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『シグナル〜月曜日のルカ〜』
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シグナル〜月曜日のルカ〜

(C)2012「シグナル」製作委員会
『シグナル〜月曜日のルカ〜』
〜デジタルにはないフィルムが持つ優しさ〜

(2012年 日本 1時間52分)
監督:谷口正晃
出演:三根梓,西島隆弘(AAA),高良健吾,井上順,宇津井健

2012年6月9日(土)〜新宿ピカデリー、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際会館、ほか全国ロードショー
公式サイト⇒ http://signal-movie.com/top.html

 関口尚の同名小説の映画化で,“月曜日のルカ“と往年の日活映画のようなサブタイトルが付いているが,全く関係ない。ルカは,祖父の跡を継いで名画座「銀映館」の映写技師をしているが,祖父が亡くなった3年前から映画館の外に出たことがない。そこへ大学生の恵介が映写助手のバイトとして雇われるが,ルカが月曜日はナーバスになるから干渉しないことなど3つの約束を守ることが条件だった。ひと味違った”ひと夏の恋“物語だ。
  冒頭で輪郭のぼやけたルカの後ろ姿が映され,次いでそれがフォトスタンドに映った影だと分かる。そこには祖父と幼いルカの写真が飾られていた。このシーンが鍵になるような予感がする。また,ルカにまつわる青年レイジが車の運転席からルカの部屋を見上げるショットで登場する。3年前ルカに何が起こったかをめぐる〈青春恋愛ミステリー〉の形を借りながら,人生には“優しさ“が必要だが,それだけでは十分でないことが描かれる。
 終盤では,恵介が自分の夢のため東京に戻ることになり,ルカが「別れは別れだけど嬉しい」というシーンを迎える。原作では,解放感があって壮大で美しい,実に映画的なエンディングが用意されていた。本作では,少し小振りになった感はあるが,恵介よりルカに焦点を絞っていく。銀映館から出るときと恵介と別れるときの2度にわたりカメラが映し出す三根梓の表情がいい。別れのときには自らの決意と恵介へのエールが浮かんでいた。
 映画初出演で初主演となる三根は,眼力があり,過去の傷を背負いながら自ら心の扉を開けるルカの強さに説得力を生み出した。一方,レイジがナイフでルカと自分を傷つけるという原作にないシーンは,偏執的なレイジのキャラを曖昧にしてリアルさを減殺してしまった。だが,レイジのルカへの執着は,恵介の母親に無心する父親のエピソードと相俟って,許容するだけでなく向き合うことの大切さを恵介とルカに教え,2人を成長させる。

(河田 充規) ページトップへ

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