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記者会見レポート
「王の男」 イ・ジュンギ舞台挨拶レポート
イ・ジュンギ
「王の男」 イ・ジュンギ

@シネプレックス枚方
2006年12月10日、オープンしたてのシネコン「シネプレックス枚方」に罪な ほどに美しい男がやってきた。

  その名はイ・ジュンギ。韓国で大ヒットした映画「王の男」で美しい旅芸人「コンギル」を演じる若き俳優である。
  この作品でいまや韓国一とも言える人気を誇る彼だが、他の韓流俳優と比べ日本での知名度はまだまだ?そんな心配は無用。ここ枚方の地にもジュンギの姿を一目見たいという女性陣が多数押し寄せた!

  名だたるスターが集結した東京国際映画祭でも、誰よりも多くの黄色い声援を受けていたジュンギ。そんな彼がこの映画について関西のファンにだけ語ってくれた!

イ・ジュンギ(以下 ジュンギ):(日本語で)初めまして、「王の男」でコンギル役のイ・ジュンギです。よろしくお願いします。

森川  :あの美しさはエステに通われたとかされたのですか?(会場笑)

ジュンギ:特別にエステに通ったりはしてません。そのかわりよく寝る、よく休みをとる事が肌に良かったのかもしれませんね。

森川  :流し目なんかもすごく美しかったのですが、かなり練習されたのですか?

ジィンギ:そうですね。コンギルの役は目の演技がとても大事だと感じていました。ですので、この目の神秘さを出すために研究をよくした事はあります。 特に女性の目の演技を研究していました。

森川  :ところでここは枚方で京都が近いのですが、京都でロケされていましたよね?

ジュンギ:京都で「バージン・スノー」という映画を撮影していました。宮崎あおいさんと京都で一ヶ月以上、寝泊りしながらの撮影でした。その撮影の時にあまり噂になっていないせいか、見に来てくれる人が少なくて、寂しい一ヶ月半を過ごしました(笑)。

 京都の印象は、とてもいいです。静かで考え深い街です。東京は自由奔放な街だと思いますが、大阪を含め京都は、人々は情熱的ですが、街自体はすごく静かな街という印象を持っています。

森川  :関西は情熱的ですよ〜この「バージン・スノー」は来年の春に公開されます。
      南禅寺とか、松尾大社とか撮影にいかれたそうなので、そういう所も皆様行ってみるのもいいのではないでしょうか。この「王の男」もぜひ皆様お誘いあわせの上、劇場に足を運んでください。

森川   :それでは皆様に最後に一言お願いします。


ジュンギ :大阪含め関西地方はあまり来た事が無かったので、感動してくれるか心配だったけれど、皆様の反応をとても嬉しく思っています。
機会があればこの関西地方を訪れたい。僕はまだまだ新人俳優です。これからもっと努        力 をしていい俳優になれるようがんばっていくので、皆さん応援してください。
(芝田 佳織)
 愛の流刑地
愛の流刑地
 2006年12月14日、「愛の流刑地」の合同記者会見が行われ、鶴橋康夫監督、主演の豊川悦司さん、寺島しのぶさんが来阪された。

  渡辺淳一の大人気小説の映像化、そして久々の本格的な「大人」の恋愛映画ということで2007年・お正月映画の中でも大注目の作品である。

  豊川さんはデニムの上下、寺島さんは真っ赤な洋服に身を包み、オーラ全開で近づきがたい雰囲気はあるものの、お二人とも冗談を言ってくれるほど気さくで素敵な方だ!

Q:この映画を撮る中で気をつけられた事は?

豊川 : ねばねばしないように どろどろしないように気をつけました。
寺島 : 体をいつになく綺麗に洗いました。

Q:京都でロケをされていましたが、行かれたところや思い出に残っているところは?

豊川 : ホテルグランビアの一室で殆どセックスしてましたからね(笑)。いったといっても上賀茂神社くらいでしょうか・・

寺島 : 確かにホテルグランビアは忘れられないところになりました(笑)。上賀茂神社は私にとってはクランクアップの場所であり、とても印象に残っています。二人の出会いの場所でもあるので、監督の映像美をぜひ観て欲しいです。

Q:豊川さんと寺島さんは4度目の共演になりますが二人の印  象や新しい発見は?

寺島 : こういう映画なので豊川さんは誰よりも早くにシーツ をかけてくれたりして本当に優しい人でした。

豊川 : 早くシーツをかけないと怒られるかなと思いまして
      (笑)全て寺島しのぶにコントロールされていました。


Q: 演じた自分の役(キャラクター)についてどう思われますか?

豊川 : 自分からみれば、もっとしっかりしろよという男です。 のみにでも行こうか!といいたくなるような男。
     
  その菊治を演じるにあたり、メールをうつときや待ち伏せしている時の演技で少年ぽさを出しました。 絶対一人でいる時に性格が出るので。二人の愛については正直100%は理解できていないところもある。 でも彼は罰も受けているし、そこまで人を愛してしまうというところに憧れはあります。


寺島 : 冬香は今まで頭の中で考えていた事がいつしか体が先に動いてしまうようになる。恋をした誰もがありうる行動で、私は好きです。
私は冬香という人間を生きただけですが、そこはまっとうしたと思う 色んな意見があると思いますが、そこは皆さんに観て頂きたいと思います。


Q:現場の印象は?

豊川 : 現場の雰囲気はとてもよくて、満たされていた感じでした。

寺島 : 撮影現場にいくのがこんなに楽しい映画は久しぶりだった。 内容的に、きついかなと思っていす。 本当に宣伝したいという映画と、そうでもない映画もあるんですけど(笑)
この映画は全面的に宣言したいです!

豊川 : ちなみに宣伝したくない映画はなんていうの?

寺島 : それはいえません!(笑)

Q:昔と比べこういう映画を観に行く女性が増えましたが、女性に対してどう思いますか?

監督 : もともとは女性にも観て欲しいと思って作ったが、必ずしも男、女として感情移入しなくてもい      いと思う。

豊川 : この映画をとって改めて女の人のすごさ、深さを知りました。男よりも完璧に、高級につくられ完成度が高いイメージです。 リスペクトしています。
女性の観客がこの映画をどうみるのかが楽しみです。

寺島 : 男性も女性から生まれてくるわけだし、女性はすごく強いのかなと、女性のほうが現実的なのかなと思いました。 男性は夢を追い求めたり、少年のようなところがある。色んな方の意見があって 、女性の意見は特にバラバラです。でも明るく性について語るのもいいのではないでしょうか。
Q:主題歌の印象は?

寺島 : 映画を一回しか見てないのですが、イベントで何回 聞いているうちにものすごく耳に残るんだなと思いました。 口ずさんだりしている自分がいます。

  もし買っていただいたら(何で私、宣伝してるんだろう(笑)
2番の歌詞がすごくいいので聞いて欲しいです。冬香の気持ちの通りだと思います。

豊川 : 耳から確かに離れなくなりましたね。

Q:寺島さんに質問です。お母様役が実のお母様でしたが共演の印象は?

寺島 : ワンピースのチャックをあげてもらうシーンがあるのですが、出来上がって初めて母がこんな恐い顔してたんだと思いました。やっぱり母は恐いです(笑)

Q:20年も待たされて(ずっとテレビ界だったので)やっと映画をとられましたが・・・初監督の印象は?

監督 : 俺がやらなくちゃと思う瞬間がある。動物的なカンでこれだったら(この世界に)出ていけるかもしれないと思った。多少の不安はあったが、(主演の)二人と心中するつもりでやった。迷いはなかった。
      
  主役の2人を誰がやってくれるかで決まるようなものだった。 二人共が思った以上に確信犯(適役)だった。
  この映画をとり、主演の二人と一緒に仕事をして映画界も捨てたもんじゃないなと思った。
  今、全国宣伝のツアーに出ているが、映画は出来上がっても、こうやって最後の最後までいく。 だから失敗しても成功しても誰のせいでもないと思う。

  観ていただいた観客の方には、土下座してバラの花でもあげたいくらいです。テレビだと何かをしながら観ている人が多いが、映画は密室で観るもの。みんな一緒に呼吸している感じがいい。いままで映像にジャンルはないと思っていて、自分は一生テレビでいいと思っていた。だが映画の世界の人に対して尊敬が出来た。可能性があればこれからも映画をとっていきたい。



「愛の流刑地」は2007年1月13日より
ナビオTOHOプレックス 他全国東宝系にてロードショー!
大人の皆様!! オススメです!
(芝田 佳織)
僕は妹に恋をする
僕は妹に恋をする
『僕は妹に恋をする』
郁役の榮倉奈々さん、安藤尋監督、合同インタビュー


監督: 安藤尋  (2006年 日本)
出演: 松本潤 、榮倉奈々 、平岡祐太 、小松彩夏 、浅野ゆう子


 双子の兄妹の恋愛という衝撃的な内容にもかかわらず、真剣で切なく純粋な想いを描き600万部の大ヒットコミックとなった青木琴美の「僕は妹に恋をする」。その人気作がついに映画になった!

  主役である双子の兄妹・頼と郁には、ドラマや映画において評価の高い『嵐』の松本潤と、ドラマ「ダンドリ。Dance☆Drill」で注目の新人女優、榮倉奈々が扮している。
  監督・脚本は「blue」の安藤尋。

  その話題作から、キャンペーンのため安藤尋監督と榮倉奈々さんが来阪。07年1月20日(土)の公開に先がけて合同インタビューが行なわれた。
Q:まず始めに監督、原作は読まれたんですよね?

 監督:はい。読みました。

Q:その上でこの作品を引き受けられた一番の魅力は?

  監督:始めて原作を読んだ時は、そのショッキングな内容に僕もドギマギしてしまったんですが(笑)その中でも「兄と妹」という設定ではあるけれど、一方ではある純粋な恋愛感情というものを大変丁寧に描いているなと。
  現代ってタブーとか障害とかあまり無い時代ですが、逆にそういう意味では兄と妹って絶対に成立しえない枷があるわけですよね。この恋愛は成立しえない。そうすると、たぶん最後には終わらざるをえない。
  その“終わり”っていうものを二人はどうやって受け入れていくのか?そういう様な自分なりの考えの方向に、ある程度ベクトルをスライドさせられるのであれば、「やれるな」っていうのがあって。そこに興味を持ったっていうのはありますね。
Q:原作には過激なラブシーンがありますが、映画の中ではそういったシーンは直接的には織り込まず、カメラの動きでやセリフで二人の感情を表す方法を取っていますよね。映画ならではのこだわりを盛り込んでいると思うんですが、そういった意味では、ある程度、原作とは切り離した別の作品になっていると言ってもいいと思いますか?

監督:そうですね。まず最初に、原作者の青木さんが「原作から思いっきり離れても構わない。映画として一番成立するものを作ってください」ということを言ってくれたので、それは大きな励みになりましたね。
 
  そして、もともと考えとしてあったのは。例えばラブシーン一つにしても、マンガだとやはり絵柄とかもありますし、そのやっていること自体過激でも、ある程度ファンタジックな部分にスライドさせていける。それと同じことを生身の人間がすると「見てらんねーぜ」とか「いつまでイチャイチャしてるんだ」という話になりかねない(笑)それはやはり映画とマンガの違いだと思うんですよね。
 
  登場人物の魅力的な人物像はもちろん原作から頂いてる訳でなので、そういった意味では、別物のようでつながっているのかなと。でも、映画は映画のオリジナルでもあります。

Q:榮倉さん、演じていて監督の演出はいかがでしたか?

榮倉:そうですね。監督は自分が良いと思うまで何回もやらせてくれて。でも、監督がダメだと思ったら「もう一回」って何回も続くんですね。だから、私は早く監督と同じ気持ちでいたいと思って毎日が挑戦でした。

Q:カメラチェックが全くなくて、キャストのみなさん不安だったとか?なぜチェックを行なわないのですか?

監督:そうですねぇ。僕もテレビとかの場合は、チェックしたりもするんですが、あんまりチェックをすることに対して慣れていないからですかね。画はカメラマンが撮っているんだし、肉眼で見ているものが全てだと思うので。チェックを行なうってことが、あまり僕自身のリズムにないんです。

Q:榮倉さんはチェックが出来ないことは気になりませんでしたか?

榮倉:私は、映画の撮影は今回がほとんど始めてだったので、そんなに違和感はありませんでした。

Q:最初の松本さんとの長回しのキスシーンは、チェックしてみたいなと思いませんでしたか?

榮倉:(笑)チェックしたいなとは思ったことはないですね。見てみたいなと思ったことはありましたけど。でも、監督さんとカメラマンさんが素晴らしいチームワークだったので、安心していました。

Q:この作品の設定を知ったときはいかがでした?戸惑いとかありませんでしたか?

榮倉:どうするんだろう?という不安もありましたけど、最初は映画に出られることがすごく嬉しくて。でも、映画一作品ずっと気持ちを追われているのは初めてだったので、その大変さはやっていく内にどんどんプレッシャーとして掛かってきたりしました。

Q:原作のマンガを読まれた感想は?

榮倉:やっぱり最初はビックリというかドキドキして読んでいたのですが、最後の方は気になっちゃって、話の先が。どういう風になるんだろうと思って、2日くらいで読み終わりましたね。

Q:映画の中で、郁は苦しいと分かっていながらも兄との恋に向かって行きますが、実際その禁断の愛というものが、榮倉さんの目の前にやってきたとします。榮倉さんだったら好きと言う気持ちを出しますか?押さえつけますか?

榮倉:冷静に考えると、やめた方がいいと思いますけれど。きっと、その時にならないと分からない気持ちもあると思います。

Q:松本さんと共演されていかがでしたか?

榮倉:現場でよく監督と相談されていて、「映画ってこういう風に作っていくんだ」ということを教えてもらいました。スゴイ真面目で、お兄さんみたいな人です。

Q:双子という設定でしたが、松本さんと実際に似ているなと感じたところとかありますか?

榮倉:う〜ん、似ているところ・・。ないですね(笑)

Q:思い出に残っているシーンは?

榮倉:平岡くんとの水族館のシーンは本当にキレイで、また行きたいなと思いました。

Q:監督、榮倉さんをこのキャラクターに当てはめた理由は?

監督:やっぱり、ピュアさですね。題材が題材だけに、兄と妹に焦点を絞りすぎると、話が暗い方向に行って影が強くなり過ぎたり、ジメッとしてしまう可能性があった。そこからもう一つ越えた恋愛感情を表現したかったんです。榮倉さんには余計に付いているものが無いので、彼女ならもう一つ普遍的な方向の恋愛を見せてくれるんじゃないかと思いお願いしました。

Q:松本さんについてはどうですか?

監督:最初、原作読んだとき「誰やるねんコレ」って正直思ったんですけど(笑)「いねーよ」って。でも、やっぱり松本さんと始めて会った時に、彼なら出来るんだろうなと、直感としてあったんですよ。彼自身は人間くさい部分もすごく持っている、けど、それと同時にマンガの主人公をポッとやってもピタッとハマってしまう。ピュアで人間らしい部分と、それを越えた部分を同時に持っているので、お願いしたいなと思いました。

Q:監督からみて主演二人の似ている部分とか、カメラを通して分かったこととかありましたか?

監督:似ている部分といえば、背が一緒くらいですね(笑)見事に。僕自身はどこか双子だから似た部分を作ろうとか、似せるということに興味なかったんですよね。もちろん兄弟として見せたいというのはありましたけど。でも、2人は現場を重ねるほど、だんだん兄弟に見えてきたし、二人もやっぱり意識的に兄弟の役ということで、ある近づき方をしてくれたのかなと。それはすごく助かりました。

Q:榮倉さん、郁役を演じて共感できた点と共感できない点は?

榮倉:好きな人が居たらやっぱりずっと一緒にいたいし、ずっと笑いあっていたいんで。どんな恋でもそうだと思うんですよ。でも郁ちゃんとしてじゃなくて、第三者として見ていても共感できるなというのは、二人で居るときはスゴイ幸せだけど、だから見えなくなっている所もあって、他の人に何か言われたりとか、ふとした時に気付くその寂しさとかには共感できたりしましたね。

                                                 (中西 奈津子)

無花果の顔
無花果の顔 「無花果の顔」 (2006年 日本 1時間34分)

監督・脚本・出演:桃井かおり
出演 :山田花子,石倉三郎,高橋克実,HIROYUKI 他


 このお方のセルフプロデュース力には素晴らしい光と勢いがある。存在感抜群の女優・桃井かおりがついに監督デビューした本作にも只ならぬ雰囲気が漂っていた。   リアルな現実のような、ファンタジーのような・・、あるひとつの家族の物語である。

  先日行なわれた記者会見は、まるで桃井かおりトークショーのよう。映画への思いを1時間たっぷり語ってくれた。

映画のテーマについて

  映画を撮る前に思っていたのは、今まで生きてきて、54になって気が付いていることをテーマにしなければということ。生きているヤツが勝ちっていう映画にした方がいいなと。

  生きるということは今が連なっていることで、死ぬということは、テレビのスイッチを切るみたいにプツッと消えることだと。なら、生きるということは日常がそこにあるということだから、日常を活性化する映画を作ればいいのではと言う話になって、家族というテーマになりました。

日常を活性化させるとは?

  今の幸せを“今”実感できればいいんだけど、それが出来ていないことが多い。他人の目を通すと今の自分の幸せを実感できるとか、思い出になるとあの時は確実に幸せだったと実感できるとか・・。どうして今の幸せを“今”実感できないんだと。

  映画っていう媒体は“今”キャッチしておかないと、二度と見れない。今、感じられる全てを使って画面にかぶりつく。“今を実感”“今の幸せにかぶりつく”ということに関してはいい媒体なので。テーマ的には、“今”の連打になっている映画。未来ですら今にもって来るという(笑)。

  その時間その時間を積み重ねていくと足跡のように人生になる。今を積み重ねれば人生になるという手法です。何回かお母さんを殺そうとか、劇的にしたくなるのを避けて淡々とやっていくのは結構苦しかったんですけど(笑)
初監督はいかがでしたか?

  なるべく勉強しなかった良さみたいな作風を目指したので。素人は素人のよさで撮らないと、先輩、プロに失礼だし。ちょっと荒業だけど、勇気のある映画を作ろうと。唯一、一回目だからできる、素人だからやれる荒業を尽くしてないと面白くないので。

 ここで終わるとまとまりがいい、という所から6個くらい伸ばしたんです。プロの監督たちは絶対に作品として収まりのいいところに収めて商品にしなきゃいけない。だからここまで伸ばせるのは、素人だから。中途半端に終わってみようと思って。
勇気のある映画ということですが、山田花子さんを起用した理由は?

 勇気あるでしょ?
(笑)初めはOLの人に出てもらおうと思っていたんですよ。山口百恵さんを越える女優を一人作りたくて。OLの人が一回映画に出て「やってられないわっ」って言って辞めるっていうストーリーが最高だったんですけど(笑)

  オーディションにはタレントの人ばっかりきて。それで、もっとタレントっぽくないっていう意味で「山田花子ちゃんみたいなの“で”いいんだけど?」ってゆってたら、花ちゃんが応募してきちゃったので。山田さんがいいんじゃないってなったんです。

 あと、「無花果」っていう“花を咲かせず突然実を付ける”っていうところが花ちゃんっぽいなと思って。ただ、やってみたら全然上手くならないのでビックリしました(笑)一度、「ねぇ」って声をかけずに気配でお母さんを振り向かせてみて、って言ったら、本当に気配まで消しちゃって(笑)10分くらい私が気付かなくて、困りましたね。

アドリブが多いそうですね。

  そうですね。花ちゃんのところは本当にいつ撮っているか分からない方法でやっていたので。「タバコある?」っていう一言が合図って決めておいて、花ちゃんに気付かれないように、自然撮りで。ドキュメンタリーみたいな。でも、逆にリアクションがないのが、凍ってるように見えたりで、良かったりするんですよ。

正面に向かって喋るシーンが多いのはどうして?

 お父さんが喋ってる正面の顔は、お母さんがその日見ていた顔だから、その方がいいかなと。思いっきりダサいかもしれないけど思い切って正面切っちゃえ!と思ってやりました。お母さんもカメラに向かって喋ってるってことは、つまり、お父さんが見ていたお母さんの景色。荒業だけど、それを生かしてみるのもいいかもしれないと思って。

突然出てくる“アリ”たちの声は桃井さんですか?

 分かった?あれ、結構かわいくていいでしょ?本当はあれは花ちゃんの声でやらないと意味ないんだけど。実はあれCGの失敗なんですよ。CGが失敗して絵になっちゃたの。リアルなアリがよかったんだけど。それでアフレコしてみたの。

衣装やセットがすごくカラフルですね

 そうなんですよ。私もあそこまでカラフルにしたいとは思ってなかったんですけど、衣装デザイナーの伊藤さんは脚本を読んで、この家族はこんな服を着ているだろうみたいに思ったようで。でも、それも有りかなと。音楽もそうですけど、才能ある人の直感は取り入れたいなと。

女優・桃井かおりについて

 私、本当は出るつもりはなかったんですけれど、色々ありまして、時間内に収めないといけないし、タダだし、桃井かおり使ってみようかなと思って。使ってみたらこれが結構いい女優で(笑)先に小回りしてやってくれるしみたいなね。

 私のところは練習しないで一回で録るっていうスタイルでやってたんだけど、6ページある長電話のシーンで、セリフ通りビッチリ言えたのは女優人生で初めてだったんじゃないかな。「武士の一分」でも間違ったのに。結構、腕上げたなと(笑)。

完成しての感想は?

  よく小品に仕上がったなと。映画人に重要な一歩だと思うんですよ。でも、分からない人には解ってとは言わない。だけど、ココだけの話、映画ってチケット売らなきゃいけないじゃないですか?DVDになった時とかも売らないといけない。そこで、2回見なきゃ分かんないっていう映画を撮った方がいいんじゃないかと思いまして。2回観に行く映画を考えてみました営業的には(笑)

2回見てもらいたいということですが、2回見た後にお客さんにどういったものを持って帰ってもらいたいですか?

  日常はその瞬間×2笑っていたほうがいい。今を感じながら、笑って画面を見続けている間に笑って時間は過ぎていく。こういう風に時間は過ぎていくんだというのを味わって欲しい。結構辛い映画だったねって思いながら。でも、最後のあの尻尾は何だったの?ってちょっと気になると思うんですよ。そうすると、それが後でバラの毒のように効いてくるんで。もう一回みようかなと。ちょっと憂鬱なテーマに持っていったので、花ちゃんを見ながら妄想したことが尻尾にくっついているんです。

  ファンタジーたっぷりの「グリム童話」なのか、エグイ内容の「本当は恐ろしいグリム童話」なのか。でも、どちらもグリム童話に違いない。この桃井作品もそんな感じである。桃井が作った桃井映画。笑えるような、でも笑いに毒があるような。とにかく一言では、監督の思惑通り一度では、この無花果ワールドを乗りこなすことは出来ない。よし、もう一度見よう!

                                            (中西 奈津子)

酒井家のしあわせ

酒井家のしあわせ

「酒井家のしあわせ」 (2006・日本 112分)

監督・脚本 呉美保
音楽 山崎まさよし
出演 森田直幸 友近 ユースケ・サンタマリア 鍋本凪々美
http://www.sakaike.jp/


12月23日より、シネマート心斎橋/テアトル梅田
新春公開予定、京都シネマシネ/カノン神戸

11月のある日大阪にて「酒井家のしあわせ」に主演した友近さんと呉美保監督による合同インタビューが行なわれた。その模様はこちら↓

Q:まず、監督にお聞きします。脚本はいつ書かれたのですか?

監督:脚本は2004年の春位に、サンダンスに応募するために書きました。

Q:ひとつの家族のお話ですが、これは実体験ですか?

監督:いえ、実体験ではないです。これからもそうなんですが、家族の話を作りたいと思っていて。今回はひとつの家族に起こる出来事を考えようと思って、色々と書いていくうちにこういう家族が出来上がったんです。

Q:描きたかったものは?

監督:泣ける映画を作りたかったので、涙をちゃんと流してもらうにはどんな話がいいのかな?というのは前提にありました。エピソードは膨らましていく内に出来上がった感じです。

Q:軸になったものは?

監督:例えば、家族って血がつながっているじゃないですか?だけど、“血のつながらない関係の可能性”というものを含めたかった。家族の絆って切れないし、切ってはいけないもの。でも、それだけではない。そこで今回は、父と息子という血のつながっていない関係を軸に、そこから起こる絆を描きたかった。そこにある絆って言うのは何なんだろう?という事を、説教くさくならずにやってみようと思ったんです。

Q:男の子を主人公に決めたのは?

監督:男の子を主人公にしたのは、思春期の年代の女の子だとしたら何となく想像が付くじゃないですか?(笑)自分へのチャレンジっていうのもありましたけど。あと、泣ける映画にしたかったっていうのもあります。例えば、目の前で女の人と男の人が泣いていたら、どっちの方がもらい泣きしそうかっていうと男の人の方かなと。女の人は泣けば許されるって思っているところあるじゃないですか?(笑)男の人はたまに泣くからグッとくるのであって・・。おじいちゃんの涙とか説得力あるじゃないですか。それで男にしました。男泣きみたいな。

Q:キャスティングに友近さんを選んだ理由は?

監督:何回か書いていくうちにやっぱり自分でイメージ作りたいっていうのがあって・・、決定的に想像しだしたのはサンダンスで脚本賞とって映画化できるとなってからですね。キャスティングのポイントは3つあるんです。“斬新”かつ“新鮮”かつ“妙にリアル”っていうこの3つは、それは友近さんだけでなくユースケさんとの夫婦関係っていうのも含めてなんですけど。

Q:そこから脚本書き直されたりとかは?

監督:ありますね。たくさん。特にユースケさんと決まってから、夫婦関係を見直したりしました。想像しやすかったので。最初、ユースケさんも関西弁でやることになってたんですけど、標準語でやる事になったので。一回練習してみたんですよ。ユースケさん大分出身の方なので。大分って微妙に関西っぽいからいけるんじゃないかと思ってやってみたら・・ちょっと何かこっちが恥ずかしくなる感じで(笑)。

友近:下手でしたよね(笑)

監督:なので、あえて関東出身の人に設定しました。

Q:地元での撮影については?

監督:地元で撮るって事に関しては、制作会社のプロデューサーの若杉が私と一緒の出身地だったということで、若杉が地元で撮りたいと。極端な話、関西っていうのは決めていたんですが、撮れるならどこでもよかったんです。あと、関西弁って標準語でセリフ言うのと比べればクサくない部分があるじゃないですか?そういうのを今回はやってみたかった。

Q:友近さん、始めて脚本読まれた時の感想、映画初出演でのエピソードは何かありますか?

友近:お芝居はずっと難しいと思っていたので、コントとは全然違いますし。そこで演じようとしたらワザとらしくなるし、自然な感じにするとインパクトないやろしとか、常に未だにまだ分からない部分がたくさんあります。でも、コントにならないように心がけはしました。「酒井家のしあわせ」に関してはあんまり作らなくても良かったんではないかなと。

Q:監督から注文はありましたか?

友近:演技についてというよりも、この人の性格はこうでとか・・。私もネタを作る時に、キャラのバックボーンというか、裏設定を勝手に決めたりしてるので。そこから、この人はこういうこと言いそうやなとか、そういうネタ作りをするので今回もそういう感じでした。本当の家を借りて撮影をしたので、それを見て「あぁ、この人こんな掃除の仕方してるんや」とか、台所がすごいキレイに片付いてあったので、調味料とかも基本以外の料理が出来るようなものがいっぱい置いてあったりしたので、芯がしっかりしてて、女らしくて、気が利いて・・・とかそういう役作りをしました。

Q:演じられる上で参考にされた方は?

友近:うちの母親では絶対ないですね。うちの母親にはならないようにしようっていうのと、あと、友だちのお母さんがこの役の雰囲気に近い人がいたので、たまに思い浮かべながら。

Q:アドリブはありましたか?

友近:アドリブはあんまりなくて、一箇所二箇所くらいですね。友だちと電話をしているシーンと、濱田マリさんとのやり取りのシーンとかですね。

Q:少年たちのやり取りがすごくアドリブっぽいなと感じたんですが、あれも全部脚本通りですか?

監督:あれは、現場の前に子供たちだけで、撮影入る前に練習をかなりやりました。ああいう子たちって子供劇団に入ったりしてるんで、芝居は確実に出来るんですよ。悲しい顔とか、楽しい顔とか。喜怒哀楽を表現する術は知っている。だけど、やっぱりそういうのが鼻につく感じがあったので、そこを話し合いながら作っていきました。「実際、会話とかしてたらそんなリアクションする?」とか言いながら、私が元々書いていた脚本を膨らませる作業をしてもらいました。

Q:普通、映画の中の関西弁っておかしいものが多い中、この作品に関しては日常“そのまんま”ですね。セリフの端々におかしさが滲み出ていたんですが、そこら辺はかなり気を使いましたか?

監督:そうですね。かなり気にしましたね。関西の人が関西のドラマとか見ると気になりますよね。絶対違うとか思ったり(笑)そういうのはやめようと、できるだけ気をつけました。

Q:では、キャストの方は関西出身の方にしよう?

監督:そうですね。出来るだけちゃんとしたいと思ったので、ネイティブな方にお願いしました。水島かおりさんは違うんですけれど、それは方言テープを私が自分で吹き込んでやったんです。本当は、方言指導専用のプロの方がいらっしゃるんですけど、結局それが失敗の元なんですよ。なので、「いいです!」としゃしゃり出てそこはさせてもらいました。

友近:あれが失敗ですよね(笑)あれは関西出身の人がやってるんじゃないんですか?

監督:やってるんやけど、感情を変に入れちゃうのがたぶん失敗だと思う。それを何も発音を知らない人が学ぶので・・。ものすごい構えた感じで入れちゃうから。

Q:お互いの印象は?

友近:見た感じは可愛らしい子供みたいなんですが(笑)これだけの脚本を書くっていうことで、中身は外見と違ってギャップがある人なんやろなっていうのは最初に思ってて。思ったことはハッキリ言いますし、で、細かい描写とか感じることも似ていたりするので、監督が言うことに全部なるほどなと飲み込めるというか、すごい不思議。信頼できる方ですね

監督:友近さんは人見知りで、心許せる人が傍にいたら本領以上のものを出してくださるのではと。今回は、例えばユースケさんだったりしたから、普通以上にわりと速いペースで打ち解けることが出来たんじゃないかな。

友近:環境はとにかくよかったですよね。

監督:スタッフが良かったですよね。

友近:スタッフの方もちゃんと考えて、ワー-っと怒鳴るような人は居なくて雰囲気作りを考えてくれる。普通、一人くらいは居るんですけどね。怒鳴ったりするおっさんが(笑)こんなに良くていいのでしょうか?という感じでした。一人そういう人が居たりすると、私、本当に喋らなくなったりするので・・。

Q:夫婦役をやられたユースケさんはどんな俳優さんですか?

友近:テレビのバラエティで見ていた時から、「わぁ、無理してるんやろなこの人・・」っていう感じで(笑)この世界でこの役に徹してやってるんやろうなとか、プライベートは暗いんやろうなとか、想像してた通りでした。で、向こうも同じこと私に思っていたみたいです。会ったら話し合うやろなと思って、実際会ったら本当に合ったので。

Q:夫婦役もすんなり?

友近:そうですね。

監督:ユースケさんが友近さんだったらやるって言ってくれたので。そういうこと言ってもらったらこっちもテンション上がりますよね。

Q:監督は、「涙を笑いでサンドした映画」が好きって言われてますが、そのジャンルでどの映画が一番好きなんですか?

監督:それね、聞かれるでしょう〜(笑)答えられないんですよ。その時その時で違うことゆってるんですけど、いいなと思うのは“泣ける映画”優先になってますね。たとえば、『ラブソング』とか好きなんですよ。ダダ泣きした映画はそれですね。あと、分かりやすいので言えば『猟奇的な彼女』とか好きですよ。笑いもね、微妙なんですけど(笑)でも好きです。韓国だから成せるわざとかあるじゃないですか。

Q:酒井家の酒井っていう名字には何か意味があるんですか?

監督:あります。薄っぺらい意味が(笑)この酒井さんは最後“引越し”しますから・・。本当は最後に引越しで去っていくシーンで、引越しのサカイさんをタイアップでパンダのトラックが一緒に去っていくっていう画を撮りたかったんですよ。だけどタイアップがなくて、断られたか何かで・・。引越しするからサカイっていう・・。でも誰でも、そんなに思いを込めた名字なんて付けないと思いますよ

友近:私コント作る時にはめっちゃ名前考えますよ(笑)

監督:それはいかにもじゃないですか(笑)でも、酒井って関西色のある名字だし、決して関東人ではない雰囲気がこの名字から出たなという感じがします。・・・あっ!でもこれはあれだ。お父さんの名字だから東の人だ!あっ、そうだ・・・。(新事実に気付く監督)

Q:最後の車のシーンでの笑顔が先への楽しさにつながってると思いました。演じていて酒井家の人になっているなと感じられました?

友近:そうですね。演じている時も本当の家族のように感じてましたし。これが本当の家族やったら楽しいやろうなと。

監督:車の中の笑顔が本当にいいですよね。自分でも「最後の笑顔は最高の笑顔でお願いします」って言わしてもらったんですけど、外からの光とかも、お天気でキラキラしてました。

Q:そのラストの場面で、次雄くんがチャックを上げていくシーンは照れ隠しというか14歳ならではの行動?

監督:そうです。自分の中に戻るじゃないけれど、穴があったら入りたい。あと、いろいろ意味あるんですよ。僕はまだ皮かぶってますとか・・、そういう感じですね。

 映画作りのきっかけから、裏話まで丁寧に一つ一つ答えてくれた監督と友近さん。二人は信頼し合っているようでとても仲よさそうな感じでした。そういった関係も映画の温かい雰囲気につながっているのだと実感。見て損のないおもしろい映画です。ぜひ、公開時には劇場に足を運んでみて。

                                                 (中西 奈津子)

鉄コン筋クリート
鉄コン筋クリート

「鉄コン筋クリート」

マイケル・アリアス監督  ティーチ・イン レポート!

上映終了直後の興奮冷めやらぬ場内に登場したマイケル・アリアス監督。目をつぶって聞けば日本人かと錯覚するほどの流暢な日本語で、熱烈なファンからの質問に、一つ一つ丁寧に答えていた。


――この作品の監督をする事になった切っ掛けは?

「(日本で)友達の家に居候していた10〜11年ぐらい前に、暇だったので、何かないかと訊いたら、原作の単行本を薦められたんです。その時の自分の人生と重なるところが多く、ポロポロ泣いて、何度か読み返しました。絵に圧倒され、映画にしたら良いだろうなとイメージする事が出来ました。」

――作業中の様子は?

「アニメを作るのは、毎日机に向かって描くだけなので、メリハリは有りませんが、声優さんのアフレコが始まってみて、自分たちのしている事はもしかしたら面白いんじゃないかと思いました。田中泯さんは、ネズミそのままの雰囲気でしたね。スタッフも皆、本当に作りたい人ばかりだったし、アニメの世界の大御所ばかりで嬉しかったですが、その分、責任も重かったです。」

――ご自身の感想は?

「最悪でした(笑)。あれだけの日数をかけて、まるで子供を育てているような感じで作ったのですが、ちゃんと子育て出来たのかと問われたら困ってしまいますね(笑)。終わって、出来についての感想というよりも、皆がいつの間にか次の仕事を始めていて、監督一人だけが作業を続けている事が悲しかったです(笑)。」

――日本人が見て懐かしい町並みの描写ですが。

「その事には最近気付きました。単に、昭和30〜40年代のアイテムが好きなだけなので、自分では懐かしいとは思いませんでしたね。日本だけではなく、香港、インドネシアっぽさも有るし、スリランカにもロケハンに行きました。あまり日本に捉われず、アジアのどこかに在る宝町という感じですね。大阪もロケハンしたんですよ。日本特有の凸凹したカオスのようなものが有りますね。」

――好きなシーンは?

「クロが闇の世界を旅するファイナル・ステージですね。それと、クロが川向こうの工場地帯をポーッと眺めてて、シロが呟くシーン。二人のキャラが上手く描かれているから。ここから二人が分岐していくんですね。」

――『アニマトリックス』といい、精神世界を意識しているのですか?

「偶然でしょうね。ただ、精神世界と向き合う事は好きだし、普遍的なものだと思います。また映画を作る機会が有れば、そういうところに行ってみたいですね。」

――監督ご自身と似てるキャラクターは?

「どういう風に映画化するかという基本コンセプトは、(キャラクターよりも)宝町に有りました。ですから、どのキャラクターでも主人公になれそうな感じになっています。その時々の気分で、感情移入するキャラクターは変わりますね。」

――上下の動きが多い映像ですね。

「宝町を身近に感じさせる為に、ハンディカム風な映像にしました。ワクワクして観られるようになっています。」

 そのユーモア溢れる語り口で、個性溢れる登場人物たちに負けないほど、この日の主役になっていたアリアス監督が、こだわりと情熱を注いで作り上げた「鉄コン筋クリート」は、12月23日より梅田ブルク7他でロードショー!

「子宮の記憶」 舞台挨拶
子宮の記憶

「子宮の記憶 ここにあなたがいる」

原作: 藤田宜永
監督: 若松節朗    (2006年 日本 1時間55分)
出演: 松雪泰子、柄本佑、野村佑香、寺島進、
    中村映里子、余貴美子


テアトル梅田にて3月9日(金)まで公開、
3月3日(土)よりシネカノン神戸、
3月31日(土)より京都シネマにてロードショー!

  「フラガール」で全国の映画ファンを魅了した松雪泰子さん。今度は、17年前に新生児を誘拐し、今はひっそりと暮らしている、影のある女性、愛子を情感たっぷりに演じている。

母親の面影を求めて、自分を誘拐した愛子のいる沖縄までやって来る少年、真人を演じた柄本佑(たすく)さん、若松節朗監督とともに、松雪さんが、関西での公開初日、舞台挨拶に来阪。

MCの森川さんの司会で、映画を観終わったばかりの熱い観客の視線を受けながら、笑顔の絶えない、ざっくばらんなお話を披露してくれました。


森川: では、まず松雪泰子さん、お願いします。

松雪: すごくテーマも深いですし、観終わった後に、すごくたくさん、いろんなことを思ってらっしゃるんじゃないかと思うのですが・・今日観た感想をぜひたくさんの人に広めていただければと思います。

森川: 役の中で、真人さん(愛子と出会った当初は良介と名乗る)との関係が徐々に変わっていくあたりは、演技していかれる中で、大変だったのではないかと思うのですが・・。

松雪: そうですね。霞をつかむような作業で、感情をとらえるのが難しかったのは確かです。わりきれる感情ではないですし、母親としての愛でもなく、女性としての愛でもない。でも、お互いに深いレベルでつながりあっていて、無条件に細胞が反応していくというような感覚を持って、私は現場にいました。

ロケーションの空気感や、佑君とのお芝居の空気感も、現場ですごく自然に構築されていきました。もちろん、監督も、多くを言うわけではないですが、道がそれそうになったら、修正してくださったり、自然な感じで導いてくださったので、やりやすかったですね。
森川: では、続いて、柄本佑さんにお聞きします。沖縄でのロケーションは、どれくらい撮影期間があったのですか。

柄本: 29日くらいです。

森川: 全てをわかっているのが、柄本佑さん演じる真人で、私たちは真人にひきつけられて観ていくという感じですよね。演技する上で、松雪さんとはいろいろ相談されたのですか。

柄本: 相談しようかなというのもあったのですが・・・本当にきれいなんですよ。(会場笑)

森川: (うなずきながら)本当におきれいですよね。

柄本: 最初の頃、本当に恥ずかしくて、普通にしゃべれなくて・・・。後半、ちょっとコミュニケーションがとれたのですが、最初のほうは、本当に目を見てしゃべれないんです。

森川: お気持ちわかります(笑)。でも、役者さんとしては困りますよね。

柄本: カットがかかったら、すぐ下向いたりとかして・・。

森川: でも、そんな状況ではできないようなシーンもいっぱいあったじゃないですか。

柄本: ああ、まあ・・。(会場笑)

森川: 演技している上では、柄本祐さんではなくて、真人であり、良介であって、それで、そこまでがっと進めた、ということですよね(笑)。
では、若松監督お願いします。

若松: 今回の僕のテーマは、松雪さんをどんなにこうきれいじゃなく撮るかというのが一つの課題で、松雪さんには、本当にノーメークでのぞんでいただきました。それでも皆さんに「松雪さんは美しかった」と言われると、これは完全に失敗作かな(笑)と思えるような感じの映画ですが、いかがだったでしょうか。

今回は、現実に、今の世の中、親子関係がとてもよくなくて、それから少子化と騒がれていて、そういうものを、この映画を通して、ほんの一片でも何か感じるものがあればいいかなと思って、松雪さんと佑君と頑張ってきました。

もし、この映画で、何か一つでも接点がありましたら、いろいろな方に宣伝していただけたらと思います。よろしくお願いします。

森川: ありがとうございます。監督、先ほども、柄本さんは目が見られないぐらいだったとおっしゃっていたのですが、撮影中のお二人の様子はどんな感じだったんですか?

若松: 佑君が、本当に芝居でやっているのかどうかわからないのですが、最初のうちは、全く会話がない。観られた方はご存知ですけど、蝋燭がいっぱいあった神社のシーン、二人がようやく気持ちを少しキャッチボールするシーンかなと思いますが、そこが終わって、愛子さんの部屋で二人が抱き合うシーンがあるのですが、これはもう、至難の業で・・、大変でした(笑)。

森川: そこへ持っていくのに・・・

若松: 全くだめでしたね(笑)。これは本当に1日がかりでやったのですが、佑君は本当にうぶで、どういうふうに上にのればいいのかとか・・(会場笑)。松雪さんは、試合巧者ですから、すっと手をとって、祐君をきつく抱きしめる、こういう感じは、松雪さんは得意ですから(笑)、という感じでしょうか。
森川: また、そういう細かい情愛が映画ににじみでていて、それがまたいいんですよね。

若松: こう、せめぎあいをお互い、時間を経てやっていくんですね。そこがとてもいいような感じがします。
最後に松雪さんが「真人〜」と叫ぶシーンでは、さすがに僕はカットをかけられなかったです。なかなかいい芝居というか・・、多分、本当の母親になっていたような気がします。

森川: 撮影中は、監督として、いろいろな思いがあったと思うのですが、監督も、カットをかけられないなんて、できあがった作品としては、大成功ということですよね。

若松: そうですね。僕らは自信をもって出しているのですが、観たお客様がどう感じるかは、わかりませんから。

森川: それを皆さんにジャッジしていただかないといけない、今、非常に恐ろしい場所に立っておられることになりますね。(笑)

若松: そうですね。

森川: ありがとうございます。では、最後に松雪さんから一言だけメッセージをいただきます。

松雪: さきほど監督もおっしゃったように、今、現代の社会に合っている映画だと思いますし、家族のあり方だとか、愛についてだとか、きっとたくさんのことを感じてくださったと思うので、そのことをたくさんの人に伝えていただければと思います。

 透き通るように美しく、優しい表情の松雪さん、口数少なく、照れ屋ながらも、芯の強そうな柄本さん、暖かく、穏やかで、懐の広そうな若松監督、三人のなごやかなお話に、映画の中の、透明な海のイメージがよみがえり、夢のようなひとときでした。

(伊藤 久美子)ページトップへ

《今,注目の人》

安田 真奈 監督

「幸福のスイッチ」
(2006年 日本 1時間45分)
監督・脚本 安田真奈
出演:上野樹里/本上まなみ/沢田研二/中村静香
幸福のスイッチ

安田真奈監督
 舞台は和歌山県の農村。そこで電器屋を営む父に反発して東京へ飛び出した娘が,挫折の末帰郷。怪我で入院した父の代わりに渋々家業を手伝ううち,父の人柄や愛情の深さに気付いていく。家族の絆,人の温もりを大事にした,幸せな気分にさせてくれる作品だ。

  自然体で優しい雰囲気の作風が評判の安田真奈監督。その素顔も明るく屈託がない。脚本も手掛け,そこには女性ならではの繊細さとハートフルな想いが散りばめられている。

 今回の作品で田辺市を選んだ理由は,「みかんのオレンジ色や村を白く染める梅林など,他の関西地域とは一味違う素朴で彩りのある土地柄に惹かれました」と。また,「撮影には多くの地元の方々が協力してくれて,人の絆をテーマにした嘘のない作品ができました」と。

 特に,関西弁にはこだわって,キャストも関西出身に限定。今までで最高のはまり役の上野樹里さん。三年かけて改稿を重ねたという脚本は、素直になれないもどかしさやツッパる様子など,彼女の個性を巧く引き出していて,実に小気味いい。

 これからも,人の真心を大切にした作品で,私達が持っている幸福のスイッチを“オン”にしてくれるような気がする。                                        (河田 真喜子)

出口のない海・記者会見の様子

「出口のない海」
市川海老蔵さん 
大阪松竹座 舞台挨拶レポート!

2006年8月29日、大阪松竹座にて 「出口のない海」 
(9月16日より公開)
主演の市川海老蔵さん佐々部清監督
ヒロインを演じる上野樹里さんの舞台挨拶つき試写会が行われた。
 歌舞伎の聖地での試写は、梨園界のプリンス、海老蔵さん主演 ならではの出来事。
 桟敷席に花道……いつもより少しお洒落をして来たくなる劇場に、 海老蔵さんといえば「おーいお茶」、のお土産もつき、 客席を埋め尽くしたファンの方々のテンションは否応なしに高まる。

その時、花道から佐々部監督、上野樹里さん、
     海老蔵さんが現れた!

海老蔵オーラに客席はノックアウト! 市川海老蔵さん、
舞台挨拶 続きはこちら ↓↓↓
鳴り響く拍手を受けながら、花道を通る佐々部監督、上野樹里さん。
そして市川海老蔵さんが現れた時、会場のテンションは最高潮を迎える。
「あの目で見つめられたら女性はみんなドキドキして、
目をそらすことなど出来ないだろうな」といいたくなるほどの
目力を感じる海老蔵さん

MCを担当される森川みどりさんが「今のお気持ちは?」と聞くと、 「ドキドキしています」と答えた 

森川さん

「まず、監督にお聞きします。映画初主演の 海老蔵さんはどうでした?」
監督 「20数年、この世界にいますが、今までオーラというものを信じていなかった。オーラってこういうものか?と思ったのは高倉健さんだけ。 しかし、次に感じたのがこの海老蔵さんです。映画の中ではオーラを薄める作業に苦労しました。市川海老蔵のスター映画を作る気は全くなかった。 今までと違う海老蔵さんを感じて頂きたい
森川さん 「海老蔵さんが監督に言われた事は?」
海老蔵さん 「おさえて、おさえていってくれたらいいと」

「大変だったのでは?」という質問に、海老蔵さんは 「大変でしたが、大変だといってるようではまだまだですからね」 と笑顔を見せた。

そして、ヒロイン役を演じる上野樹里さんに、

森川さん 「男性中心の映画でしたが、女性が演じるにあたって苦労されたことは?」
樹里さん 「(出演シーンは)家族の温かさが描かれていたので、 出演回数は少ないがシーン、シーンを 大切にしました 」

海老蔵さんはどんな方?と聞かれ、樹里さんは笑顔を見せ、
樹里さん :「待ち時間はいつも、たわいもない話をしていました。
あまり話せなかったのですが、
一緒にいて楽しいと思いました
逆に、海老蔵さんが受けた樹里さんの印象は?
海老蔵さん :「若くて可憐なところと、大人っぽいところがあって
素敵です」

「チルソクの夏」でも上野さんを起用している佐々部監督。
久しぶりに会った上野さんに、

監督  「すごく女優になったきたな と思い少し寂しい気も・・・」

その言葉に「寂しがらないで下さいよ〜」と突っ込む樹里さん。
会場が、笑いに包まれる。 海老蔵さんに舞台と映画の違いをたずねると、

海老蔵さん 「舞台はお客さんの反応がわかるけれど、映画はわからない。これでいいのかと悩んだりしたが、本当に映画を愛するスタッフに囲まれ、色々相談していく中で演技を再確認する事が出来ました。 この映画で監督と出会えた事はとてもありがたいことです

そう答えた海老蔵さんの瞳は、本当に力強く、演技への自信も感じられる。 そして最後に監督が、観客へ向けてメッセージを送った。

 

「出口のない海」は
9月16日より
梅田ピカデリー、
MOVIX京都、
神戸国際松竹他

全国一斉ロードショー!

ぜひ観てね!

 「この映画は、戦争映画として派手な戦闘シーンもない
地味な映画です。
(海老蔵さんをさして)主役がこの通り派手ですからね(笑)。
それ以上の派手なドンパチをする必要なない。
でも戦争という痛みを繰り返してはいけないというメッセージはどんな派手な戦争映画よりもちゃんと伝わるはずです……」 と。
 みなさん、試写は「タダ」なんですから、わかってますよね?
宣伝してくださいよ。「タダ」なんですから。
  と「タダ」を連発。笑いに厳しい関西人を 笑わせたあたりはさすが、タダの監督ではない?!

本当に海老蔵さんは「オーラ」があり、その美しさに会場の 女性ファンは目を離す事が出来なかっただろう。
 この作品は、原作、横山秀夫、監督、佐々部清の「半落ち」コンビが復活した事でも注目を集める 戦争映画。

  物語は、太平洋戦争末期。
敗戦が色濃くなった日本は秘密兵器「回天」を開発する。
それは大量の爆薬を積み込み、自ら敵艦に激突する「人間魚雷」
 「死ぬ」ために自ら潜水艦に乗りこんだ4人の青年を通して、 人は何のために闘うのか? 何のために死ぬのか? そして生きることの意味 を問いかけてくる作品。

 忘れてはいけない。
「生きて帰る=恥」、「戦争で死ぬ=軍神」と呼ばれた時代があった事を。 繰り返してはいけない。その時代が来ることを・・・
 夢半ばに散った無数の若者達の想いを、ぜひ受け取って欲しい。

 

(ライター : 芝田 佳織)


☆黒澤清監督インタビュー

黒澤清監督 *黒沢清監督は,2000年「回路Pulse」で第54回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し,2003年には第56回カンヌ国際映画祭コンペティションに正式出品され,さらに,来春公開予定の「叫」は,第63回ヴェネチア国際映画祭で特別招待作品として上映されるなど,国際的にも高い評価を得ている。)

【ホラーにこだわる理由は?】

別にこだわっている訳ではない。ただ,僕が撮るような映画は,予算の関係上実際の町で撮影することが多く,嫌でも現実の要素,非常に生々しい局面というものが映ってきます。どこかで時代とか場所をずらしたい,少し曖昧にして,映画だけの世界にしたい,という思いが湧いてくる。現実とはちょっと違う異物を何となくそこに挿入していく。現実の様に見せて,少し違う要素をいれて独自の世界にしていくと,結果としてホラーになってしまう。そういう撮り方をしていくと,これってホラーだよね?って。
【「LOFT」この映画はホラー映画ですか?】

 これこそホラー映画だろうという気がしています。元々ホラー映画は自由自在で何でもありで,現実からちょっと隔たったフィクションの強いジャンルだったと思います。日常生活の中でごく身近なテレビとか電話とかの中から異様な物が出現するというJホラー。そればかり撮ってると,もっと豊かだったはずのホラーというジャンルをどんどん狭めてっているなあと,僕自身思っていたんですよ。
これはそれらを逆手にとって,ラブストーリーや古い屋敷や湖や森など昔のホラー映画にはよく出てきていたものを,古いスタイルではなく現代に置き換えて,もう一度詰め込めるものを撮ったんです。ちょっと詰め込み過ぎたかも知れませんが・・・(笑)。

【結局あれは何だったんだろう,と思うことが黒沢清監督作では多いと思いますが・・・?】

 いつも考えることですが,どこまでクリアに分からせた方が本当に面白いんだろうか?と。
今回も,中谷・豊川の奇妙ではあるがラブストーリーというものが二転三転しつつ進んでいけば,それ以上の説明は蛇足になるのでは?と。もの凄く分かりやすい映画もあれば,一方で不明のまま展開される映画もあります。それとは別の基準で,面白い映画,つまんない映画はある訳です。今回はいろんな要素を詰め込み過ぎて悪いっちゃ悪いんだけど・・・。それをなるべく二人のラブストーリーを中心に整理していくと,いろんな事がほったらかし状態になってしまって・・・,すいませんでした!(笑)。
撮ってる時は「これでいいんだ」と思っているのですが,観た人が「なんだこりゃ!」と言った瞬間,「ああ,失敗した!」と思うんです。中には「いや面白かった」という人がいたりして,「やっぱりいいじゃん」という。多分この調子で死ぬまで映画を撮り続けていくんだろうと思います。

【中谷さんが泥を吐くというシーンは付け足しということですが,あらかじめ出来ている脚本を塗り替えたりすることもあるのですか?】

 泥を吐くというシーンは撮影前日に思い付いて付け加えました。シーンによっては当日いきなり思い付くこともありました。
最後の方の豊川悦司さんの長いセリフで,足立裕美さんとの関係を窓辺で語るシーンがあったのですが,あのセリフの内容は全く決まらないまま,撮影が進んでいって,二日前にできたんですよ。だから,豊川さんは,過去の事情を理解しないまま現在を語っているのです。時々「早く作って下さいね。どうせ長いセリフだろうから,当日だと覚えきれないので,前日までにはお願いします。」と豊川さんに言われたりしました。彼と足立さんを見ながらセリフを考えて,二日前にようやく書きました。
冒頭の中谷さんの鏡に映るアップは,最初は後半で数秒使うつもりでいたのですが,それでは勿体ない,ということで,冒頭に持ってきました。すると,不思議なもので,彼女の表情がいろいろに見えるみたいで,美しい,なんか薄気味悪く,可哀想だとか,まだ物語は始まってもいないのに,これから起こることを何か予測させるような効果がありました。勿論,中谷さんの演技力のお陰なんですけど。

【キャスティングについては?】

中谷美紀さん・・・もっと年上の人を漠然と想定していました。女性を主人公にすることは僕にとって非常に苦手なことで,一度は本格的にチャレンジしたかったのです。母親とか妻とか分かりやすい役割を与えたくない,そういう女性特有の役割ではなくて,人間として社会の中で自分の夢を実現していくために頑張っている。ある程度夢を実現させてはいるけれど,多大な努力をしてほとほと疲れてしまった女性,というのを設定。最初は年齢は40歳代を考えていたのですが,なかなかイメージぴったりの人がいなくて。中谷さんはまだ若いんですけど,会ってみると,凄く成熟していて大人びた方でした。まだ20代だったんですけど,自分の夢を実現させるために頑張ってきたんですけどそろそろ疲れちゃいました,と。クールで冷めたような,若々しい魅力と共に大人の魅力があったので,彼女に決まり!
豊川悦司さん・・・初めてだったのですが,フィクション度の高い作品なので,あまりに現実味のある生々しい生活感溢れるような人ではなく,架空の登場人物のイメージを持っている男優さんにと。こういう人は少ないんですけど,豊川さんは日本の男優さんの中では珍しくフィクション性を持った方かな,と思ってお願いしました。
足立祐実さん・・・ 今回のような役は無名の女優さんがするのが普通なんですが,ダメもとで,「彼女は非常に謎めいた印象があるが,もし出てくれたらぴったりなんだけどな・・・」とオファーしたら,二つ返事でOK。非常にプロフェッショナブルな方でしたね。自分の役どころをちゃんと把握なさっていました。30?pの身長差のある豊川さんに飛び付いて,あっという間にねじ伏せてしまうような・・・,実際に見ていたら凄かったですよ。土に埋められるシーンでも,もっと土をかぶせていいですか?と聴くと,「どうぞどうぞ,もっとひどい目に遭っていますから全然平気です」と。ホントに足立さんはやりやすかったですね。
西島秀俊さん・・・最初から彼を当て込んで書いていました。僕としては,彼の役は会心の出来でして,是非彼にやって欲しかった。

  フィクション性の高く森の中だけで展開されるお話なのですが,それだけで全て片づけてしまうと,日本の現代性が出てこない。そこで,西島君だけが,森の中に殺伐とした現代性を取り込んでくれる。空疎な感じ,価値観が平板になってしまったようなざらついたイメージ。彼が森に来ると,良くないことが起きる。どんな時でも口調が全く変わらないという内面が欠如したような人物,という役どころがホント巧いですよね。実際はそういう人間ではないんですよ。非常に好青年なんですけどね。

【女性の主人公は苦手な理由は?】

 別に理由はないのですが,どうしても一面からしか描けない。男の場合,矛盾した性格でもその裏腹にあるものを理解できるが,女性が矛盾してるなんて理解できない,という美化しているところがありまして,いつもウチの妻から怒られています。「ほんと下手だね!」って。女性をちゃんと描こうと思えば主役に持ってこなければいけない。主役に持ってくる以上は,人間として矛盾した面をもった女性として描きたかった。

【音楽は?】

 音楽で怖がらせることはしたくない。音楽には強烈な力があって,曖昧さや矛盾したところを全てクリアなものにしてしまう。どんなに微妙な表情を見せても,そこに悲しい音楽を持ってくると,ああ悲しいのか,と思ってしまう。音楽は,そのカット,シーンの意味を勝手に決定づけてしまいますね。ここはこのように観て欲しいと言うところは,それに合った音楽を付け音楽の力を借ります。それ以外のところは,映像が本来持っている曖昧さや矛盾などが,映画の豊かさであり,楽しんでもらいたいところですので,不用意に音楽を使いたくない。特に微妙な表情・演技の所には付けない。目をつぶっていても音楽でその意味が分かってしまうような映画は,映画として敗北しているような気がします。
意外にも,正直に,そして饒舌に語って下さった黒沢清監督。
現実的な人間像が次第に異次元の存在に見えてくるという独特の作風の秘訣のようなものが,監督の言葉から感じ取れたような気がする。現代の日本を舞台にしながら無国籍な雰囲気を感じさせて,さらに,奇をてらうホラーではなく,正常と異常の境界の微妙さで恐怖を感じさせる。そのあたりが,国際的に注目される理由のひとつかもしれない。
  ますます今後の作品が楽しみになってきた。


『プラダを着た悪魔』 スペシャルトークイベント

11月18日(土),ニューヨークを舞台にした とびきりオシャレな映画がやってくる!

TVドラマ『セックス&シティ』の監督と ファッションコーディネーターが再びタッグを!
メリル・ストリープアン・ハサウェイ が魅せます!
サラリーマンのあなた! 男性も女性も必見の映画です!

その公開を前に,梅田阪急百貨店主催の トークイベントが開催されました。
ゲストは女優の田丸麻紀さん, 司会はFM802のシャーリー富岡さんです。

プラダ・レポート

 プラダのブラウスとスカート,そして,足下はジュゼッペ・ザノッティのサンダルで 現れた女優の田丸麻紀さん。さすがモデル出身とあって,着こなしは完璧!
映画でも大活躍の田丸さん。今年は,『富嶽百景〜遙かなる場所〜』(6/3公開)と『ラフ』(8/26公開),来年は,『アコークロー』の公開を控えて,ますます注目される女優さんです。

司会:プラダのようなスーパーブランド名の入った映画は初めてですよね?
田丸:はい,とても興味があります!
司会:メリル・ストリープアン・ハサウェイのことを,次のオードリー・ヘップバーンになるのでは?と思えるくらい綺麗だった,と言っていますが。
田丸:同感です。清潔感があって,とても可愛いらしかったですよね!
女性は着る物が変わると気持ちも変わりますが,この映画を観ただけで背筋が伸びるような感じがしました。

司会:『プラダを着た悪魔』の原作者ローレン・ワイズバーガーが大手ファッション誌『ヴォーグ』の編集部に勤務していたこともあって,メリル扮する鬼編集長は『ヴォーグ』の編集長アナ・ウィンターではないかと言われていますが。
田丸:この映画を観て,メリル・ストリープが大好きになりました。その演技力は勿論ですが,エレガントでゴージャス!出来ることならメリルに生まれ変わりたい!と。
カリスマ性のある今回の役は本当にはまり役ですよね。迫力があって,それでいて弱い面を見せたりして,共感できるシーンも多かったですよ。

司会:お好きなシーンは?
田丸:アン・ハサウェイが次々とゴージャスなファッションを次々と着こなすシーンです!エキストラまで,最新のスーパーブランドを着ていましたよね。画面いっぱいに洋服が溢れていて,一時停止して観たいシーンばかりでした。

司会:スタイリストのパトリシア・フィールドについてはご存じでしたか?
田丸:はい。TV『セックス&シティ』を観ていましたから。大好きなスタイリストです。彼女は徹底的にファッションを追求する人ですよね。

司会:特にお気に入りの服は?
田丸:アンのグリーンのコートスタイルです。襟と袖がアニマル柄で,真っ白のグローブ
をして,上級の着こなしですね。
それから,パーティシーンでのメリルのブラックドレスです。

司会:オシャレのポイントは?
田丸:最新のファッションは全体の2%くらい取り入れています。
失敗してもいいので最新ファッションに挑戦して下さい。

司会:今日のお履き物は素晴らしいですね!
田丸:はい。飾っておきたいような美術品です!
司会:靴にはこだわっっておられますか?
田丸:はい,かなり。“靴フェチ”と言ってもいいくらいです。
靴のコレクションは100足を超えます。子供の時から大好きで,お気に入りは履けなくなっても捨てられないのです。
司会:いつもヒールを履いておられるのですか?
田丸:はい。一年の360日くらいはハイヒールです。滅多にフラットシューズは履かないですねぇ。姿勢が良くなりますので,いつもヒールを履くようにしています。

司会:この映画をご覧になって感じられたことは?
田丸:人は背中合わせの部分を持っていると思います。この映画の編集長も,悪魔と女性らしい顔を。そして,成功とそれに伴う犠牲。女性として複雑な面を表現していて,とても共感できました。
また,女性は全てを手に入れられるのに,その可能性に気付かないだけ。そんな女性達の背中を押してくれるような映画だと思います。
男性の方にも観て頂きたいです! 女性が悩む姿を見て,女性をより理解して欲しいと思います。

大阪府和泉市出身の田丸麻紀さん。たこ焼きは大阪でしか食べないとか。
ファッショナブルで美しいだけではない。人を惹きつける聡明なオーラを持ち合わせた女優さんのようです。
そう,『プラダを着た悪魔』のヒロインのように,自分の意志を大切に,自分で決断して生きていく,そんな聡明で颯爽とした現代に相応しい女性を田丸さんに感じました。         河田 真喜子


「紙屋悦子の青春」原田知世さん・永瀬正敏さん 記者会見レポート

永瀬さん&原田さん

黒木和雄監督が遺したもの〜育ちゆく「世界観」〜

「人生の哀歌を撮りたい」、黒木和雄監督の思いが込められた本作。これが、映画を愛し平和を希求した巨匠の遺作となった。主役のお二人、原田知世さんと永瀬正敏さんが「すごい脚本、すごい監督」と口を揃えて、作品の魅力を語った。

 原田さん(紙屋悦子 役)は,「縁を感じて、やりたい!と強く思った作品です。細かい指示は出されない監督が、『思い切ってやって下さい』と熱い目で言われた、泣き崩れるシーンが印象的。監督にすべてを委ねて、台詞では書かれていない心の言葉を大切に演じました」
永瀬さん(永与少尉 役)は,「単に悲しいとか、笑えるとか一つに括ることの出来ない様々な要素が入った完成された脚本で、大変やりがいがありました。形だけのアバンギャルドではない、黒木監督の世界は本当に素晴らしいです」
「1人の人生を演じるのは1人の役者」という黒木監督の考えで、お二人は「まさか自分がやるとは…(笑)」と驚いたという老夫婦役にも挑戦している。
 キャスト、スタッフを温かくかつ熱い眼差しで見守った黒木監督。その思いは確実に引き継がれ、育っている。「世代を問わず、黒木監督の世界がゆっくり浸透していけば嬉しい」と、言葉を結んだお二人。この作品は黒木監督の最後の作品であるとともに、残された者が受け継いだ「黒木監督の世界」の今後を期待させる、始まりの作品でもある。
 ここにも注目!:電信柱が十字架に。こだわりの美術も楽しめる。              (原田 灯子)

「天使の卵」記者会見レポート/ 冨樫森監督・市原隼人さん・小西真奈美さん

19歳の少年の純愛を描いた村山由佳原作「天使の卵」は,冨樫森監督の手によって,柔らかなクリームイエローの光を放つ純愛譜として奏でられている。

19歳の美大生役の市原隼人さんと,彼に愛される27歳の医者役の小西真奈美さん,そして冨樫森監督の記者会見が過日大阪で行われました。

Q:はじめにご挨拶を。

冨樫監督:この作品は,去年の秋製作して今年の春に完成しましたので,公開までドキドキしていました。
でも,キャストにも恵まれましたので,当たるといいなと思っています。

小西:一観客としてこの映画を観ることができました。普遍的なテーマをもった作品ですので,長く人々の心に残っていくと思います。

市原:よろしくお願いします。

Q:撮影中大変だったことは?

市原:美大生としての役作りです。
 
小西:天文台へ上るシーンですね。夜中からリハーサルして,夜が開け始めて本番に。階段を駆け上がって朝日を見て,本心から“わあ,きれい!”と歓声を上げました。あの場所,あのシーンが大変だったけど好きですね。

Q:京都にした理由は?

冨樫監督:原作は東京が舞台なのですが,東京では絵にし辛かったですね。秋の京都,そして,
水のある風景で撮りたかったのです。鴨川,琵琶湖,・・・やっぱり京都です!
Q:19歳の少年に愛される繊細な役でしたが,恋愛観は?

小西:8歳の歳の差はあまり感じませんでした。普段から相手に歳を聞く方じゃないので,
年齢のことで人との間に壁を作ることはありません。年齢も状況も超越して,“素敵”と感じてしまいます。


Q:年上の女性は?

市原:好きな人は好き,ただそれだけ。
そして冨樫森監督の記者会見が過日大阪で行われました。


Q:つかこうへいさんに教えてもらったことは?
小西:“お芝居は,生身の人間のぶつかり合い。上手い下手とは関係ない。”と。目の前に
いる人に伝えたい!自分の気持ちも相手の気持ちも大切にしていきたいですね。

Q:原作ついては?

小西
:10年経っても好かれる力がありますね。原作通り映画化すると勿体ないので,
忠実に再現することより,一つの映画として,いい映画だと思ってもらえたらいいと思います。

市原:映画の夢を背負っているので,敢えて原作は読んでいません。

冨樫監督:ストレートな恋愛話ですね。残酷だけど,読み終えて爽やかな思いになりました。
そこを大事にしたかったのです。原作とは距離をおいて,さらに前に進めるようにしたいと思いました。

Q:同年代の俳優について? 現場の魅力とは?

市原:皆ライバルだけど,仲間と感じています。
映画の現場は,TVドラマと違って時間にゆとりがあるので,ゆったりしているの
がいいですね。冨樫監督の現場は,シーン毎の雰囲気がいいですね。監督にオーラを感じました(笑)。

Q:どんなところを見てほしいですか?

小西:必死で生きているところでしょうか。映像は美しく静かで情緒的です。多くの方に
観て頂きたいと思います。

市原:ハラハラドキドキします。共感するところもあると思います。

冨樫監督:恋愛だけでなく,人の生死についても考えて頂きたいと思います。
正に卵のように美しく端正な顔立ちの小西真奈美さん。落ち着いた物腰と受け答えに,
芯の強い大人の女性の魅力を感じました。一方,市原隼人さんは役柄と同じ19歳とあっ
てまだ少年っぽさは残っているが,最近では珍しく真っ直ぐで気っ風のいい感じがしました。
男性的な役所が似合う役者になってくれそうです。

少年少女の成長を瑞々しいタッチで描いた「ごめん」の撮影のように,今度も京都や
神戸・滋賀と,関西の風景を作品に活かしている冨樫森監督。「人間の生死」と「若い情熱」を
ぶつけることによって,愛することの尊さと儚さを映像というキャンパスに見事に描き 出している。

                           (河田真喜子)


☆bPセレブ、トム・クルーズ 大阪に現る!!

 アメリカの経済誌「フォーブス」で、今年の著名人番付bPに選ばれたばかりのトム・クルーズ。そんな彼が率いるM:i:V』御一行が、世界的プロモーションのラストを飾るべく、6月21日(水)、大阪はナビオTOHOプレックスでの「FAN SCREENING」(試写会)にやって来た!
今回の来日の目玉は、“新幹線ジャック”。前日に東京入りし、精力的にプロモーション活動をこなしたトムは、ハード・スケジュールの疲れなど少しも感じさせず、150人のラッキーなファンを引き連れて、チャーターした“のぞみ”で大阪に乗り込んだ。

 さあ、関西のファン待望の舞台挨拶の始まり!
トムと共にプロデューサーを務めたポーラ・ワグナーの、「素晴らしいアクターでありプロデューサー、そして、私の良き友人」という紹介で、待ちに待ったトムが登場…が、なかなか舞台に上がって来ない。「あれ?」と思った頃、ようやく姿を現したトムは、ファンに手渡された花束に埋もれていた。ファンの好意には出来るだけ応えようとするトムの優しさが伝わって来る光景だ。

トム「ハロー、元気? 花束をありがとう。大阪に来られてとっても嬉しいよ。いつも日本で受ける温かい歓迎に感謝してるんだ。映画を観たいかい?(大歓声) 良かった。皆さんに監督を紹介しよう。J.J.エイブラムス!(エイブラムス監督登場) 彼は本当に素晴らしいフィルム・メーカーだよ。これは彼の処女作なんだけど、観たらとてもそうだとは思えないよ。これから偉大な映画をたくさん作っていく人だからね」
監督「大阪の皆さん、どうもありがとう。こんな素晴らしい機会を与えてくれたポーラとトムに感謝してるよ。トムは本当に偉大だよね?」
エイブラムス監督の問い掛けに、拍手で答える会場。引き続き、この映画ですっかり意気投合したトムとエイブラムス監督による絶妙な掛け合いで、最後のゲストの紹介が行われた。
監督「だけど、トムにも匹敵するような素晴らしい女優も出てるんだ。ケリー・ラッセルさ。魅力的な人だ」
トム「素晴らしい女優だよ。美しいしね」
監督「そう、美しい。素晴らしいし、スタイルも良い」
トム「ああ。運動神経も良い」
監督「それにとても疲れてる(笑)。さあ、皆さん、ご紹介するのは…」
トム「(渋〜い低音で)ケリー・ラッセル」
サービス精神旺盛なトムは、映画のテーマ曲を口ずさみ、ケリーの登場を盛り上げる。そのお蔭か、ケリーもリラックスした雰囲気。白いワンピースにブロンドの髪が映える、キュートなアメリカン・ガールだ。
ケリー「ハロー、皆さん。今夜は来てくださってどうもありがとう」
全員が揃ったところで、質問タイムへ。

――新幹線での移動はどうだった?
トム「とっても楽しかったよ。ステキな人々が同行してくれたからね。この会場にも来てくれてるよ。写真を撮ったし、たくさん話をした。忘れられない思い出になるよ。君たちは、とても親切で温かい人々さ。本当にありがとう」
トムからの嬉し過ぎる言葉に、ファン達の歓喜の声が一斉に上がる。

――ケリーにも話を伺いたいんだけど。
トム「(さっきより輪をかけて渋〜い低音で)ケリー・ラッセル」
またもや人間ジュークボックスになってリズムを刻むトムと、ダンスで応じるノリの良いケリー。ユニークなヒトコマに、会場は笑いに包まれる。

――教え子という役柄同様、トムにアドバイスを受けた事は?
ケリー「バーに掴まっている時は、手を放さないようにしないと死んじゃうよ、そういうアドバイスは有ったわ(笑)」
トム「本物の爆発の中でのスタントだったから、髪に火が燃え移っても手を放すなよって言ったんだ。後で消してあげるからって」
ケリー「しっかり掴まってないと、落ちちゃうぞって」
トム「それで、どうなった? 僕の髪に火が付いちゃったよ(笑)。映画の中にちゃんと映ってるから、この後チェックしてみて」
う〜ん、火が燃え移っても動じない見本を、自ら示したわけだ。先輩の鑑!

――ブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウーといった巨匠に続いてメガホンを取った感想は?
監督「独自のスタイルを確立している偉大な監督たちの後を引き継ぐんだから、とにかく大変だった。だから、僕としてはスタイルにこだわるよりも、感情やキャラクターの描き込みに、より焦点を当てる事に尽力したんだ」

――撮影中のトムとのコラボレーションはどういうものだった?
監督「ひどいものだったね。最悪さ。……それは冗談で、毎日すごく楽しかったよ。だから、撮影が終わった時は悲しかったな。予定よりも2日も早く終わってしまったんだ」

――大阪の皆さんに熱いメッセージを。
トム「今日が『M:i:V』の最後の試写会なんだ。(律儀なトムは、ここでキャンペーン・スタッフや仲間へのお礼のコメントを述べていた) いつも来日する度に温かく迎えてくれる皆さん、どうもありがとう。僕はアメリカとカナダで育ち、15校も転校したんだ。その頃から、こんな風に旅する事を夢見ていた。そして、違う文化を学べたらと願っていたんだ。映画を作る事で、その夢が叶ったよ。幸運にも、『ラスト・サムライ』という映画を作る機会も得て、日本に来る事が出来た。日本の皆さんに映画を気に入ってもらえて、とても光栄だったよ。その事を当然だなんて思わずに、皆さんに心から感謝してるんだ。本当にありがとう」

大スターになった今も、青年のような爽やかな笑顔のままのトム。気さくで近づきやすい雰囲気と、スターのオーラは相容れないものだと思っていたのに、その両方を併せ持っている。そんな彼だから、スタッフやキャストの信頼も厚いのだろう。
トムはきっと、自分を愛してくれる人は皆愛せる、まっすぐな男に違いない。ファンへの心遣いに、それが感じられる。トムからのステキな言葉のオンパレードで、集まった全ての人にとって忘れられない夜になったはずだ。

(ライター:川口 桂)


7月8日(土)公開の『M:i:V』は、こんな映画↓↓↓

 幾つもの危険をかいくぐり、あらゆる陰謀を食い止めてきた超一流のスパイ、イーサン・ハント(トム・クルーズ)。その手口はまさに華麗の一言。「3分後にヘリをよこせ」と命令した後は、バッチリ3分以内にミッションを遂行してみせる。
そのイーサンも、今では一線を退き、スパイ養成所の教官として、第二の人生を歩んでいた。最愛の女性との結婚も間近に控えている。
ところが、彼をチーム仕事に引き戻す事件が起きてしまう。悪の一味から教え子を救出するミッションは、いつしか謎の暗号追跡へと発展。立ちはだかるのは、シリーズ最強の敵デイヴィアン(P・S・ホフマンをアカデミー主演男優賞受賞の「カポーティ」よりも先にチェック!)。はたしてイーサンたち4人のチームは、不可能を可能にすることが出来るのか!?
イーサンのタフさが突出していた前2作。今回はやや趣を変え、スパイである前に一人の男としての人間的な部分が浮き彫りにされている。
もちろん、ワクワクするような作戦や小道具の数々、アクションの洪水といった、スパイ映画ならではの醍醐味も満載だ。高い所からのジャンプや爆破など、どれも危険なスタントばかりだが、全て自ら演じてみせたトムのガッツがあったからこそ、リアルかつ迫力ある映像になっている。
スピーディーに展開するスパイ大作戦、いよいよ遂行!

旧作映画紹介
 

「マイアミ・バイス」

 
「刑事スタスキー&ハッチ」「白バイ野郎ジョン&パンチ」「女刑事キャグニー&レイシー」etc.……。
’70〜’80年代のアメリカのテレビは、軽快なタッチのコンビ刑事ドラマが大人気だった。
そんな中、それまでのコンビ物よりも若い世代の支持を集める事になる、異色のドラマが誕生した。
「特捜刑事マイアミ・バイス」である。
マイアミ・バイス

24時間、ポピュラー音楽のプロモーション・ビデオを流しっぱなしにするMTVの放送が始まったのが、’81年。
当時としては斬新だったこの専門チャンネルは、若者の心をガッチリと掴み、マドンナマイケル・ジャクソンなど、ビジュアルやダンスで魅了するパフォーマーを数多く後押しした。

そのMTVをヒントに、「マイアミ〜」は作られた。
スタイリッシュな映像と流行りの音楽の融合は、まさにプロモーション・ビデオのノリ。
おまけに、キザで、セクシーで、どことなく影が有る潜入捜査官ソニー・クロケットとリカルド・タブスのコンビは、MTVで見るミュージシャンに負けないカッコ良さ、と来れば、若者受けするのも当然だ。

そんな、MTV世代にとっては伝説的なテレビドラマの映画化に、オリジナルの持つ雰囲気をぶち壊す要素は一切許されない。
テレビ版で製作総指揮として携わっていたマイケル・マンに監督が委ねられ、安堵したファンも多いだろう(そもそも、映画化を強く望んでいたのはマン自身であるが)。

しかし、一番のポイントは、主役の二人を演じる俳優である。
ドン・ジョンソンフィリップ・マイケル・トーマスがハマリ役だっただけに、誰が演じてもしっくり来ないのでは?という心配は、フタを開けてみるまで付きまとうだろう。
だが、当代一のモテ男、コリン・ファレルと、ミュージシャンとしても成功を収め、MTVにも登場しているハズの演技派ジェイミー・フォックスは、今考えられる中で最強のキャストなのだ。

――深く静かに潜入せよ。――
このキャッチ・コピーが語るように、ソニーとタブスに、その辺のアクション映画に有るような、ド派手な捜査はタブーだ。
他人に成りすまし、組織の内部から犯罪を暴く事が求められる、“囮捜査官”という最も危険な任務。
マイケル・マン得意の、緊張が張り詰めたような演出が、私生活まで丸ごと売り渡さないと遂行出来ない捜査の厳しさを浮き彫りにする。

太陽が燦燦と降り注ぐ明るいイメージのマイアミの裏側を、ダークな配色のカメラワークと、ムーディな音楽で表現する手法はしっかり踏襲しつつ、監督が映画化にこだわったがゆえのディテールも加え、テレビ時代からのファンにも、これが初めてという人にも、魅力が伝わる仕上がりになっている。
ハリウッドで活躍するSAYURI」組アジア人俳優の一人、コン・リーがヒロインを熱演しているのも見もの。

男の美学が堪能出来る「マイアミ・バイス」は、9月2日(土)より、ナビオTOHOプレックス他、全国拡大ロードショー。                                           (川口 桂)


「ジャーヘッド」〜もうひとつの戦争回顧録

 “世界の警察”の旗印の下、アメリカはあらゆる戦争の中心にいた。本土が戦場になった事が無いにも関わらず、兵士やその家族など、戦争と深く関わり、未だその亡霊から逃れられない人たちがたくさんいる。そのせいか、数々の戦争映画が作られ、その都度“戦争の実態を描いた作品”として話題を呼んできた。
  そして、ここにまた、戦争の真実を新たに突き付ける作品が生まれた。『ジャーヘッド』は、湾岸戦争に送り込まれながら、出撃の機会を与えられる事の無かった海軍兵の“待ち続ける”日々を描いた、異色の戦争映画である。
  湾岸戦争と言えば、思い出すのはテレビゲームのようなニュース映像。あまりにも現実離れしていて、本当に起こっている事なのかと錯覚してしまうほどだった。まんまと情報操作にしてやられていたわけだが、イギリス人のサム・メンデス監督は、それとは逆の演出をこの作品でやってのけている。映画という作り物の世界の中で、原作者A・スオフォード自身の体験を、ドキュメンタリー調の乾いた表現を用い、よりリアルなものに仕上げたのだ。
  戦っていなくても常に戦争と向き合い、気持ちを移ろわせ、違う自分に変えられて帰還する等身大の兵士たちを描くのに、派手な戦闘シーンはいらない。これまでの戦争映画の概念が、今、覆される。

 
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