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テイク・シェルター

(C)2011 GROVE HILL PRODUCTIONS LLC All Rights Reserved.
『テイク・シェルター』
〜パニック映画とサイコ・サスペンスの融合とは?〜

(2011年製作 アメリカ 2時間)
監督:ジェフ・ニコルズ
演:マイケル・シャノン、ジェシカ・チャステイン、
   トーヴァ・スチュワート、シア・ウィグハム、ケイティ・ミクソン、
   キャシー・ベイカー

2012年5月5日(土・祝)〜梅田ブルク7、T・ジョイ京都、シネ・リーブル神戸でロードショー。
公式サイト⇒ http://take-shelter-movie.com/

冒頭から異様な黒雲と石油のような雨が降り、現代的な異常気象現象を見せていく。そして、そこに不穏な表情をした1人の男がいて、観客にいきなり不安感を覚えさせる。トンデモないパニックが間違いなく起こると信じた男が、自分と妻と子供を守るために、シェルター造りに励むというストーリー展開。作りはかなりシンプルだが、シンプル・イズ・ベストが異様な感じを伝える作品も存在する。
 本作はデザスター・パニック・ムービーでもあり、1人の男のサイコチックな心理を見せるサスペンス映画でもある。この2ジャンルを結び付けた映画は、過去を振り返ってもまずないといっていいだろう。ヒッチコックの「サイコ」(1960年)はミステリー的に最後まで種明かしを封印していたし、「シャイニング」(1980年)もポイントは1人の男が狂っていく過程を、ホラー・モードで描いていた。男が狂うドラマ性は似ているが、その作り方は違っている。本作はかなり稠密だ。なぜ狂っていくのか、そのプロセスをじっくりと見せていくのである。しかし、そこに、なぜ彼は狂ったのかは、過去の母とのエピソードを映像ではなく話として入れるだけで、深掘りはされない。
 しかも、静謐な作り方が逆に不安を募らせる。ホラー映画に特有の効果音で怖がらせる、ショッカー・シーンもほとんど使われていない。会話の間の使い方なども、緊張感の間合いに合わせた絶妙な演出がなされている。一方において、パニック・シーンにおけるVFX使いは、わざとらしくなく自然な感覚でいっている。「ツイスター」(1996年)や「鳥」(1963年)といったパニック映画シーンを想起させるシーンでも、作り物的に見えないところが新鮮だろうか。3人家族のサバイバル的映画のような方向性へと進んでいくクライマックスだが、いずれにしても大きくくつがえされるサプライズが、最後には用意されている。
 妻の名を夫・主人公が呼んで、妻が「分かったわ」と応じるラストシーン。こういうサプライズ・エンディングは、これまでにも多数にわたりクリエイトされてきた。ただ、本作の後味はビター、つまり苦いかもしれない。個人的には「渚にて」(1959年)みたいな終末感を見たけれども、こういう結末は見た後の余韻を深めるのではないだろうか。突き放された後に、あなたは何を感じ、あなたなりにどうするのか。そんなところまで食い入ってくるような作品となっている。

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