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『わたしたちの宣戦布告』
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わたしたちの宣戦布告
『わたしたちの宣戦布告』
(La Guerre est declaree / Declaration of War)
〜世界一タフな夫婦ロメオ&ジュリエット〜

(2011年 フランス 1時間40分)
監督・脚本・主演:ヴァレリー・ドンゼッリ
脚本・主演:ジェレミー・エルカイム

2012年秋〜Bunkamura ル・シネマ他全国順次公開
公式サイト⇒ http://www.uplink.co.jp/sensenfukoku/

 ロメオとジュリエットが出会い,シェークスピアとは全く違ったタイプの新しい悲喜劇が生まれた。2人がパーティで出会うのはお定まりの設定だが,このとき既に2人はアクティブな輝きを放っている。抗えない運命に絡め取られる人生ではなく,運命を切り開いていくパワーが感じられる。タイトルを示した後,軽快なリズムの音楽と映像に乗せて,幸せの絶頂にある2人の歓びが活写される。そして,2人の間には息子アダムが生まれた。
 アダムが生後3週間のときに2人が口論になるシーンで,赤と青のコントラストが鮮烈な印象を残す。色合いの異なる2人が互いに補完的な関係を保ちながら,突然降り懸かった試練に立ち向かっていく,その後の展開を予感させるようだ。ジュリエットは,イラクの首都が激しい空爆を受けたというニュースを聞き,「ついに宣戦布告ね」と言う。2人もまた間もなく激しい戦闘に巻き込まれていく。生後18か月のアダムに脳腫瘍が見つかる。
 アダムがマルセイユの病院で検査を受けている間,ジュリエットが廊下を歩くシーンがある。その時間が長く感じられ,彼女の不安と焦燥がにじみ出てくる。そんな彼女に追い打ちを掛けるようにエクセックの“Break ya”が流れ,居たたまれず走り出すジュリエットをカメラが追う。さらに,彼女がパリにいるロメオに検査の結果を電話で知らせるシーンは,胸の奥深くに悲しみが入り込んでくる凄みがある。斬新な感覚に溢れたシーンが続く。
 エンディングを迎えるとき,胸中には色々な思いが去来する。9時間に及ぶ手術は成功するが,腫瘍は悪性であり,5歳まで生きられないと医師に告げられる。完治までの道のりはマラソンのようだが,コースの全容は分からない。季節は巡り,2人の戦いは長期化し,それぞれのナレーションが効果的に挿入される。2人の動きはシンクロしても,その心はアダムに向けられている。行く末は違ったとしても,2人は永遠の絆で結ばれている。

(河田 充規) ページトップへ

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