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『オレンジと太陽』
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オレンジと太陽

(C) Sixteen Midlands (Oranges) Limited/See-Saw (Oranges) Pty Ltd/Screen Australia/Screen NSW/South Australian Film Corporation 2010
『オレンジと太陽』 (ORANGES AND SUNSHINE)
〜一人のソーシャルワーカーが幾千人もの“母なき子”を救うまで〜

(2010年 イギリス=オーストラリア 1時間46分)
監督:ジム・ローチ
原作:マーガレット・ハンフリーズ著、都留信夫/都留敬子訳『からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち―』日本図書刊行会
出演:エミリー・ワトソン、デイヴィッド・ウェナム、ヒューゴ・ウィーヴィング、リチャード・ディレイン他

2012年4月14日〜岩波ホール、
5月19日〜梅田ガーデンシネマ、京都シネマ、
6月16日〜 神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
公式サイト⇒http://www.oranges-movie.com/
 『オレンジと太陽』という爽やかで耳障りのいい言葉が、子どもたちを異国の地に連れて行く誘い文句になっていたとは、想像すらしなかった。イギリスを代表する社会派の名匠ケン・ローチ監督の息子、ジム・ローチ監督満を持しての長編デビュー作は、今までイギリス、オーストラリア両国が隠してきた児童移民の真実を明らかにした女性、マーガレット・ハンフリーズの実話に基づく感動ヒューマンストーリーだ。
 本作ではマーガレット(エミリー・ワトソン)がイギリスとオーストラリアの往復を繰り返し、調査を進める様子が丹念に描かれる。故郷を離れて何十年も地球の反対側で過ごしてきた児童移民の被害者たちとマーガレットの交流から、当時のエピソードや虐待の過去が浮かび上がる。マーガレットのおかげで母親の消息を知り、次第にマーガレットの支えにもなっていく移民のレン(デイヴィッド・ウェナム)やジャック(ヒューゴ・ウィーヴィング)らを通じて、母を捜し続けた彼らの苦悩や、過去を受け入れ前向きに生きる姿に、人間の逞しさすら感じた。
 さらに興味深いのは、マーガレットが最初はどこにでもいる普通の”仕事を持つ母親”であったことだ。夫や子どもたちの全面的な協力を得ながら、次第に政府レベルの大組織をも揺るがす事実を明らかにしていく過程では様々な困難が待ち受ける。時には脅迫を受け、自らが移民たちの境遇に同化して精神的な発作を起こすまで追い詰められたマーガレットの気持ちに寄り添うようにエミリー・ワトソンが熱演。一人の女性としての葛藤や成長、彼女を支える家族の姿を浮き彫りにしたジム・ローチ流アプローチも秀逸で、大いなる共感を呼ぶ。
 児童移民たちが過ごした収容所への旅や、海辺の景色など、オーストラリアならではの乾いた陽が降り注ぐ風景が情感豊かに映し出されるのを見ていると、非情な闇の歴史というよりは、彼らが過ごした幼き日々を追体験しているようだった。ジム・ローチ監督が描きたかったのは、実在のマーガレット同様、移民たちの「失われた母との記憶」を取り戻すことだったのではないか。社会的題材に鋭く切り込みながら、主人公を取り巻く環境を丹念に描きこみ、明日への希望を描いたジム・ローチ監督、今後ますます期待できる監督に出会えた喜びを味わえることだろう。

(江口 由美) ページトップへ

(C) Sixteen Midlands (Oranges) Limited/See-Saw (Oranges) Pty Ltd/Screen Australia/Screen NSW/South Australian Film Corporation 2010
   
             
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