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  ・『ナショナル・トレジャー
 リンカーン大統領暗殺者の日記』

  ・『リアル鬼ごっこ
  ・『ジャーマン+雨
  ・『迷子の警察音楽隊
  ・『風の外側
  ・『ルイスと未来泥棒』(3)
  ・『北辰斜めにさすところ
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  ・『サーフズ・アップ
  ・『魍魎の匣』
  ・『ルイスと未来泥棒』(1)
  ・『ルイスと未来泥棒』(2)
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河田 充規
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藤崎 栄伸
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〒542-0081
大阪市中央区南船場4-4-3
心斎橋東急ビル9F
(CBカレッジ心斎橋校内)
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記者会見レポート
 『リアル鬼ごっこ』 合同記者会見
『リアル鬼ごっこ』

 (2007年 日本 1時間38分)
監督:柴田一成
出演:石田卓也 谷村美月 大東俊介 松本莉緒 吹越満 江本明
2月2日(土)〜テアトル梅田、敷島シネポップ、ユナイテッド・シネマ岸和田、109シネマズHAT神戸 にて公開
★公式ホームページ→
【STORY】
 「佐藤」姓をもつ人が次々と亡くなるという不審なニュースが世間を騒がせていたある日。佐藤翼は、敵対する不良グループに追われピンチに立った瞬間、現在と平行して存在する別世界“パラレルワールド”にスリップしてしまう。一見、町や人は変わりがないように見えるが、中身は別物。王政が強いられたその世界では、王のある目論見から佐藤姓の者だけが鬼に捕まると処刑されるという「リアル鬼ごっこ」が行われていた。翼はその世界で出会った妹の佐藤愛や、幼なじみの佐藤洋と逃げまどうことになる。


 「親指さがし」「@ベイビーメール」など10代20代の読者を中心に絶大な支持を得ている若手小説家・山田悠介のデビュー作「リアル鬼ごっこ」が待望の映画化。王様が国を統治する西暦3000年の日本で、「佐藤」姓をもつ人々が王様の気まぐれから鬼に追われ、捕まると処刑されるという衝撃の内容で話題を呼んだこの小説に、独自のアイデアを盛り込み、原作とは一味違う映画ならではの世界観を引き出した。監督は『魍魎の匣』などで映画プロデューサーとして活躍する柴田一成。主演は『キトキト』の石田卓也『檸檬のころ』の谷村美月という、今後もっとも活躍が期待されている注目の若手俳優2人が顔を揃えた。そんな『リアル鬼ごっこ』一行がキャンペーンのために来阪。合同インタビューに応えてくれた。
 まず、監督に聞きたいのは原作を大きくアレンジした点。突飛な着想だがシンプルなストーリー展開の原作に、パラレルワールドというSF的要素を加えたのはなぜか聞いてみた。「最初に原作を読んだ時、その若い感性から生まれた奇抜な発想に驚きました。でも、西暦3000年の世界とか、そのままの設定では映画化は難しいなと。もし、ハリウッドで100億あればできますけど(笑)そうして色々思案しているうちに、鬼ごっこが行われている別世界に潜り込むという“パラレルワールド”を思いついたんです。でも、単に別世界に行てしまってそこで主人公が活躍するというだけなら、ご都合主義の展開になってしまうので、パラレルの方で死ぬと現世界でも死ぬというからくりを付け足しました。そのために劇中では、その2つの世界の仕組みを説明する長セリフを谷村さんが負担するはめになってしまったのですが…。」
 それを受けて2つの世界で危機に瀕する佐藤愛を演じた谷村は「最初、台本読んだときはさっぱり意味が分からなくて(笑)紙に絵で書き出してがんばって理解しました。でも、以前からふた役ある役をやってみたいと思っていたので、別々の世界に存在する間逆なキャラクターを演じられて楽しかったです。」

  一方、佐藤翼役を演じた石田は鬼から逃げるという設定上とにかく走る!走る!走る!撮影前に準備はあったにせよ、その挑戦はかなり大変だったのではないだろうか「もう、めちゃくちゃ走りました。イヤっていうほど(笑)中学校のときに野球と水泳をやっていて、走ることも好きだけど、それでも初日はやっぱりキツくて大変でした。」走る上で監督の指示はあったかと聞くと「はい。必死な顔して、必死に逃げてくれって(笑)で、最後はかっこよく(笑)」
 「とにかく全編全力疾走してくれ!と。それも何回も(笑)しかも、芝居はOKでもカメラがズレたとかこっちの都合でもう一度やり直しとかね。」と監督も苦笑い。そんな翼や愛が街中を逃げまわるシーンの撮影は、川崎や横浜、お台場周辺で行われたという。地元から都心のテレビ局まで行くというストーリーのため、徐々に風景が郊外から都会に移っていくようにルートが工夫されている。そのなかで町が閑散として見えるように「人と車を止めての撮影」がスタッフにとって一番大変な問題だったとか。

 もともと石田は『蝉しぐれ』谷村は『カナリア』の頃から注目していたという柴田監督。2人を起用した理由はどこにあるのか。「石田くんは時代劇もやっているし、ちょっと泥臭いこともできて、動きもいい。谷村さんは、いま日本映画で女優が取り立たされているなか、同年代では誰にも負けない抜群の女優だと思っています。今回の作品はアクションがメインの映画で、じっくり人間を描くタイプの映画ではないけど、だからこそ芝居ができる役者じゃないと難しい。アクションでもお芝居がしっかりしていないとダメになっちゃうのでそういう意味でこの2人にお願いしました。」

 最後にここを見て欲しいところを訊ねると(監督)「原作を読んでストーリーを知っている人もまったく違う楽しみ方ができる。すごく面白いストーリーなのでそこを楽しんでもらいたい」(石田)「見てもらいたいのは、走りっぷり(笑)あと、スピード感ですね」(谷村)
「ストーリーも進むのが早いので、あまり気張らずに。切り替えが早い作品なので気持ちよく見終われると思います」

 原作の根底にある家族愛や友情を映画の柱として踏襲し、アクション映画らしくスピード感にこだわって撮影したというだけあり、本当にハラハラドキドキ。あっという間に見終わってしまう。たくさんいる鬼役の豪快な追跡と、それをかわす石田のキレの良いアクションが見どころ。そのほか、佐藤翼の幼なじみで彼らと協力しながら一緒に逃げる佐藤洋を演じた大東俊介(テレビドラマ「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス」映画「クローズZEROにも出演)の正義感溢れる熱演にも注目したい。
(中西 奈津子)ページトップへ
 『ジャーマン+雨』 舞台挨拶
『ジャーマン+雨』舞台挨拶&トーク
〜強烈で、混沌とした世界の向こうに見える“純粋さ”〜

(2006年 日本 1時間11分 DV)
監督・脚本:横浜聡子
出演:野嵜好美、藤岡涼音、ペーター・ハイマン、ひさうちみちお
梅田ガーデンシネマにて公開中
2月上旬〜神戸アートヴィレッジセンター、
2月下旬〜京都みなみ会館 にて公開

★公式ホームページ→
 主人公、林よし子は、決して美人とはいえず、ゴリラのような顔で、超わがまま、かなり強引な16歳の少女。ゴリラーマンとののしられても、全く意に介さず、歌手になる夢を目指して、たくましく生きる。近所の少年3人を相手に、一人ひとりのトラウマの告白を元に即興で作曲するという、風変わりなたて笛教室を始める。汲み取り屋のちょっと変なオヤジ小川、女になりたいという小学生と、突拍子もないキャラクターが勢揃い。

  監督の横浜聡子さんは青森県生まれの弱冠29歳。本作は、『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』に続く監督第2作目。自主制作から異例の全国劇場公開が実現した話題作。よし子の強烈な個性を核に、子ども達の生き生きしたエネルギーと音楽のパワーを生かし、不可思議で、魅力的な世界をまとめあげた。

  その横浜聡子監督と、小川役として特別出演し、独特の存在感を披露したひさうちみちおさんが、関西での公開初日、梅田ガーデンシネマを訪れ、上映後の熱い熱気の中、ミルクマン斉藤さんの司会によりトークが行われた。
司会:よし子、すごいですね〜。これは、あてがき(俳優を実際に想定して脚本を書くこと)ですか?

監督:あてがきではありません。最初のシナリオ段階から、よし子という痛烈なキャラクターがあり、そのキャラクターをやる女の子を探し求めて、ずっとオーディションをしてきました。苦労しました。

司会: よし子を演じた野嵜好美さんは、本田隆一監督作品『彼女が歌う理由』(オムニバス映画『そんな無茶な!』の1編)で、歌手として出演されていました。これは、新宿ゴールデン街でオールヌードで歌う女がいる、というのをルポする“偽ドキュメンタリー”の形をとった映画で、強烈でした。まもなく公開される『歓喜の歌』にも出演されていますね。これからバイプレイヤー(脇役)としてもよく出てくることになると思うのですが、どうしてこういう強烈なキャラクターを思いついたのですか?
監督:元気な映画にしたいというのが最初からありました。内にこもってしまう、悩み事に困って、うじうじしている映画じゃないのをつくりたかった。極端かと思ったのですが、強いキャラクターにしたくて、ゴリラーマンと呼ばれる、ジャイ子みたいな女の子を最初に考えてみました。

司会:これは滋賀県で撮られたそうですが、観ていて滋賀だとはわかりません。繁華街と病院のシーンが大阪の十三というのも、言われないとわかりません。地域的特性のない感じですが‥。

監督:いかにもここは、どこどこの田舎です、というのではなくて、この人たちは一体どこで、どんな街で生きてるんだろうという、不思議な世界にしたかったので。

司会: 僕はこれを観ていて、現代日本の話というのは当たり前なんですが、未開部族のドキュメントを観ているような感じに襲われたんですよ(笑)。バーバリズムこそアートである、と映画で言っているような気がして。キャラクターも含めて。子どもの感性こそがアートというか、ものづくりの一番すばらしいところである、と映画自体で叫んでいるような気がして、ちょっと震えたんです。そんな感覚はありませんか(笑)?

監督:撮影中も編集中もこれは一体どういう映画になるんだろう、と段々わからなくなってきて、自分がシナリオを書いた時の世界とずれてきて、それを超えてどっかいっちゃってる感じがした時もありました。

司会:野嵜さんは役者さんですが、あまりプロの役者に見えないところがあって、どういうふうに演技をつけたのですか?

監督:野嵜さんに関しては、撮影前に、一緒に一つ屋根の下で住んでいた時期が3、4日ありました。仲良くなりたかったし、読み合わせしつつ、よし子像をつくりあげていきました。撮影が始まってからは、私が思っていたよし子像と、現場でやってもらったよしこ像との差をどうやって埋めようか、ずっと悩んでいて、でも、なかなか私のイメージのよし子に近づかなくて、後半は野嵜さんのよし子におまかせ状態になっています。
私がシナリオを書いた時に考えていたよし子は本当にジャイ子だったので、映画のよし子は、また感じが違うと思います。でも、今は、そんなよし子も野嵜さんでよかったという感じです。
司会:映画の中盤以降、よし子像自体がセンシブルになっている感じもしますね。

監督:そうですね。野嵜さん自身も撮影が進むにつれて、私も予想していなかったような、なんか可愛いらしい部分がぽっと出てきたりして‥。

ひさうち:ドッジボールのシーンの前半の、コートの中に子どもが一杯いる時、演出はあるのですか?僕には、微妙によし子が小さい子をたてにしているように見えて、おもしろかったのですが‥。
監督:よし子には、子どもを狙えとか、子どもを盾にして自分を守ってくださいとか、本気でやってください、とは言っていましたね。残るためにはなんでもするというか‥。
子どもには全然演出していません。流し撮りを2回ぐらいやって、すごく長い試合になって、子ども達は最後の方はへろへろになって、大変そうでした。


司会:あのサバイバルが凄いですね(笑)。あそこに生きてる執念がみえているような気がしました。また、長いからすばらしいです。 最後の歌とオーディションで歌う歌は?

監督:メロディも歌詞も本番前にはあって、私が歌って録音したのを野嵜さんに聴いてもらい、こういう感じですとは伝えていました。最後の曲に関してもすごく本気で歌ってくださいと言っていたのですが、野嵜さんは、リハーサルの時にはなかなか歌わなくて、本番はどうなるのだろうと思っていたら、本番はぴしっと決めてくれました。
あの歌詞も、時間をそれなりにかけて、結構考えたんです。それまでの物語の流れも汲みつつ、『ジャーマン+雨』というタイトルの意味も込めつつ、割と練られた作品です。

ひさうち:よし子の歌もよかったですが、僕は笛がすごくよかったですね。この映画のDVDの表紙を描いてくれと言われて、あの音からすぐ絵が出てきますね。すごく絵を呼び覚ますような音を感じました。

監督: 劇中の音楽は「音遊びの会」によるものです。もともとは神戸で大学院の方とかミュージシャンとか音楽療法をやっておられる方が、子ども達を集めて、即興でつくった音楽に、今回大友良英さんも加わってらっしゃるみたいです。

司会:アートの根源のような気がします。子ども達が壁に殴り書きをするシーンで、段々音が交錯して、白くなるシーンがありますが、これもすばらしかったです。

監督:ひさうちさんに、映画をご覧になっての感想をまだうかがっていなくて(笑)。ご自分の出演されたシーンについては?

ひさうち:自分が出ていたシーンは恥ずかしいですね。できればあんまり観たくないです(笑)。やっぱり子どもとよし子の掛け合いがなんとも言えず、妙なリアリティというか、現実ではないようなリアリティが、掛け合い自体から生まれてくるのかもしれません。間のよさというか、とんとんと進むよさだけでなくて、微妙な間のよさというのもあって、それがすごくおもしろかったです。

司会:黒味の使い方がすごく上手い。黒で遮断しますね。音を少し残したり、残さなかったり、あの間がすごくうまい。これが映画のリズムをつくっているような気がします。

監督:音をちょっと残しています。そこで観ている人が想像できるのかなと思って、黒味を多くしたんです。これが、変なリズム、変なぎごちなさを与えているような気がします。


 ミルクマン斉藤さんの明朗な司会により、始終笑いが起こり、会場は暖かくなごやかな空気に包まれた。会場からも熱心な質問が相次ぎ、横浜監督が、はきはきと丁寧に答えておられたのが印象に残った。映画を観終わって、言葉にならない思いを抱いたかもしれない観客の皆さんにとっても、映画について考えるヒントに大いになったように感じた。

  私も、ここまではじけた主人公には、正直、最初は面食らった。しかし、「先生バカだ〜」なんて言いつつも、先生、先生と、3人の少年達がよし子を慕う様子や、よし子がひそかに隠し持っている弱い部分、よし子自身のトラウマが、後半になって少しずつ描かれていくにつれ、よし子と観客の間に、不思議な共感の回路がつながり、いつしか、よし子が可愛らしくみえてくるところが興味深かった。

  横浜監督は、前作では、脚本時に書いたカット割りや絵コンテどおりに撮ったシーンが多かったそうだが、本作では、生き生きした子ども達の姿を撮るため、現場で役者の動きを見て、カット割りを考えたそうだ。会場からの「次回作は?」との質問に「同じことはしたくないです。1作、1作、作風は変えます。次回作は、まだシナリオ段階ですが、がらりと変わった映画になると思います」ときっぱり答えられた。今度はどんな世界が生まれるのか、次回作が大いに楽しみだ。  
   
(伊藤 久美子)ページトップへ
 『迷子の警察音楽隊』 東京国際映画祭記者会見
『迷子の警察音楽隊』
〜迷子になって見える新たな道〜

 (2007年 イスラエル=フランス合作 1時間27分)
監督・脚本 エラン・コリリン
出演 サッソン・ガーベイ ロニ・エルカベッソ サーレフ・パクリ
1月26日〜 シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸
陽春〜京都シネマ

公式ホームページ→ 
 バラエティ豊かな作品が顔を揃えた第20回東京国際映画祭のコンペティション部門で、最も多くの観客の心を捉え、審査員のからも票割れなしの満場一致で東京サクラグランプリに選ばれた『迷子の警察音楽隊』が、まもなく関西でも公開される。

  イスラエルを訪れたエジプトの音楽隊が、目的地を聞き間違え迷子に。ホテルもない閑散とした土地で困り果てた彼らは、地元の人たちの家に一夜だけお世話になるのだが…。敵国同士だった歴史に終止符を打ち平和の約束をしていても、ずっとギクシャクしているアラブとユダヤ。双方には実にビミョーな壁がある。だが本作は、語らいと音楽があれば心は簡単に国境を越えられることを、ユーモアをもって示して見せたのだ。

  イスラエルのみならず、各国の映画際をあたたかい感動で包んだ『迷子の警察音楽隊』から、イスラエル一押しの若手監督エラン・コリリンと、イスラエルのスーパースター、サッソン・ガーベイが昨年、映画祭のために来日。その時に参加した会見で映画に対する思いを述べていたのでご紹介。
―――監督、どういう風にストーリーを構築したのですか?

監督:この映画を作る上で、まず初めに浮かんだのは「ユニフォームを着た厳しい男」。その男が口を開くとアラブの音が飛び出してくるというイメージでした。その基本的なイメージをずっと頭に置いて撮影していました。さらに、外側は厳しいのに内には秘めたものがあるというコントラストを、映画の随所に散りばめたいと考えていたのです。外観では厳しく抑制のきいた物静かな男、しかしながら、心の内にはドラマがある―。
役者のみんなにも矛盾ということを忘れないように心がけてもらいました。また、セットを選ぶ上でも外と内の矛盾を生かしています。例えば、みすぼらしいレストランのシーン。でも、そこでは男女が美しい詩を語り芸術を語る。といった具合に内外の食い違いを基本に置いていました。

―――劇中でエジプト映画についての会話がありますが、監督はエジプト映画をよく見ていたのですか?

監督:私は80年代のイスラエルで育ち、毎週金曜日にはエジプトの映画をTVで見ていました。それが唯一、家の中にアラブの文化が持ち込まれる時間でした。それ以外でアラブの事を聞くというのは、政治的な対立のことばかりでしたから。

そういった中でアラブにおける大衆文化を、ラブストーリー映画などを通して学んで行ったわけです。そして、私もそういうシンプルなラブストーリーを作りたいと思うようになりました。しかし、だんだんハリウッドがイスラエルを席巻するようになり、今ではそのチャンネルもエジプトの映画をかける代わりに、スペイン映画やハリウッド作品を見せるようになってしまいました。
―――サッソンさんは若い頃はどんな風に育ったのですか?

サッソン:私も、若い頃から本当にたくさんのエジプト映画を見てイスラエルで育ちました。というのも、それ以外見るものがイスラエルのテレビには無かったからです。そういう訳でエジプト映画は私の人格を作った文化の一部として確固たる地位を占めています。私は13歳くらいの頃から役者になりたいと思っていました。
この映画に参加できて本当に嬉しく思っています。監督が誘ってくれた事に感謝しています。なぜなら、この映画は私自身の人生であり、舞台や映画などすべての仕事の集大成とも言える作品です。人生が一巡りして輪が完結したと、この映画を撮りながら感じました。というのも、私はイラクで生を受けたユダヤ人です。3歳のときに両親に連れられて移住したのです。そういう意味でも、アラブ文化は大変なじみ深いもの。それを体現できることは大変な喜びでした。

―――イスラエルの人はこの作品をどんな風に感じている?

サッソン:イスラエルの人々の反応はとても良いもので、感動したという声を方々で聞きました。彼らは毎日過酷な政治的闘争下で暮らしているわけですけども、何の罪もない普通の人たちを描いたこの映画を見て感動してくれました。この作品は、映画を見た人々に大きな慰めを与えたということで、大きな成功を収めたのだと思われます。

―――演じる上で心がけられたことはありますか?

サッソン:初めに監督から2ページ分のあらすじとモノローグが手渡されました。それを見た途端に私は、もうこの主人公と同化したような気がしました。つまり「この人を知っている!」という感じがしたのです。主人公がどんなスペースでどんなテンポで生きているのか、声のトーンなどがアリアリと浮かびました。ですから、監督がおっしゃったような主人公の抱えている二面性。表面的にはとても自己統制のきいた人間でありながら心の内では悲しみを抱えている。その主人公のことが良く分かり大好きになりました。映画を撮り始めてからも「彼だったらこのような行動をするだろう」ということをパッと感じ、とても演技がしやすかったです。

―――音楽の使い方について教えてください

監督:映画の中でアメリカの音楽もかなり使っています。それは、いつもイスラエルやアラブの音楽ばかり映画を通して使っていると、それらには大きな重みを想起させる要素があるために、何も人々に想起させたくないシーンではアメリカの音楽を使いました。たとえば、レストランでの夕食や、最後の場面ではテーマをのべるために。チェット・ベイカーの音楽をカリブの場面で使っていますが、自分の現実を忘れて男のファンタジーを生きる瞬間がたくさんあるそういった所に似合う音楽だと思って使っています。

 映画を見終わったあと、誰もがこの映画を好きになっているはずだ。文化を越える人と人のつながりといった普遍的な物語を、押し付けがましくなく心に届けてくれるのだから。

  「制服姿の男8人が迷子」。そのあざやか過ぎる水色の制服と置かれている状況のギャップがなんとも言えない笑いを誘う。誰もが、気まずさを顔に出してけん制しあいながら相手の出方を伺っている設定から、だんだん解れていくまでのコミュニケーションの過程の演出は絶品。特に頑固そうな団長が、心に秘めた悲しみを吐露する場面に胸を打たれる。サッソン・ガーベイの渋い存在感と演技力にうなりつつ、イチオシの面白カットとしておすすめしたいのは「やぼったいローラースケート場でのデート場面」。モテない男子が、色男の青年に恋愛の手ほどきを受けるのだが、このシーンのユーモアったら!思わずニヤリとしてしまう。これも監督がいう外と内の矛盾から生まれるドラマか。しかし、このDJがいて一見クラブのようでいながら、ローラースケート場というヘンテコな場所は実際イスラエルにあるのだろうか。それがとても気になる…。
(中西 奈津子)ページトップへ
 『風の外側』 奥田瑛二監督初日舞台挨拶

『風の外側』
〜 夢を語ることが少なくなった今だからこそ、
               この映画を見てほしい 〜

(2007年 日本 2時間3分)
原作・脚本・監督:奥田瑛二
出演:佐々木崇雄、安藤サクラ、石田卓也、北村一輝、
    夏木マリ、奥田瑛二
12月22日〜十三・十三第七藝術劇場 にて公開
★奥田監督ホームページ→

 あなたは最近、学校や家庭で夢を語ったことがありますか? 目を輝かせて夢を語れることは本当に幸せなことだ。目標を持って生活できたらさぞかし毎日が充実することだろう。いつのころからか、夢を持てなくなり、夢を語ることもなくなってしまった。歳だから・・・と諦めてしまうことも多い。だが、夢を持って生きている人の情熱がいかに純粋で尊いか、この映画は改めて気付かせてくれる。

  今回、下関を舞台に「愛」と「夢」をテーマに掲げて作られた『風の外側』の初日舞台挨拶に、奥田瑛二監督が登壇。この映画に込めた思いと、製作経緯について語ってくれた。
【ストーリー】
 名門女子校へ通いオペラ歌手を夢見る女子高生・岩田真理子(安藤サクラ)は、通学途中の桟橋でチンピラに絡まれたのをキッカケにそのリーダーだった青年(佐々木崇雄)と知り合う。寡黙で名前すら教えようとしない青年だったが、在日三世であることが分かる。 大会社の社長令嬢として裕福な家庭で育った真理子は、青年の実家の貧しいながらも温かい歓待に和み、またそれまで見せたことのない青年の素顔にも触れて、次第に惹かれていく。
  一方、サラ金の取立屋をしていた青年も、自分の夢を目を輝かせて語る真理子に愛おしさを感じ始める。しかし、兄貴分から危ない仕事に誘われて、ヤクザな世界に身を染め、次第に追い詰められていく・・・。
【奥田瑛二監督の舞台挨拶】

 この映画は夢が前面に出ている作品です。前作の『長い散歩』は幼児虐待と老人の再生、そして自己改革がテーマでした。お陰様で海外で評価されて、今度はゆっくりと映画を撮ろうと思っていたのですが、突然下関で映画を撮れ!と言われました。妻の安藤和津が下関の文化事業財団の理事長をしておりまして、何か企画を・・・文化人200人ばかり連れてきて、2万人規模のイベントを開催してはどうか、という案が出たのです。

 そこで、下関を舞台にした映画を撮れといわれ、「予算は?」と聞いたら、指を1本立てられました。「これで」と。ほう1億円か・・・後5000万円位を自分でかき集めれば何とかなる!と思ったら、「1000万円だ!」と。「それでは10分の短編しかできませんよ」というと「それでいいんだ」と。長編映画3本撮っているボクに今更ショートフィルムを撮れというのか・・・と腹が立ってきて、それじゃ自分で資金を工面して長編映画を撮ろうじゃないか!ということになってできたのが、この映画です。

 思えば青春映画に出たことがないので、監督になって「夢」をテーマに青春映画を撮ろうと思いました。 小学生の頃の道徳の時間に、1人ずつ夢を語らされたんです。「よし、映画俳優って答えよう!」と意気込んでいたら、ボクの前のヤツが「映画俳優!」って言っちゃって大ウケだったんです。ボクは何も言えなくなって、「アメリカでアイスを売ります」なんて言っちゃって・・・。意気消沈して自分の夢を語れなかったという切ない想い出があります。

 最近の小・中学生に夢を語らせようとしても、「わからない」とか「夢なんかない」という回答が多いと聞いて、これはゆゆしきこと!と思いましたね。家庭でも学校でも夢を語る機会がなくなったんでしょうねえ。そこで、映画で夢を語れるような作品を作りたかったんです。夫婦でも語れるようなものをね。

 下関で台本を書いていると、1日に4回も潮の流れが変わり、風も変わるんです。釜山からの定期船や貨物船の入港がある下関ですから、在日の方が住んでおられる地区もあるんです。下関市の職員の方に案内を頼んだら、「いえいえ・・・」と断られたので、1人で行ってみたんです。歩きながら、「誰かボクに気付いてくれないかな・・・」なんて思っていたら、1軒の家の戸が開いて、ボクの顔を見て、「あら〜なんでこんなとこいるんだ〜」と驚きながらも、「お茶でも飲んで!」と誘われ、「シメシメ」と上がり込み、5時間もお邪魔しちゃいました。終いには10人くらいの人が集まってくれて、ビールまで御馳走になって、撮影の協力をお願いしたら全面協力して下さいました。正に、映画の中で真理子が青年の実家で歓待されるシーンと同じ経験をしました。

 物語を良くするには、清潔なんだけどさびれた街の雰囲気が必要だと考えていたのです。それには、在日の方のアイデンティティーを物語に盛り込んで、夢とアイデンティティーの二重構造にしたかったのです。その辺りを、何気なく風と一緒に感じ取って頂けたら嬉しいです。どうかよろしくお願いいたします。

 この映画で真理子を演じているのは奥田監督の二女の安藤サクラさん。初主演ということもあって演技に堅さはあるものの、アイデンティティーに目覚めて行動するシーンの力強さや夢を語るシーンでの初々しさには好感が持てた。奥様の安藤和津さんも校長役で出演している。若い二人の主演に対し、真理子の両親役の奥田瑛二とかたせ梨乃や青年の母親役の夏木マリはさすがにベテランの演技で作品を引き締めていた。他にも北村一輝や江原哲之、大友康平、作家の島田雅彦など、多くのゲスト出演も光っていた。

(河田 真喜子)ページトップへ
 『ルイスと未来泥棒』〈みつき〉ちゃん記者会見

『ルイスと未来泥棒』の主題歌を歌った〈みつき〉ちゃんの
                        インタビュー

 沢山の夢が詰まったディズニー映画『ルイスと未来泥棒』のイメージソングを歌う〈みつき〉ちゃん。この映画では、「リジー」という女の子の日本語吹き替え版の声優にも初挑戦している。12月14日に16歳になったばかりの大阪府出身の高校1年生。 「みつきちゃんの伸びのある高音を活かした曲作りをした」という作詞・作曲を手掛けた〈川嶋あい〉さんの言葉通り、感動的な冒険ファンタジー作品であるこの映画にぴったりなイメージソングとなっている。そんな〈みつき〉ちゃんにお話をきいてみた。

★新作紹介→    ★公式ホームページ→

★★川嶋あいプロデュース 2nd Single 『瞳ひらいて』★★
      2007,11,28 On Sale

 実際の彼女は、その真っ直ぐで力強い歌声からは想像もできないような小顔で楚々とした可愛らしさが印象的な女の子。2007年の3月までは大阪府の中学校へ通い、4月から東京へ。幼い頃よりミュージカルが大好きで舞台女優を目指す。目標とする女優は島田歌穂さんと白石加代子さんだそうだ。中学2年生の春に『プレイバック2』というミュージカルに起用されるまで、20〜30のオーディションを受けては失敗してきた。諦めようと思ったこともあったそうだ。松山ケンイチと共演した映画『ドルフィン・ブルー フジ、もういちど空へ』(‘07,7公開)では女優〈高畑充希〉として主演し、イルカと心を通わせる孤独な少女を好演している。
――― 声優に初挑戦ですが、いかがでしたか?
イメージソングが決まってから、「リジー」の声優もやらないか?と言われました。難しかったですね・・・セリフは少ないのですがインパクトのあるキャラなので、どうやってその個性を出せばいいのか苦労しました。


――― 今の生活については?
とても楽しいです。いろんな現場でいろんな人に出会えて、わくわくドキドキの毎日です。
――― 舞台や映画、歌手活動などでどれが一番好きですか?
どれも好きです。いろんな感動をもらっています。

――― この映画の印象は?
夢を持って生きることの大切さや、家族の愛についてなど、いろんな要素が含まれていると思います。心から楽しんで、あっという間に終わっちゃった感じです。特にラストシーンが良かったです。

――― どのキャラクターが好きですか?
山高帽の男が好きです。悪いイメージなんですけど(笑)・・・孤独で弱いところがあるから気になるのかな?
――― スティーヴ・アンダーソン監督に会った印象は?
とてもいい方でした。でもその優しい目で見られたら緊張しちゃって。ルイスに自分を重ねてこの映画を作られたそうで、自分の子供のようだと言っておられました。


――― 〈みつき〉ちゃんの未来は?
はっきりとは分かりませんが、好きな道を歩んでいけたらいいですね。
――― 主演したいものは?
『奇跡の人』です。

――― 主題歌は自分で歌いたいですか?
憧れの別のアーティストに歌ってほしいですね。自分の役どころとごっちゃになっちゃうので。他の人が歌うとどうなるのかも気になります。

――― 自分で作詞することもあるのですか?

これといって考えていません。いろんな曲を聴いていて、もやもやとした気持ちをなぜ曲にできるのか?と改めて尊敬しちゃいます。


――― 最後にこの映画について
夢を追いかけている人の応援メッセージになっていると思います。特に自分の夢を一度諦めたことがある人には是非見てもらいたいし、私の歌も聴いてもらいたいです。

 この映画は、「過去を振り返らず、前へ進み続けよう。私たちは好奇心にあふれている。好奇心こそ新しい世界への道しるべだ。」というウォルト・ディズニーのメッセージ通り、夢のある作品に仕上がっている。初々しい中にも力強さを感じさせる〈みつき〉ちゃん。「自分の極めたい道」を自覚し、そして、夢を実現しつつある彼女こそこの映画に相応しいキャラクターなのかもしれない。「久しぶりの大阪だそうですが、何を食べたいですか?」という質問に、家庭料理。特に「お父さんが作ってくれるお好み焼きが食べたい」と答えた。その和やかな食卓風景が目に浮かぶようだ。これから多彩な華を咲かせていくことだろう〈みつき〉ちゃんの活躍が楽しみでならない!
(河田 真喜子)ページトップへ
 『北辰斜めにさすところ』三國連太郎記者会見
『北辰斜にさすところ』 三國連太郎氏 合同記者会見

監督:神山征二郎(2008年 日本 1時間51分)
出演:三國連太郎 緒方直人 林隆三 佐々木愛
1/5(土)〜 テアトル梅田
1/26(土〜)京都シネマ
公式ホームページ→
 明治時代の日本には、現在の大学にあたる旧制高校という教育機関があった。そこに通うことが許されるのはごく限られたエリートだけ。将来日本を背負って立つ人材として学問のみならず寮生同士、衣食住をともにしながら優れた人格を育成すべく切磋琢磨する場であった。“北辰斜にさすところ”とは、この映画のモデルとなった鹿児島の七高造士館(現在の鹿児島大学)の寮歌に謳われた言葉である。北辰とは北極星を指し、鹿児島市内からは北天31.36度の位置に見られることから、斜にさすと表現したのだろう。

 「長年この稼業をやっております、三國でございます」と口火を切った映画界の重鎮は、
“こういう正攻法の映画を作るというのは業界ではあまり見受けられない。それを一人の弁護士(製作の廣田稔氏)がやろうとしている。こういう人が今の時代に出てきたのは非常にラッキーなこと”とした上で取材陣の質問に穏やかに、しかし力強く答えて下さった。
――― この映画のみどころは?

この映画は日本人にとって大きなメッセージではないかと思います。
私たち日本人にとって、人間にとってと言ったほうがいいかもしれません、生きることの基本的な姿勢を思い出させてくれる作品です。

―――  作品のなかで「天才的な馬鹿になれ、馬鹿の天才になれ」という言葉が登場しますが、三國さんはこの言葉をどう解釈されますか?
偉大な馬鹿になるのは難しいことですが、この言葉に関心を持つこと自体が現代の日本人にとって必要なことではないかと思います。
劇中で寮生が酔って郵便ポストを倒してぶっ壊すシーンがありますが、今の時代の映画ならぶっ壊すところで終わるでしょう。でも、この作品では組み立て直すところまで描いている。あれこそ、今私たちに必要なテーマではないかと思います。


―――  出演依頼があってから引き受けるまでに少し時間があったそうですが・・・・・・

映画に投資するなんていう人は馬鹿です。最初脚本を読んだときも、戦争体験者としてはなにか抽象的でいい脚本とは思えなかった。しかし、一人の弁護士が拠金しながら一本の映画を完成させたいと。今の時代にこういう精神的にも高いものを持っている人が出てきたということは、私たちが携わっている文化運動にとって大きな太陽になるかもしれない、馬鹿は馬鹿なりに随いて行った方がいいのではないか、そう思って引き受けました。

―――  映画のなかにバンカラ学生がたくさん登場しますが、三國さんからご覧になって最近の若い人は?

本当のバンカラというのは実に人間性に富んだものであり、今のバンカラは形だけになっている。日本人が戦後失ったものの一つはこのバンカラでしょう。これは若者の意識の問題でしょうが、決して現代人にとっても無理なスタイルではないと思います。ぜひ日本中にバンカラが増えてくださることを願っています。
――― この映画への出演が最後となった故北村和夫氏について

今村昌平グループで一緒に仕事をしました。北村さんとは渥美さん(清氏)たちと演劇論を交わした仲です。彼は非常に抜きん出たタイプで、こんなに早く亡くなるとは思っていなかったんですが、優れた人間観を持った人物で人に一切同情を求めない、今村も小沢昭一なんかもそうですが、嘆きを自分の中に秘めて自分の歩む道を確かめていく。
北村さんというのはすべてを秘めて座員のために生きた人だったと思います。そういう人は近頃いないですよね。
――― 若い頃とくらべて演技はどうかわってきたのでしょうか ?

この4〜5年の傾向ですが、世代観の認識といいますか、84歳の演技者として演じなければならない一つのリズム、役目みたいなものがあると思って演じています。若い頃のように社会の歪みたいなものに開き直って抵抗するというより、自然体で視聴者の方にプレゼントして自分自身を考えてもらうクッションになる、そういう芝居をした方がいいかなと考えてこの1〜2年そういう脚本を探してやらせて頂いています。

―――  これからやってみたい役は?たとえば強烈なラブシーンとか・・・・・・

ラブシーンは四六時中求めていますが(笑)現実にはできない訳ですよね。
いつも燃えていないと役者としての本質が薄れてしまいそうで怖い。この映画にあるように世界が乱脈している、色々な国があって、色々な考え方をしている、宗教的な違いもあると思いますが、おしなべて人間として何かを訴える、平和なら平和、それが役者として一番大事な使命だと考えています。

 今までで一番好きな作品は?の質問には、僕は木下恵介(監督)をはじめ名匠たちの良心をみつめ、その良心に応えようとして俳優生活を続けて来られた、非常にラッキーな人間です。と語り、やがてそれが演劇論へと発展していった。

 自分たちが主役だと思うことは大きな錯覚だと思うんです。他人こそが主役、観客も含めて全体が主役、そう考えなければ私たちは次の世代に何もプレゼントできないで終わるんじゃないですかね。

  時々ふと戦後の空しさみたいなものを感じて、この先どういう作品に出て世間にどんなプレゼントができるのかと思うと無力さにやり切れなくなるときがあるんですが、無力は無力としての何かがあるはずだと思うんです。文化運動として、それを一人でも多くの人に伝達し、皆さんと一緒に見直してゆく、社会人の責任として熟慮すべきことだと思います。

  尊敬している俳優さんが二人います。藤山寛美さんと森雅之さん。このお二人は本当の意味での俳優さんだと思っています。

  森さんと寛美さんについて話したときに「演劇は大衆のものでなければいけない」という言葉が出た。寛美さんはまさに大衆演劇の人。他人の芝居というものをけっして邪魔しない。相手のために演じている。今の若い人のなかにそういう人が出てこないのが寂しいですね。そこで僕に何かできないかと思って始めたのが「釣りバカ」です。

 何度も“プレゼント”という言葉を使われたのが印象的だった。
この作品では85歳の祖父が戦時下に送った青春時代の思い出を孫に伝えてゆく、そして、孫はその想いを受け止める。まさに三世代に渡って交わされる“プレゼント”だ。さらに作品そのものは作り手を離れ不特定多数の観客へ“プレゼント”される。その思いが常に三國さんの心にあるのだろう。三國さんの言葉はしばしば演劇のみならず人生にも通ずるもののように感じられた。

  師匠(新藤兼人監督)に追いつくにはまだまだと言いながらも、神山監督の作品はすべて観ておられる三國さん。廣田氏に対して敬意を持って使われた“馬鹿”という言葉、この作品に対する思い、そして演劇に対する情熱の源泉を垣間見たような時間だった。
(山口 順子)ページトップへ
 『Little DJ 小さな恋の物語』舞台挨拶
〜神木隆之介、福田麻由子、
          そして大阪出身の永田琴監督来阪〜


(2007年 日本 2時間08分)
監督:永田琴
出演:神木隆之介、 福田麻由子、 西田尚美、 石黒賢、 広末涼子

12/15〜シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 他にて公開
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 1977年の函館を舞台に、入院先の病院で“DJ療法”を始めた少年と、彼の同室に移動してきた1つ年上の“ミイラ”少女の甘酸っぱい初恋と成長を描いた『リトルDJ 小さな恋の物語』から、永田琴監督と主演の神木隆之介&福田麻由子が来阪。舞台挨拶を行った。

  まず、『渋谷区円山町』で長編監督デビューを飾った大阪出身の永田琴監督が「自分の映画が、地元・大阪で上映されてすごく嬉しい。幅広い年代の方に共感してもらえるように作ってあるのでゆっくり楽しんで下さい」とご挨拶。
 この映画の主人公は12歳の太郎と13歳のたまきであり、タイトル通りまさしく“小さな恋の物語”的ストーリーなのだが、「なんだ、子供の恋愛話か」と侮ってはいけない。恋する素晴らしさだけでなく、人と人をつなぐ血の通った温かな思いを、ストレートな眼差しで万人の心に訴えかける強さがある。監督が言うように幅広い年代が感情移入でき、ただ初々しいだけで済ませるにはもったいない作品に仕上がっているのだ。
 映画の中で太郎とたまきを接近させる重要な小道具と言えば“ラジオ”。70年代のノスタルジックな雰囲気にピッタリの代物だが、平成生まれの主演2人はラジオを聞くのだろうか。神木「聞きます。おじいちゃんと良く一緒に野球中継を聞いて、太郎のようにマネをしながら遊んだこともあるので、役にすごく接点があるなと思いました。」福田「私はポルノグラフティの大ファンで、お2人ともラジオをやられているので、それは毎週聞いています。」

  中学生の二人でもラジオに馴染みはあるらしい。では、恋愛の部分はどうだったのだろうか。病院でDJをしている男の子に気持ちを寄せていく少女たまきという役柄に対して「私自身も太郎君の人柄や性格にすごく惹かれたので、難しくはなかった。やりやすかったです。緊張もあまりしませんでした。」一方の神木くんは「2人のシーンは本当に緊張しました!特にお気に入りのシーンでもあるのですが、太郎とたまきちゃんが病室で一緒のベッドに入って、イヤホンを片方ずつに分けてラジオを聞く所は、本当にドキドキして…。すごく印象に残っています。その緊張はホンモノなので、見ている人にすごく伝わると思います(笑)」
 劇中では、麻由子ちゃんの方が年上という設定であるが、実際は神木くんが1つ年上。にも関わらず恋に関しては押され気味の神木くん。思春期は女の子の方が堂々としているものだが、その傾向は現場でも表れていたよう。「明るくて楽しい現場で、神木くんも同年代でうれしかったけど、あんまり話してくれなかった」と麻由子ちゃん。それを受け当の神木くんは「撮影していた去年は、女の子と接しなれてなくて…。学校でもあまり女子と話す機会がなかったから、どう話していいか分からなくて。現場でいつも、ヤバイ!話が止まる。次は何の話をすればもっと会話が続くのだろうか?ってことで頭がいっぱいになっちゃって」とカワイイ弁明を必死に披露。司会者に「それは太郎そのものじゃない」と突っ込まれ苦笑いする姿がなんとも微笑ましい。

 ピュアな2人の掛け合いのおかげで試写会場も一気に和やかな雰囲気に。この小さな天才と映画を作り上げたことに対して永田監督は「本当に幸せでした。監督として、やりがいがあり、思っている以上のものが得られるので、すごい楽しかったです」

  そして、最後に3人からメッセージが。「人を好きになってよかったなとか、人を好きになるっていいなって思える作品なので、見終わったあとに人を好きになることにすばらしさを気付いてもらえたらなと思います。」(福田)「この映画は“ありがとう”とか“ゴメンナサイ”とか、そういう簡単な言葉が大切なんだなと改めて考えさせてくれる。人間的に大事なことを教えてくれる映画だと思うので、見終わった方がそういう大事なことを感じていただければなと思います。」(神木)「すべて2人が言ってくれた通りです(笑)あと、エンドロールの最後にも大切なメッセージを残していますので、最後まで見ていただけたらなと思います。」(永田監督)

 天才子役と呼ばれる14歳の神木隆之介と13歳の福田麻由子の共演はまさに完璧としか言いようがない。彼らのスクリーンで見せる役者っぷりに観客は涙ポロポロ。舞台でのサービス精神とプロ根性に拍手喝采。間違いなく会場に来ていた観客は2人のファンになって帰ったに違いない。果たして彼らは10年後どうような俳優に成長しているのであろう。まさか“「別に」騒動”の女優のようになってはいないだろうが、さわやかなままであって欲しい。そんな想像を掻き立てられる今年ナンバー1の清々しい舞台挨拶だった。

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 『サーフズ・アップ』 小栗旬 舞台挨拶
〜正に“旬”の人、小栗旬登場!〜

 (07・アメリカ 85分)
監督・脚本 アッシュ・ブラノン
吹き替え版 声の出演 小栗旬 山田優 マイク槇木 清水ミチコ 山寺宏一
字幕版 声の出演 シャイア・ラブーフ ズーイー・デシャネル ジェフ・ブリッジス ジョン・へダー ジェームズ・ウッズ
12/15(土)〜TOHOシネマズ梅田、梅田ブルク7、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸、他全国ロードショー
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 伝説のサーファー“ビッグZ”に憧れ、故郷のシバレルタウンからペングーアイランドにやってきたコディが、新人サーファーの登竜門
「サーフィン・ワールドカップ」に出場し優勝を目指す様子を描いたサーフィン・バトル・ムービー。ペンギンたちのユーモラスで可愛い動きも見所だが、ほぼ実写のような躍動を見せる波の映像に注目したい。最新の技術が尽くされたリアルなビッグウェーブは圧巻の迫力なのだ。
 そんな本作で、ペンギン・サーファー界の“テッペン”を目指す主人公コディの日本語版吹き替えを担当した小栗旬が、大阪で行われた試写会の舞台挨拶に駆けつけファンを驚かせた。完全シークレットだった今回の舞台挨拶で、まさか今が旬の小栗旬に会えるとは予想していなかった観客は、小栗の登場で一気にヒートアップ!

  しかし、当の本人は主演舞台「カリギュラ」大阪公演の合間を縫っての参加のためか、少々お疲れ気味。でも、それも今年の大ブレイクぶりを見ていると仕方ないと思えてくる。映画、ドラマ、舞台と相当な過密スケジュールで多忙を極める小栗だが、観客の歓声には“旬スマイル”で応えていた。
 『クローズZERO』の撮影でも大阪に滞在していた小栗は、大阪でよく行く場所を聞かれ「梅田のロフト」と返答。しかも、意外に「全然バレない」のだとか。声優の仕事は「面白かった。でも、みんなが思っているほど華やかな現場ではない。何度も同じ場面に挑戦して、もう出来ません!みたいな感じでやっているので(笑)」と舞台裏を明かした。
 今回の声優を始めドラマや映画でいろんな役を演じて切り替えは難しくない?との問いに「どうだろう。忙しすぎて切り替わっているのかも分からない」と“旬な年”の大変ぶりを振り返った。そして、来年は「大きな休みを取る」とリフレッシュ宣言。バカンスに行くなら「ハワイ」と答え、高校2年から始めて最近は行っていないサーフィンにもまた挑戦したいと胸のうちを語った。そして観客に「映画を見たあとはお友達にもサーフズアップをすすめて楽しんでください」とメッセージを送り舞台挨拶を締めくくった。

 舞台挨拶後の会見では、吹き替えの作業を、舞台の本番とドラマの撮影をぬって3日で全部やりきったことも披露。アフレコで大変だったのは「自分が喋っている所に相手が入ってくるとか、相手が喋っている所に被せて喋るところ。あっ、今このセリフどこで喋ったんだろう?みたいになるので」と語った。本編で流れる音楽でお勧めの曲は「コディとビッグGがドルフィン・スルーをする所で流れる、一番たぶんメインで使われている曲。タイトルは覚えてないんですけど(笑)その曲は車でも聞いたりしています」
 長期の休みについては「今年は忙しすぎて、目標も通り越した感があった。芝居をやりたくなくなってしまったので、春から長い休みを取ります。次の作品も全然決まってないです」と話した。小栗は、来年1月からの連続ドラマ「貧乏男子ボンビーメン」が控えており、夏には映画「花より男子〜ファイナル〜」が公開されるため、その合間を利用しての数週間のリフレッシュとなるようだ。
 働きざかりで花ざかりの今、自分を見失わないために「しばらく休む」ことに踏み切った小栗旬はえらい。ブームを客観的に捉え、俳優としての“旬”にこだわらない姿勢に、小栗旬の男らしさを感じることが出来た。クールな役から、コメディ、ヤンキーまで実力は実証済みの彼が、リセットした後どんな風に大きく成長するのかが楽しみでたまらない。
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 『魍魎の匣』合同記者会見
〜謎解きエンタテインメント。魍魎御一行が来阪!〜
ゲスト:
原田真人監督、堤真一、椎名桔平、田中麗奈

(2007年  日本 2時間13分)
 監督:原田真人
 出演:堤真一、阿部寛、椎名桔平、黒木瞳、田中麗奈
12月22日〜梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸他にて公開
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 京極夏彦のベストセラー小説“京極堂シリーズ”の第二弾『魍魎の匣』の完成を記念して大阪でマスコミ向けの合同記者会見が行われた。

  バラバラ連続殺人事件を軸に、少女の行方不明、不幸を箱に閉じ込める宗教団体、崖の上にそびえ立つ箱型の研究所の秘密、と“ハコ”にまつわる3つの“魍魎”事件を複雑に交差させながら描いた本作で、メガホンを取ったのは『突入せよ!あさま山荘事件』の原田眞人監督。その秀でた演出力で1000ページもある原作を2時間強でキッチリまとめ上げた。その映画に対する意気込みと共に、現場の裏エピソードなども聞いた。
―――まず、監督に映画化のきっかけをお伺いします
監督:一にも二にもキャストですね。いつか仕事をしてみたいと思っていた人たちばっかりだったので。ただ、渡された準備稿(脚本)がピンとこなかった。だから、初めは非常に悩みました。で、準備稿じゃなく原作を読んでみたところ、これが面白かった。僕が原作で面白いと思った所が準備稿で全部削られていたんですよ。で、そこから自分で脚本を書き始めました。

―――あの原作のボリュームをどうようにまとめられたのですか。
監督:まず京極堂の見せ場をどうするか。どうように京極堂を立たせるかに要点を置きました。原作を読んだ時に、御筥様のところに乗り込んで行って、寺田兵衛と対決する場面が面白いと思った。あそこが準備稿ではスッポリ抜けていたんですね。まずそこから立ち上げて、今度は京極堂を生かすために、榎木津・関口・木場という順番で見せていこう。そういうキャラクター中心の脚本構成というのを割りと早い段階から決めました。
原作のような構成ではなくて、キャラクター主体の時間軸で行ったり来たりの方が、今の映画文法には合っているかなと。
―――出来上がった作品を見ての感想は?

堤:完成品の出来栄えが良くてビックリしました。
椎名:キャスト、スタッフ、すべてが素晴らしいと思いました。
田中:出演しているのに、ワクワクして最後どうなるんだろうって思いながら見ていました。損はさせない映画です。
―――今回、京極堂シリーズに挑むに当たってみなさんそれぞれ課題はありましたか

監督:課題は、今までの自分の監督作のなかで一番カット数の多い映画を作ろうと(笑)実は、僕自身がメゲてるときにこの企画が来たんですね。ほんとに人生の壁にぶつかって絶望しているような(笑)何でこう次々と企画が没になるんだろうという時だったので。課題としては、「ここから始まる上昇気流があるぞ」と自分に言い聞かせるような形で楽しもうという気持ちで入りましたね。

堤:前作にも出演していますが、監督が変わるということで、新しい作品に参加するという気持ちの方が強かったですね。脚本もぜんぜん違うし。自分たちが原田組に参加するという、転校生のような気分で挑みました。

椎名:原田監督作品は『金融腐蝕列島 呪縛』『突入せよ!「あさま山荘」事件』に続き3作品目で大好きな監督でもあります。原田作品というので参加を決めました。僕が演じた関口という男は実に掴みにくい役で、どういう風に作ったらいいかアイデアが浮かんで来づらい役でしたが、現場でのキャスト同士の掛け合いとか、監督とディスカッションして生まれるものとか、そういった関係性らキャラクターを作っていきました。

田中:前作での敦子は、ある問題をポンと投げかけてサッと去っていくような役割だったんですけど、今回は割と最初から最後の方まで事件に関わっていて、みんなと一緒に動いていたりするので、どれだけ他の役者さんと絡めるかが課題でした。原田監督の引力に引っ張られて、前回とはまったく違う世界に入り込んだという感じでしたね。
―――苦労と楽しかったエピソードは?

堤:苦労はとにかく携帯電話がつながらないこと(笑)現場が山奥ばっかりで、しかも寒い。でも苦労はそれぐらいかな。あとは、キャストが楽しい人たちばっかりで、その人たちと芝居しているのが楽しかったですね。残念なのは、上海ロケに行けなかったこと。初めは、寒そうだし、食べ物のとかも脂っこそうやし、上海ロケに行けなくて喜んでいたのですが(笑)でも、楽しそうにやっている写メールをですね、田中麗奈から送られて来たり、出来上がった作品を見ると「あ〜、この風景に俺も居たかった」という気持ちになりましたね。
椎名:苦労はあんまり感じさせない、楽しいことしか思い浮かばないくらい心地いい現場でした。え〜、(堤さんに向かって)上海は非常に楽しかったですね(会場笑)。裏エピソードとして、上海ロケが始まってもう数日経ったころ、監督にね「今日はどこにご飯行ったんですか?」って聞いたら「今日は1人でホテルの近所のどこそこに行ったんだよ」とか言うので「あっ、1人ですか」って。ちょっと監督が川沿いに佇む姿が寂しそうにも思えたので、田中麗奈に「今晩、一緒にメシ食おうぜって監督に言いに行けよ」ってもちかけて(笑)で、
田中も「私がですか〜」とか言いながらも監督のところにトコトコと行って「今晩一緒にメシ食わねー?」って。もうその時の監督のリアクションが本当に見せてあげたいくらい幸せそうな顔で(会場爆笑)そういうことが楽しかったですね。


田中:その時はですね、何回か練習をさせられた覚えがあって(笑)マギーさんと拮平さんが「どう言うんだよ。やってみな」とか「もっとこういう風に言え!」とか芝居の稽古をしてくれました。楽しかったです(苦笑)

監督:「えっ、そんなことしてたの〜?まぁ、裏はあるんだろうなとは思ってたけど。でも、その火鍋は楽しかったですね。可哀想なのはマギーですよね。そうやって仕込んどいて彼はその日に日本に帰っちゃったので。で、麗奈がみんなで火鍋を食べている写真を彼に送って「今、食べてます」って(笑)それは、一番楽しかったし、料理もおいしかったですね。その時、阿倍ちゃんもいてすごく美味しいから何日も通いつめたほど。

椎名:(堤さんに向かって)まぁ、君は知らないと思うけど。(会場笑)

監督:あっ、ちなみに苦労したのは編集です。みんなに自由にやらせたためにいかに編集が大変だったか(笑)

―――監督、最後にひとことお願いします

監督:この作品がヒットすれば我々はまたこのメンバーでもう一本作れるので。気に入った方はバーッと広めて頂きたい。この乗りの良さを続けさせてください!

 京極堂シリーズの熱心なファンならば、この映画を見て少々「あれっ」と思うかもしれない。なんせ、京極堂がよく動くのだ。「小説ではちょっと動くのも面倒な男が、映画の中ではアクションもする」とは作者の弁。しかし、キャラを立たせるといった小説とはひと味違う原田流の斬新な構成には京極夏彦も「おもしろい」と太鼓判を押している。会見に登壇したキャスト陣の仲のよさは、画面上からも窺い知ることが出来、終始息ピッタリな共演で楽しませてくれる。監督がもう1作とラブコールを送るのも納得のチームワーク。そんな原田流“京極堂”をぜひ先入観なしに堪能してみて欲しい。
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 『ルイスと未来泥棒』 小林幸子・プレミア試写会舞台挨拶

 今年は、ディズニー長編映画『白雪姫』が、作られてから70年。今回、公開される『ルイスと未来泥棒』はその記念作品。生みの親であるウォルト・ディズニーの言葉がメインテーマです。

  まず、ミニレビューショー。今まで公開されたディズニー映画の紹介とダンサー達のダンスはとても素敵でした。最後にお姉さん達のこの映画のテーマである【未来の夢】を来場の子供達へ質問、そして軽い体操の後、いよいよメインゲスト・ミルドレッドの声を担当した小林幸子さんの登場です。テレビで拝見するままの溌剌とした様子は元気そのもの!


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《レビュー》
 養護施設で育てられ発明が大好きなルイスは、ついに《メモリー・スキャナー》を発明します。それは、自分の記憶を映像にできるというすぐれ物。実は、自分を施設に捨てたお母さんを見たい!という願いを込めて作ったのでした。ところが、発表会で失敗し《メモリー・スキャナー》を山高帽の男に盗まれてしまいます。失敗して自分に自信を無くすルイス。

  その時!彼の前に現れたのが、タイムマシンに乗ったウィルバーという少年。ウィルバーはどうも《メモリー・スキャナー》を盗んだ山高帽の男の事を知っているようなのです。ついついウィルバーに誘われタイムマシンに乗ってしまうルイス。そしてその未来は、彼には考えられないすばらしい世界でした・・・

  実は山高帽の男は、《メモリー・スキャナー》を自分の物にしようとした【未来泥棒】だったのです!【未来泥棒】の為に未来を変えられようとする未来。それを知ったルイスは、未来を元に戻そうと決心するのでした・・・


  今の人間には未来の事はわかりません。そんな未来もこの映画では【自分で作るもの】と気づかせてくれます。ルイスの未来も輝かしい物かもしれないけど、【あきらめる】と違った物になるかもしれないのです。

【過去をふり返らず前へ進み続けよう。夢を実現するのは人である。】ウォルト・ディズニーのこの言葉は、ルイス・そして映画を見た人達への応援歌なのです。
小林 「ミルドレット役やらせていただいている小林幸子です。こんにちわ!」
司会 「なんか一曲歌っていただきたいような。」
小林 「みなさまの前で唄うのが仕事なんですが今日は声優としてやってきました。」
司会 「トークショーですからね。」
小林 「いつもは、こんな格好とかあんな格好とかぎらぎらした衣装なんですが、今日は地味な格好できました。見ていただればわかりますが、ミルドレットの雰囲気の洋服でやってまいりました。」
司会 「ミルドレットというのはルイスの養母さんといいますか・・・」
小林 「そうですね養護施設の寮母、ですからルイスのお母さんのような役をやらせてもらっています。」
司会 「今回は小林さんディズニー映画は初めて吹き替えという事でが、やってみていかがでしたか?」
小林 「楽しかったです。ミルドレットになりきりました。 実は私、ウォルト・ディズニーさんとお誕生日が一緒なんです、年は違いますが・・・」
司会 「一緒だとたいへんです・・・」
小林 「同じだと100才になってしまいます。12月5日という事で ウォルト・ディズニーさん。世界中のみなさん・もちろん大人のみなさんも、それぞれすばらしいお仕事をなさってて、私も歌手というお仕事を通してみなさんに喜んでもらえるという何かどっか共通するものがあって喜んでもらえたらなっと、いい仕事をさせてもらいました。 」

そこで、会場のみなさんに同じ誕生日の人は?と質問、何人かいて司会の方と小林さんはびっくり。
司会 「ウォルト・ディズニーと誕生日が一緒なんて大物ですね。12月5日というと・・・もうすぐお誕生日ですね。」
小林 「年は聞かないでください。」
司会 「会場のみなさんからハッピーバースディーのプレゼントでもしていただきましょうか、よろしいですか歌ってもらって・・・」
小林 「え・・・ほんとですか?」
司会・会場から小林さんにハッピーバースディのプレゼント、小林さんはハッピーなご様子です。

そして、映画のお話。
小林 「ほんとにいい映画です。私は最初はたのしくニコニコ笑って楽しく楽しませてもらいました。でも、最後はお父さんもお母さんもそして全部のみんなが大泣きすると思います。人間てどうしてこんなにすてきなんだろう美しいんだろうって思わせてくれるとってもすばらしい映画です。ぜひ、楽しみにしていただきたいと思います。」
司会 「小林さんにとって夢ってどんなものでしょうか?」
小林 「私は9才の時に古賀政男先生に認めていただいて10才の時にデビューしました。10才の子います?」
会場では、お父さんが手を挙げたりします(笑)
小林 「小学校5年生の時にデビューしました。歌手になっていろんな事がありました。でも、こうしてみなさまに会える・・・耐えてきた事を誇りに思っています。止めようかなと思った事はたくさんありました。でも、私もルイスと同じようにあきらめない・・・私もあきらめないでがんばってきた。そうした事だと思います。」
司会 「さっき、くじけそうになったというお話がありましたが、そうなった時に「よし、がんばるぞ!」と思う心構えとはどんなものなんでしょう。」
小林 「私はとっても歌が好きでした。みんなも自分の好きな事がたくさんあると思います。そんな、楽しい事をいつも思い描いてがんばれると思います」

司会 「タイムマシンがあるとしたらどこへ行ってどんな事をしたいですか。」

小林 「そうですね、未来も行きたいし過去にも、もちろん行ってみたいですね。デビューする前の自分に戻って「今の小林幸子ってどう思う」って聞いてみたいですね」
司会 「今の自分の・・・紅白の衣装なんかでタイムマシンに・・・」
小林 「あ・紅白の衣装で思い出しましたけど。28年連続で出していただいている中で、電飾の衣装とかを着た事がありました、それはみんなも大好きなディズニーランド、もちろんディズニー映画もそうですが、私・東京のディズニーランドができる前にアメリカのディズニーランドに行った時にエレクトリカルパレードを初めて見てこんなにすごいのがあるんだと思って、あのパレードに出てくるあんな感じの衣装を着てみたいと思ったのが最初でした。」
司会 「それが、ディーズニーへの思い入れが衣装に繋がって」
小林 「最初は、それがスタートですね。シンデレラのガラスの靴を履いてみたいなと子供の頃に思いました。それが高じてピカピカする洋服ばっかり着て・・・」

司会 「小林さんにとってディズニー映画の魅力とは?」

小林 「夢を与えてくれて、やさしい気持ちにさせてくれるもの・・・お父さんもお母さんもおじいちゃん・おばあちゃんも、子供の時代があってそして歴史があって、今の年代になったんだと思います。子供の夢を忘れないでいてほしい。そんなことを思い出させてくれるのがディズニーアニメだと思います。
泣いたらダメってよくいいますが、泣きたい時はどんどん泣いていいんだと思います。泣いた後、前に進もうって思ってくれるならそれが一番いいと思います。」

司会 「そして、感動的なシーンだけでなく、コミカルで楽しい場面もいろいろあったりしますね。」

小林 「みんな必ずしゃぼん玉・巨大なしゃぼん玉で移動できるんです。あの中に人が入って移動できる・・・未来のシーンで出てくるんですけど。あれは、早くそんな時代がくればいいなって思いました。何年かかるかわからないけど長生きして一生懸命その時代に未来に生きたいなと思ってました。」
司会 「現実的にはちょっと先の話かもしれませんが・・・」
小林 「わかりませんよ、できるかもわかりませんよ。」
司会 「小林さんだとたとえばステージでしゃぼん玉の中で唄ったり・・・」
小林 「飛びながら唄ったりしてますけど」

司会 「未来を担うちびっこに何かメッセージをお願いします。」

小林 「 【未来を夢見る事はすばらしい事です。でも、本当の意味は、今を一生懸命生きて、自分にも周りにも正直に、そして、人を思いやる、そんな日々の積み重ねです。それがすばらしい未来になると思います。】
いろんな事があると思いますが、どうか、負けないで前へ前へ進んででください。そしたらみんなのすばらしい未来が待っていると思います。
余談ですが、これは世界中のみんなに見てもらいたい。いろんな状況で見られない子供達もいます。日本の政治家のみなさんに特に見てもらってすばらしいいい未来を作ってもらえたらなと考えています。どうぞ、よろしくお願いします。ありがとうございます。」

司会 「最後にこの映画の見どころをおねがいします。」
小林 「どうぞ、最初は笑って最後は感動して泣いてください。」

 いつも、ユーモアたっぷりのメッセージと試写会のお客さん達にも気遣い優しいお姉さんという感じの小林幸子さん。未来へ託す気持ちと元気をたくさんもらったトークショーでした。
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 『ルイスと未来泥棒』 奥村ゆうこ(アニメーター)会見
 アニメーション製作の重要な一部分である“ライティング”を担当しているのが、ディズニースタジオでも数少ない日本人スタッフの奥村ゆうこさんだ。神戸の大学を卒業後、東京でテレビゲームの開発に5年間従事。そのあと単身渡米した彼女はハリウッドでアニメ業界の門を叩いた。夢を叶えてから4年。今もディズニースタジオの優秀なスタッフとしてアニメ制作に取り組んでいる奥村さんが『ルイスと未来泥棒』の日本公開に先がけキャンペーンのため来日。インタビューに応じてくれた。

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―――まず、初めに“ライティング”とは主にどんな作業か教えてください。
私が担当するのはアニメ制作においてのほぼ最終段階。アニメーションが全て入った状態で人物や背景に光を当ててあげる。それによって立体感を出したり美しく見せたりする作業です。

―――ディズニーへの入社って相当難関に思えるのですが。
実は、最初はドリームワークスに就職していたんです。もちろん入るまではすごく大変で、ポートフォリオやデモテープを見せて、どういった経験がありどんな仕事ができるのかスキルを全て見た上で採用が決まるので。ですが、アメリカって一度大手に入れば小回りが利くんですよ(笑)それにディズニーは初め2Dしかやってなかった。私がやっているのは3Dなので。ディズニーが3DCGをやり始めたと知ってから入社したんです。

―――前から海外を目標に?
大学2年のときにアメリカを旅行して、それから留学したいと興味を持ち始めました。それから大学の3年4年はずっと学校の勉強をおざなりにしながら留学のためにTOEFLばっかり勉強していましたね。

―――日本とディズニーのスタジオの違いは?
歴史のある会社ですので、ディズニーならではのアニメーションの素晴らしさをやはり感じますね。すべて手付けでしているので、非常になめらかで微妙な表情の違いとかも、繊細な動きがつけられるのは全然違いますね。

―――ディズニー自体はどんな会社ですか。遊び心がある?
監督もすごく面白いし、仕事しているときでも常にお祭りのような感じですね。非常に和気あいあいとしています。あと、建物がものすごい大きな帽子の形をしていて、階が上がるごとに帽子なので段々狭くなっていくんですね。それに合わせて家具も特注で作ってある。でも、ミーティング中に壁が斜めだと「気が散る」ってことで、その部屋は使わなくなってしまったとかいう笑い話も多々あります(笑)
―――映画が85%出来た状態のときにジョン・ラセターが入ってきて、半分以上変えられると耳にしたのですが、それは本当?。

はい(笑)もう少しで終わりだというときに、話をもう一回見直すって。そのあとフタを開けると自分のやった箇所の半分以上は持っていかれたっていう。気に入ったショットとかあったのでガッカリしました。「え〜、あれ無くなるの?」って。ただ、いい物を作りたいという意味で苦にはならなかったですけど。それに、ジョン・ラセターはとてもハートのある人で、儲けのためでなく、何年後も残るいい映画を作りたいと考えている。そのためには努力を惜しまないんです。
*ジョン・ラセター:『トイ・ストーリー』『カーズ』の監督でありピクサー作品のすべてを統括。ディズニーのピクサー買収後は両スタジオの最高製作責任者

―――ディズニーにも日本のアニメ好きはいますか。
もうみんな大好きですね。ジャパニメーションっていう名前が出来ているくらいですから。ジブリと、押井守の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』とか。あとは『AKIRA』とか大友監督のアニメ全般。オタク系の方はみんな好きですね。

―――今回の手がけた部分で気に入っているシーンは
やっぱり、タイムマシンのところですね。一番時間をかけてやったショットなので思い入れがあります。そのシーンを始めてアートディレクターに見せたときに、「こういうのが欲しかったんだ!」と足踏みして喜んでくれたのが嬉しかった。

―――ライティングってどのくらいの時間をかけて仕上げるのですか。
1ショットに1〜2週間くらい。忙しいときで2ショット1週間とか。

―――ディズニーも残業がある?
あります。1日8時間+ランチタイム1時間で通常の9時−18時に、まずプラス2時間っていうのが始まって、段々忙しくなるとプラス4時間で土曜日が入る。もっと忙しくなるといくらでもやってくれっていう。でも、日本のようにそんなにやる人はいないです。徹夜することはまずない。『チキンリトル』のときも、「ものすごく忙しくなるから覚悟してやってくれ」って言われて、気合いれて週末働きに行ったら誰もいなかった(笑)全然修羅場じゃない。ディズニーらしいですね。

―――ライティング業界で尊敬している人とかいますか?
私のスーパーバイザーが『ナイトメアー』の製作をされた方でやっぱりすごく細かくて、パッと見て「これ45度より40度にして」とか「10から11.5」とか何で分かるの?みたいな。細かすぎて途中で腹が立ちますね(笑)

 海外で活躍する日本女性という特集をテレビで時々目にするが、奥村さんも間違いなくその一人である。物腰がやわらかく、ユーモアがあり聡明さも併せ持つ。きっと仕事も的確にこなし、その上きちんと自分色を出すことが出来るのだろう。かといってキャリアウーマン特有の自信満々な威張った雰囲気は一切ない。ディズニースタジオで働く日本人と聞いて、どんな人物かと想像つかないままのインタビューだったが、会って納得。夢のある映画は、夢のある会社で、夢のある人たちによって作られているのだ。話を聞けば聞くほど、ディズニーって楽しそうな会社だなと憧れを抱いてしまった。
(中西 奈津子)ページトップへ
『ミッドナイトイーグル』 合同記者会見

ゲスト:大沢たかお、竹内結子、吉田栄作 

〜雪と汗の結晶〜

監督:成島 出(2007年 日本 2時間11分)
出演:大沢たかお、吉田栄作、竹内結子、玉木宏
松竹系全国公開中
新作紹介→    公式ホームページ→

某月某日 未明。北アルプス山中に米軍ステルス型戦略爆撃機―通称“ミッドナイト・イーグル”が墜落の模様。特別部隊に告ぐ、至急現場に急行せよ。

 カメラマンの西崎(大沢たかお)、自衛隊特別編成部隊の佐伯(吉田栄作)、週刊誌記者の有沢(竹内結子)の三人はそれぞれに重大な任務を抱えている。各々が手探り状態のなか奮闘し、最後にひとつになるという壮大な物語。映像化は不可能と言われた高嶋哲夫の原作小説が、成島出監督の手によって新たに生まれ変わった。

 雄大な北アルプスの写真パネルをバックに主役の三人が顔を揃えた。 “雪山班”の貴重な体験談をまじえながら、それぞれの作品への思いを語ってもらった。

――― 好きなシーン、または心に残ったセリフは?


大沢:好きなシーンはいっぱいあるんですけどね。クライマックスに近づくに従って、大作アクションから人 間ドラマに集約されていく段階での役者さんの表情が素敵だったんで、やっぱりそこを観てもらいたいですね。

竹内:総理を演じる藤竜也さんの「悪いのはこのおっちゃんや」というセリフがありまして、ああ、こうやって背中できちんと受け止めてくれる人がいて欲しいと思いましたね。

吉田:僕が出演しているのは雪山の男三人のシーンに尽きるんですが、「われわれは軍隊ではない、自衛隊だ」というセリフは大変な宿題をもらったような気がしましたね。

――― 主題歌「はるまついぶき」の感想と、作品にどんな想いを込めたかお聞かせください

大沢:聴かせてもらったのはクランクアップした後だった気がするんですが、人間ドラマの部分の感情の  ひだが歌詞に表れていてハッとしましたね。セリフにも書かれていない内面の部分が、映画を観ていないのに的確に捉えられていて、この楽曲を使わせていただいて感謝しています。
大きな事件が起きて、出てくる人たちがそれに向き合って生きてゆく、その中でひとつ“勇気”というのがテーマなのかなと思って。仕事を超えた、何かが起きたときに人のせいにしたり、誰かがやってくれるだろうというのではなく、個人が自分のできることを勇気を持って立ち上がるというところがいいなと思いました。そこに想いを込めて芝居をしました。

竹内:まず着うた配信が始まってすぐダウンロードしました。
後半の方で“向かい風だろうと翼にして”と語りかけるような歌詞の部分が好きです。緊張をやわらげてくれるようでもあり、励まされるようでもあり。
この作品では、登場人物みんなが大切なものを守ろうとしていると思うんですが、自分には何ができるだろうかと思いながら演じました。

吉田:素晴らしい曲を提供していただいたなと思っています。ミスターチルドレンの櫻井くんとはデビューしたての頃から交流があり、今回一緒に仕事ができたこと は感慨深かったですね。
そんな危機感もありまして、リアルな作品にしていきたいと思っていました。
――― 吉田さんは実際に自衛隊に体験入隊されたそうですが、それぞれ演じられた職業について事前にどのようなイメージを持っていましたか?

吉田:二年前に公開された『亡国のイージス』という映画に出演させ ていただいたとき にも海上自衛隊を見学させていただいたんですが、どういうものを食べ、普段か らしていることに、実際見たり触れたりしていると、確実にリアリティが増して いくと僕は信じているところがあるので。今回も現役の自衛官の人が見たときに “こんなに軟弱な自衛官はいないよ”と思われないようにがんばりました。
大沢:以前に実在の戦場カメラマンの澤田教一を演じたときに、ベトナムで経験したことが強烈に体の深いところに残っているので、その気持ちを持って演じました。
雪山のシーンが多かったので、1ヶ月ぐらい前から技術トレーニングをしていたんですが、新潟とか八ヶ岳とか色々まわりまして、こうやって人は死ぬんだな、 と思うような(危険な)場面もあって、玉木くんと“本当に大丈夫なのかな、 この映画”なんて話していました。


竹内:私は雑誌記者という役をいただいたんですが、好奇心と情熱を持った方がする 仕事なのかなと。実 際こうして記者の方と接する機会が多いので、もしご覧に なって、“竹内こんなんじゃねぇよ”という方がいらっしゃいましたら 個人的におハガキください(笑)監督とも相談の上だったんですけれども、記者という役ではあるけれども、 それよりも有沢慶子という一人の女性として演じました。

――― 映画を通して何か発見はありましたか?

大沢:主人公の相手役の女性と一緒のシーンがほとんどなかったのは初めてでしたね。 僕らは雪山のシ ーンを吉田さん、玉木さんと“雪山班”て呼んでたんですけど、 道案内をしてくれる製作部の人が行きはいたのに帰りに通ったときにいなくて、 あれ、どこに行ったのかな?と思っていたらビバーク(雪山で風よけの穴を掘っ て休むこと)してたんですよ! 製作部が避難してる撮影現場なんて初めてでした(笑)スタッフ、キャストが ひとつになって立ち向かってできた作品なんだなぁと思いました。

竹内:銃を撃つシーンがありまして、撮影の日まではワクワクしていたんですけど、 本番の日、現場に行ってみると火薬が仕込んであって。もちろんモデルガンでは あるんですけど、引き金を引くと破裂するようになっている仕掛けも用意されて いて、その音を聞いたときに、えらいものにさわってしまったと。手のひらに 収まる小さなもので人一人の人生を変える力があるなんて怖いなぁと思いました。

吉田:自衛隊での最終日に自衛官の方に「吉田さん、自衛官にとって一番大切なスキル とは何だと思いますか」と質問を受けまして。「体力でしょうか、能力でしょうか、仲間を思いやることでしょうか?」「そのどれでもありません。自衛官にとって一番大切なものは使命感です」と。その言葉はとても重かったですね。役を作るにあたって刺さった言葉でした。あと、雪は痛いです!ハリケーンという巨大な扇風機で削った雪を吹きつけるんですが、目を開けてものが言えない。もう、雪は痛いです。

――― 現場で感じたことと仕上がった作品を観てからの発見みたいなものは?

大沢:ミッドナイトイーグルが墜落した現場のセットを見たときに、壮絶というか、 30mぐらいあるのか、そこに50mから100mぐらいずーっと穴が掘っ てあって、ミッドナイトイーグルの破片があるんですよ。それを見たとき凄い 作品なんだと感じました。それを見てからすごく気合が入った記憶があります。
戦闘機があったり空撮があったり、“雪山班”以外にも3ヶ月ぐらいかけて別々に撮っていたものが調和されて融合されてひとつのものになったときに、日本独自のスケール感のあるアクション大作というのはこういうものなのかなと思いましたね。

竹内:第一印象としては、想像より雪山シーンが激しくて。 お互いが今どういう状況におかれているのか想像しながら演じていた状態だった んですが、実際の映像は想像を超えていて、凄い作品に出たんだなと思いました。

吉田:やっぱりミッドナイトイーグルの墜落現場を見たときは役者冥利に尽きるという か、あの現場で仕事できる俳優はこの三人(大沢さん、玉木さん)だけなんだ ということにすごく幸せを感じて。クレーンを使って墜落現場に近づくカット が一番観てみたいと思っていましたが、見たときには想像通り、エライ画(え) でしたね。

――― 雪山はとても寒かったみたいですが、防寒対策はどんな風にされましたか?


大沢:スープとか温かいものを採ることですね。実は、隠れて足裏ホカロンを登山靴のなかに入れていたんですよ。そしたら、かいた汗が凍って感覚がなくなってしまって。雪山では登山服を信じて、あとは、やっぱり甘いものを取ったり、体を中から冷やさないようにするのが一番でしたね。

吉田:大沢くんとか玉木くんが着ていた服は質の高い、改良された最新式のものだった と思うんです、僕が着ていた服は、“お願いしますよ、防衛省”という感じで(笑) 下は7枚、上は6枚、着込んでいたんですが、重ねても重ねても寒くて。 足は全部しもやけでしたね。

  最後の質問で質問者が「寒かったみたいですが・・・・・・」と切り出すと、すかさず大沢さんが「みたいじゃなくて、寒かったんです!」と突っ込み、そのやり取りが掛け合いのようで場内は笑いにあふれた。三人三様、話し上手で、時おりユーモアを交えながら和やかに会見は終わったが、吉田さんの醸し出す職人のような雰囲気がとくに印象的だった。竹内さんは銃を手に、大沢さん、吉田さん、玉木さんは雪山で、まさに体当たりとなった今回の撮影。この経験が各人に役者としてますますの輝きをもたらすにちがいない。

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第20回東京国際映画祭 『クローズ ZERO』舞台挨拶
<第20回東京国際映画祭 特別招待作品『クローズZERO』舞台挨拶>

監督:三池崇史   (2007年 日本 2時間9分)
出演:小栗旬、山田孝之、やべきょうすけ、黒木メイサ
上映劇場 TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、シネ・リーブル神戸 他
公式ホームページ→
 熱狂的な人気を誇る高橋ヒロシの伝説的コミック『クローズ』を、鬼才・三池崇史監督が完全オリジナルストーリーで映画化した『クローズZERO』。通称“カラスの学校”と呼ばれる鈴蘭男子高校で巻き起こる“鈴蘭制覇”をかけた不良たちの壮絶な抗争を、圧倒的な迫力で描く。とにかくケンカ、ケンカの連続であるが、その中にキラリと光る“男の美学”には心底しびれてしまう。そして、なんといっても敵対勢力のリーダー・源治役の小栗旬と多摩雄役の山田孝之が、素晴らしい役者魂を見せてくれる。ラストの2人の“一騎撃ち”は鳥肌モノだ。

  この映画は、第20回東京国際映画祭「特別招待作品」として上映され、山本又一朗プロデューサー、三池崇史監督、やべきょうすけ、小栗旬、山田孝之による舞台挨拶が行われた。
Q:会場の皆さんに一言

プロデューサー:これまで多くのプロデューサーが映画化にこぎつけようと努力してきた作品ですが、原作者がそれを拒み続けていました。原作のイメージを損なってしまうのではないかという思いからです。そんな中、幸運にも私は映画化の許可を原作者からもらうことができました。ですから、やるからには最良のキャスト、スタッフで映画化したいという思いがあり、脚本家の武藤将吾、三池監督、クルーのみなさんとキャストの大変な努力があって、皆さんにこうしてお披露目出来ることになりました。今日は楽しんでください。

監督:この映画のような男たちがいれば、まだまだ日本は大丈夫だと思える映画ですから、皆さんも身を任せて楽しんでいただければと思います。
小栗:この映画に参加できて、源治という1人の男を最後まで演じ切れて誇りに思っています。そして、僕はこの映画でやべきょうすけという人を男にしたいと思っていますので皆さんよろしくお願いします(笑)。

やべ:格式ある東京国際映画祭なんですけども…えーと、僕はぶっちゃけこうゆう空気苦手なんで(笑)自分らしくいこうかなあと。まず、小栗君ありがとうございます!本当に恐縮です(笑)
僕のキャラは、こうゆう見たまんまだと思うんで映画を観ていただければ「あの人本当に芝居してたのかな?」と思う人もいらっしゃると思うんですけど、この作品には人との出会いの大切さや痛み、成長、そういったものが全てフィルムにおさめられていますので、皆さんがいろんなことを感じていただければと思います。

山田:この映画に関わった方たちは全員、本当に楽しい映画が出来たと胸を張って言えるので、観て楽しかったと思ったら、是非皆さん宣伝して下さい。

Q:若いキャストと一緒に仕事をされてみていかがでしたか?

やべ:本当に素晴らしかったですよ。ものをつくる、人に伝えるという想いが非常に強くて、僕はこの世界に入って17年ですが、本当に先輩たちだと思えるくらい感性豊かで、まさにこのクローズをやるために集まった人たちなんだと。
言ったことはないけど、心より尊敬しております。(やべの熱い言葉に会場思わず拍手)
Q:今回の役は今までと違うとても存在感のある役ですが、演じる上で楽しかったこと、大変だったことは?

山田:こうゆう役はすごく望んでいたのですが、イメージなのか、なかなかこなくて。やっときて、またひとつ、役者としての別の顔が見せられるチャンスだと思いました。大変だったのはアクションですね。慣れていなかったし、こんなにアクションシーンだらけの作品はこれまでなかったので。
Q:このクローズの原作は男性に人気が高いですが、女性の方々にはどんなところを楽しんでいただけると思いますか?そして、男性はどんなところを楽しめると思いますか?

小栗:この映画は、とにかく登場人物たちが一生懸命生きて、毎日を楽しくする方法を探している人間ドラマです。みんながすごく魅力的な個々のキャラクターをすごくチャーミングに演じていると思うので、男性も女性も素直に観て、キャラクターたちを愛していただければと思います。

 映画同様、“お人好しの兄貴”だったやべが、終始会場を和ませてくれた。山田は言葉こそ少ないが、熱い思いがひしひしと伝わってきた。一番驚いたのは、この日の小栗と山田が、“源治と多摩雄”だったこと。眉間にしわを寄せ、目はすわっている。その表情は紛れもないあの「カラス」たち。2人が、役を演じるのではなく、“生きて”いたからだろう。それは同時に、この作品への愛情がとても深いことの表れなのかもしれない。
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『椿三十郎』 森田芳光監督と織田裕二 合同記者会見
『椿三十郎』森田芳光監督、織田裕二 合同記者会見

〜平成の三十郎見参!〜

(2007年 日本 T時間59分)
監督:森田芳光
出演:織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、中村玉緒、鈴木杏

12月1日〜TOHOシネマズ梅田、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸他、全国東宝系ロードショー公開

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 小学校5年生の時に初めて黒澤明監督の『椿三十郎』に出会って、映画監督を目指したという森田芳光監督。そして、三船敏郎という大スターが演じた役に、現代のリーダー像を加味してより魅力的に演じた織田裕二さん。お二人の記者会見は、作品への熱い想いが伝わると共に、ユーモアを交えて、作品同様人間味あふれた和やかな会見となりました。
監督:自信を持って皆さんにおくれる作品が出来たことを2人とも喜んでおります。
織田:何でも聞いて下さい。

―――― 脚本については?

監督:小学5年生の時に初めて黒澤明監督の『椿三十郎』に出会って、本当に面白いと思いました。今までにない面白さに驚き、そして、現代にも通じる脚本なんで、これを変える必要があるのか?これを私たちで撮ったら、若い人達にもきっと感動を与えられるんじゃないかな、と思って素直に映画化しました。

―――― 最初にお話があった時は?

織田:20年間映画一筋でやって来られた森田監督に声を掛けられて、とても嬉しかったです。その時初めて台本とDVDをもらって見ましたが、その面白さにびっくりしました。いろんなことを考えさせてくれました。まず、イジメの構造を連想して、この作品にその答えがあるのでは?・・・「見て見ぬふりはできない」という椿三十郎の行動こそひとつの答えなのではないか、と。それから、いつの時代も汚職はなくならないし、今必要とされていることが沢山盛り込まれています。これは今こそやるべき作品なのでは、と思い「是非やらせて下さい!」とお願いしました。

―――― どういう想いを込めて?

監督:今の若い人達を正しい方向へ向かわせるリーダー像。今の若い人達がいい上司を思い描くのは、椿三十郎のような人!そして、それをやれるのは織田裕二さんしかいない、と思いました。
―――― 時代劇ということで不安とか、特に勉強になったことは?
織田:時代劇は3度目でしたが、全く違う新鮮な気持ちでした。撮影前に1ヶ月間着付けと殺陣と所作について若侍達と勉強しました。ラッキーだと思ったことは、日本人に生まれて良かったな!ということでした。これは外国の俳優にはできないこと。日本の俳優の特権のようなもので、こんな題材があるのに勿体ない!と思いました。いろんな年齢の人達が一緒になって楽しめるのが時代劇なんじゃないかな?と思います。
着物を着付けないので、歩き方には注意しましたが、正座やあぐらをかくことにはすぐに慣れました。日本人なら習慣として自然と身に付いたことですから。
―――― 部下の悩みを聞いてしまった場合、答えてあげるタイプか?あるいは聞かなかったことにするタイプか?
織田:椿三十郎は若侍のお手本になれるようで、実はそうではない。最後に「俺についてくるな!」と言ってるように、自分の人生が誇れるものじゃないという自覚があったと思います。不正を糾すという若侍達の精神は素晴らしいことだと思うが、やり方は「俺の真似すんなよ!」ということがどこかにあると思う。僕は僕の椿三十郎を作って行きたい。教えられることは教えるが、君は君で考えろよ、と言ってあげますね。

監督:異性関係だったら答えられます。金銭関係のことだったらカットします!(笑)。

―――― 織田さんと監督は、お互いの中に椿三十郎を感じることはありますか?

監督:若侍達に織田裕二さんをどう思うか聞いたら、ストイックな人、と答えたんですよ。現場では映画のことしか考えない。中村玉緒さんが声を掛けた時だけプライベートな話をしてましたね。ずっとセリフの練習をしてました。僕も演出しながら、「何回目の演技がいいか」と聞かれるから、それに答えるのが大変でした(笑)。
織田さんが椿三十郎に似ている点は、正義感ですね!「俺がなんとかしよう!」という気持ちが強くて、監督としてとても有り難かったですね。

織田:椿三十郎は剣の腕はたつし、ユーモアがあって弱い者の味方、監督に当てはまりますよ。

監督:僕は椿三十郎というより、「押入れ侍」に似ていると言われます。困った時は押し入れに入ってしまうという(笑)。

織田:しゃべり方に独特の節回しがあるんですよね。
―――― ご自身で椿三十郎に似ていると思われる点は?
織田:着たきりスズメで、どこにでも寝転がってしまうところかな?

―――― 織田さんにとって自分流の椿三十郎とは?

織田:前の作品と比較されるという覚悟はしていました。監督からは、「椿三十郎は1番バッターの様な存在で、現代のヒーロー像のようなイメージで」と言われました。難しいと思いましたが、前のは上からものを言っているようなので、それぞれの個性と和を尊重してくれる上司が理想かな?と思って演じました。
  椿三十郎と室戸半兵衛の関係も、三船敏郎さんと仲代達也さんという当時歴然とした差がある中で無理矢理ライバル関係を作っていったように思われます。今回は豊川さんがやって下さったお陰で、お互い何十年もこの世界で生きてきた役者として、自然と湧き上がる相手を認め敬う感じが出ると、もっとカタルシスが生まれるんじゃないかな、と。それが、最後のシーンでも表れていると思います。「勝てばいい」ではなく、勝った後も相手を思いやる気持ちこそ人物を大きく見せるような気がします。

―――― 黒澤明監督作品のリメイクということで、大変なプレッシャーがあったと思いますが、マスコミ試写が終わった今のお気持ちは?

監督:自分の中である種の答えは出ているのですが、やはり映画というものは、皆さんに観て頂いて答えが出るものなので、正直言って初日が開かないと満足感はないですね。

―――― 三船敏郎と比較されることについて?

織田:三船敏郎さんの椿三十郎は大好きです。でも、同じことをやっても同じにはならないと思います。台本はそのままなので、下手に変えようとせず、いいところは真似してもいいくらいな気持ちでやりました。歌で経験があったのですが、カバー曲を最初から自分流に歌おうとしても歌えなかったので真似して歌ってみたら、予想外に個性的な歌い方ができたんです。その経験を活かし、いいものはそのままで、違うところは自分流でと。それでいいのかな、と。後は観られる方の好みの問題なので・・・「両方好き!」って言ってもらえたら嬉しいですね。

―――― いろんな映画にご出演の織田さんから見て、45年前の黒澤さんの台本の魅力とは?

織田:台本は読み方によっていろんな見方ができるものなので、台本は歌に例えると歌詞だけんですよ、メロディーが付いてなくて。それをバラードに仕上げるか速いテンポに仕上げるのか、演じ手によって変化します。今回は、監督がどのメロディーを気に入ってくれるかが問題でした。ハマルと気持ちがいいですね。

―――― 気に入ったセリフは?

織田:真似したくなったセリフは、「あぶねえ、あぶねえ」のような独特な節回しがあるものがいいですね。

監督:名前の言い方も特徴があります・・・「つばき、三十郎・・・」

織田:小学生が真似てくれたらいいですね(笑)

―――― 会心のシーンは?

監督:ラストですね。それまでいい映画をとってもラストがダメならねぇ・・・前の作品が血しぶきでしたから、違ったイメージで撮ったらドラマとしても巧くいったと思います。椿三十郎と室戸半兵衛の友情の行方がラストに向かっていったということで、いいラストだと思います。

“ 39歳の織田裕二さん。まさに「もうすぐ四十郎ですが・・・」?! ”  
黒澤明監督の『椿三十郎』を観たことがある人も、時代劇を観たことがない人も、この面白さの虜になること間違いなし! もっともっと時代劇が映画化されることを心から願っております。

(河田 真喜子)ページトップへ
『茶々 天涯の貴妃(おんな)』 合同記者会見
『茶々―天涯の貴妃』 東映京都太秦撮影所での記者会見

(2007年 日本 )
監督:橋本一  原作:井上靖
出演:和央ようか(元宝塚宙組トップスター)、寺島しのぶ、高島礼子、渡部篤郎

12月22日〜全国東映系ロードショー
公式ホームページ→

 あの元宝塚宙組トップスター・和央ようかが退団後初めての映画に初主演するのが、この『茶々 天涯の貴妃』です。井上靖原作 『淀君日記』の映画化。 現在、京都の東映太秦撮影所や伏見城、二条城などで撮影が行われています。その撮影真っ只中に特別記者会見が行われ、多くの報道陣が詰めかけました。京都太秦撮影所のセットの中には、豪華な衣装を着けた主な出演者が勢揃い。・・・その前に、
★坂上東映取締役の話

 一昨年のお正月映画『男たちの大和』と去年の『大奥』が受けたので、また京都撮影所で製作することになった。そこで、新しい企画で、新しい監督で時代劇を撮ろうということで、当社の橋本一監督を育てるためにも今回の起用となりました。

 淀君に関しては、その実像を大方の人はご存じないのではないかと思います。存在感があって、今までにない女優を、と思っていたら大阪の人から和央ようかを紹介されました。東京でコンサートを見に行って圧倒されました。楽屋で初めて会って、目力を感じて、いきなり台本を渡して出演依頼をして、9月になってようやく主役が決まりました。

 45年映画をやっていて東映娯楽映画を知っているつもりでしたが、今の映画の価値は観客動員数に反映されます。映画が好きだというスタッフやキャストや橋本監督のお陰で、この時代劇を作る現場に映画製作の情熱が残っていることを感じました。映画の作り手、演じ手、映画のチケットを鑑賞券と言ってくれる映画党の人々が、これから映画を作っていくことを感じています。今が潮流の変わり目にきていることを実感しております。

 伏見城で戦闘シーンを再現できると聞いて、城を改修することにしましたが、その改修費に1億円を越してしまいました。撮影後もそのまま残すことを検討しているとのことで、ホッとしております。お金だけでなく、ものづくりをしてくれる人々がこの京都にはまだまだおられます。そんな京都のためにも、時代劇、娯楽映画を超えた新しい映画ができると期待しております。

★橋本一監督

Q:和央ようかについて
茶々という役柄については、強い女性なのではまり役だと思います。全身で表現できる今時珍しい女優さんではなかとも・・・いい茶々に仕上がると思います。


Q:映画出演の下地がないことに関しては?
いい面を出来るだけ引き出して、和央ようかなりの茶々づくりを心掛けています。
Q:茶々の目線で戦国時代を描くことについては?
この時代は、物のように売買されたり、政治的交渉に使われたりして女性が虐げられた時代でもありました。そんな中で、落城の憂き目に遭いながらも、大阪城の主と駆け上っていく様はアッパレ。そのドラマチックな生き様を活劇として撮っているのです。そのため、時代考証については忠実ではありませんが、オリジナルな茶々像を、戦国ファンタジーとして見てほしいですね。


Q:橋本なりの演出とは?
とにかく、作品を見て下さい。

Q:京都撮影所については?
17年間ずっとここにいる。90%は京都で仕事してきました。ここの素晴らしさも、こうしたらいいのでは?という面も熟知しているつもりです。

Q:女性が主人公の時代劇ですが、ターゲットは?
僕自身が喜んで撮っているので、39才の男性ですね(笑)。幅広い方々に見て頂きたいですね。

Q:京都撮影所の厳しい現状と、ここで製作する意義について?
時代劇製作の機会が減って嘆かわしい現状です。時代劇が好きな人が多い中で、製作費が掛かりすぎるので、この作品で、ちっぽけな風穴を空けたい、と思っています。
★和央ようか、寺島じのぶ、高島礼子、渡部篤郎、高橋一監督
和央:初めての映画出演で、緊張すると共に幸せな想いでいっぱい。茶々は現代では憧れの女性像だと思う。

寺島:一生懸命生きた小督(おごう)を、一生懸命に演じたい。

高島:素晴らしい役者とスタッフに囲まれて嬉しい。和央ようかさんの初主演映画に出演できて光栄です。
渡部:なんと僕が秀吉役!光栄です。大きな作品なので、ご迷惑をお掛けしないように。

監督:心を込めて全力投球しています。のたうち回りながら撮ってます。

Q:役作りは?
和央:このままで演じてます。男役ばかりでしたので、所作のお稽古を少しやってます。

Q:戸惑いは?
和央:演じることには変わりません。舞台と撮影現場との違いはありますが、毎日楽しんでやってます。

Q:茶々の印象は?
和央:台本を読んで面白いと思いましたが、自分が演じるという実感はありませんでした。単純にカッコイイと思いました。

Q:時代劇は?
和央:普段の生活には影響ありませんが、内股で歩く練習はしましたね。

Q:和央さんへの印象は?
寺島:まだお芝居してないのでわかりません。時代に翻弄される姉妹をうまく演じられればいいなと思っています。

高島:内股にはかなり気を遣っているご様子でした。撮影所ではしゃいでいる様子は、宝塚スターの別の顔がみられたようで、得をした気になりました。

渡部:現場でも立派です。僕なんかぐんぐん引っ張られるような感じです。

Q:茶々に共感できるところは?
和央:凄く稟として潔い。強さの中にも弱さを見せて人間味があってカッコイイと思いました。

Q:共通する点と違う点は?
和央:か弱い女性ではないので似ているかどうか?何があっても表に出さず、自分のペースで進むところは見習いたいですね。

Q:茶々の衣装について?
和央:嬉し恥ずかし、びっくり!

寺島:初見で、大きい方だなあ!と。

高島:内股で歩く姿が印象的。足音がシャッシャッっと大きく聞こえました。妊娠中の役だったのでそれでもいいか、って。襟を直すときも、スッと大きく直していました。

渡部:女性的な方だと思いました。声も素敵だなあ、と。

Q:茶々と小督(おごう)が姉妹で戦う気持ちは?
和央:まだやってないので実感がありません。現代でもありえるかも?

寺島:茶々はとても勇ましいが内面は弱い、小督はか弱そうに見えて内面はしっかりしていると言う対比が面白いかな?と。

監督:和央さんは男役というイメージで、茶々を格好良く演じてくれています。また女性らしいところにも日々惚れ直しているところです。
 宝塚大スター《和央ようか》の新たなスタートは、『茶々』から始まります。どんな新しい魅力を見せてくれるのか、今からワクワクしてしまうのは私だけでしょうか?

 実は、和央ようかと花總まりの『フェルゼンとマリーアントワネット』を観て以来、すっかり和央ようかに魅了されて、髪型・服装まで真似してしまったくらい。 どれ程の夢とときめきをもらったことでしょう。あの宝塚劇場での恍惚感は一生忘れられない宝物でもあります。  きらびやかな衣装は勿論、颯爽と馬を駆り戦う姿の『茶々』を、早くスクリーンで観たいものです。
 東映時代劇は、物心ついたころから観ていた映画です。伝統と技術に裏打ちされた確かな映画作りには、全幅の信頼をおいています。いち映画ファンとしても、京都太秦撮影所での映画製作が増えることを心から願っております。みなさんも応援して下さいね。
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