキューブ状に固めて高層ビル群のように積み上げている。彼の名前がウォーリーだ。人間は,汚れきった地球を捨て,宇宙空間へ脱出して生き続けていた。地球にはウォーリーだけが残されてしまった。彼は,どこで拾ったのか,「ハロー・ドーリー!」のビデオを見て,他の誰かと手を繋ぐことに憧れている。このように彼の生活状況が映像で紹介されるのだが,実写映画を観ているような錯覚に陥ってしまう。それほど見事にウォーリーの存在に生命が吹き込まれている。もちろん,イヴも同様だ。
 彼女は,大きな目がチャーミングだが,なかなか気が強くて鋭い表情を見せるときもある。と言っても,イブは,卵の形をした流線型のロボットで,宇宙船に乗せられて地球へやって来た。何かの探査を命じられているようだ。久しぶりに出会った仲間にウォーリーが興味を持たないはずがない。2人が次第に打ち解けていく様子がまるでラブストーリーを描くような感覚で展開されていく。というより,これは紛れもなくラブストーリーだ。ラストでは愛の魔法によってハッピーエンドを迎えるのだから,ファンタジーでもある。
 そしてまた,同時にこれはSF映画でもある。宇宙空間で生きる人間は,コンピュータに管理され,互いに接触することもない…培養されているようで,どこかで見た光景だ。それに,明らかに「2001年宇宙の旅」を意識した音楽の使い方が見られる。特に”ツァラトゥストラはかく語りき”が流れるシーンは,猿が頭上に放り投げた骨片が宇宙船になるというカットのつなぎを思い起こさせるほどで,人類の新たな第一歩が踏み出された瞬間をイメージしているようだ。コンピュータが人間に”反乱”を起こすという展開も見られる。この映画はパロディ,あるいはコメディと言ってよいかも知れない。色んな味わいがある。
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 我が至上の愛〜アストレとセラドン
『我が至上の愛〜アストレとセラドン』
〜小説と絵画と演劇が融合したラブ・コメ〜

(2006年 フランス,スペイン,イタリア 1時間49分)
監督:エリック・ロメール
出演:ステファニー・クレイヤンクール、アンディー・ジレ、セシル・カッセル
2009年公開予定
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 エリック・ロメール(1920年生)がまたまた軽快なタッチの恋愛映画を撮り上げた。マノエル・ド・オリヴェイラ(1908年生)に比べると若いけれども,その最新作「夜顔」に負けず劣らず,円熟の旨さを存分に味わわせてくれる。ゆったりと流れる時間の流れに身を委ね,透き通るように美しい映像と韻を踏んだような会話のリズムに目も耳も奪われる。
 原作は,オノレ・デュルフェによる17世紀初めの大河小説「アストレ」で,キリスト教伝来前のドルイッド僧がいた5世紀のガリア(現在のフランス)を舞台として,羊飼いの青年セラドンと娘アストレの純愛が描かれている。喜劇的な展開が心地良く,しかもセラドンが愛しいアストレと会うために女装するので,シェークスピアの「お気に召すまま」などの喜劇と何となく似通ったところがある。
 セラドンは,アストレから「目の前に再び現れないで」と言われ,絶望のあまり川に身を投げたが,ニンフ(精霊)に救われて館に運ばれる。そこの女主人ガラテは,セラドンに一目惚れするが,それを表に出すのはプライドが許さないので隠そうとする。その本心が態度に現れるのを取り繕おうとする様子が笑いを誘い,この辺りから俄然面白くなる。

  また,僧侶の姪レオニードもセラドンに心惹かれるが,彼のアストレに対する想いを前に,恋人ではなく妹への愛を注いで欲しいと言うのが,切なくて可愛らしい。彼女の計らいで,セラドンが女装するのだが,アストレがいつどうやって衣装の下に隠れているセラドンを見付けるのか,演劇的興趣が盛り上がる。

  何と言っても,キャスティングが良い。セラドン役のアンディー・ジレはモデル出身で,アストレには「セーラームーン」のファンだと言っていたステファニー・クレイヤンクールが扮しており,2人とも絵画から飛び出したような美しさで魅せてくれる。確かに,セラドンが何人もの女性を魅了し,アストレがセラドンの心を奪ったとしても,無理はない。
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