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★『愛しきソナ』 ヤン・ヨンヒ監督インタビュー
『愛しきソナ』 ヤン・ヨンヒ監督インタビュー

(2011年4月15日・十三「シアターセブン」)

(2009 韓国 1時間22分)
2011年4月2日よりポレポレ東中野にて、
4月23日より新宿K's cinemaほか全国にて順次公開
4月30日から第七芸術劇場、6月下旬京都シネマ、
5月21日から神戸アートビレッジセンター にて公開
公式サイト⇒ http://www.sona-movie.com/
 愛すべき姪っ子の成長をつづったドキュメンタリー「愛しきソナ」は家族への思いがあふれるホームドラマだ。これが第2作。在日の映像作家・ヤン監督は東京在住、両親は大阪、3人の兄は北朝鮮、ソナは兄の娘。離散家族の厳しい環境の中で育つソナへの愛が画面からにじむ。第1作「ディア・ピョンヤン」(05年)で北朝鮮から入国拒否されたヤン監督に思いを聞いた。
――「ディア・ピョンヤン」の続編ということになるが、制作のきっかけは? 
北朝鮮へビデオカメラ持って行こう、と思ったのがきっかけ。ソナが生れた時、2、3歳の時の写真を見て、自分の分身のように感じた。ソナにはもっと別の人生が待っているという別の思いもあり、家族の記録としていつか作品に出来たら、と思っていた。「ディア・ピョンヤン」の時にもソナの映像は使っていて、父親とどっちを主役にしようかと考えたが、ソナと父親が対決してしまうので、あちらは父親主役にした。ソナで1本作ろうと…。

――撮影はいつから? 入国拒否は?
映画は95年から撮り始めた。01年までに130時間分撮って編集した。「ディア・ピョンヤン」はもちろんフィルムは検閲されて、そこはOKが出ていたが、朝鮮総連へ再入国を申請したら「ノー」だった。総連の判断でしょう。理由は「(北朝鮮を)誉めてないから」じゃないですか。「謝罪文を書け」と言われたが、書けるわけがない。「家族の話はやめませんよ」とだけ言いました。

――「愛しきソナ」は、珍しい北朝鮮の暮らしが見られるところが興味深い。一般庶民の暮らしではないかも知れないが。
ソナの日常を撮りたかった。ソナたちは庶民的なアパートで広さもある。日本に親戚がいるのは特別な子供のようだけど、特権階級じゃない。私が行ってる間は特別な時間だけれども。(ヤン監督の兄のような)帰国者はやっぱり北ではマイノリティで差別もされている。ソナが小学校へ行くシーンではランドセルも背負っているし、ミッキーマウスの靴下も履いているから恵まれているように思われるけれども。いじめもなくはなかったでしょうね。他人から見たら、うらやましいかもしれないけど、自分たちの努力で築いたものだという認識もある。ソナは叔母と行ったレストランで注文することが出来ない。その後、受験校に行って、今は19歳、大学の英文科に行ってます。

――ソナと父親が一緒に登校するシーンに監督の思いが表れていた
そうかも知れない。自分とダブって見えましたね。これからどのように生きていくのか、と。

――クラシック好きの兄の長男が、クラシックを禁じられたのが原因になったのかどうか、うつ病になって亡くなる。家族のことを描くのに家族の反対は?
母は総連から何か言われたみたいですが、私には何も。家族では誰も「やめろ」とは言わない。兄は「なんであんたはしんどい生き方を選ぶんだ」言ってたけれども。

――朝鮮総連の幹部だった父親への反発から始まった映画製作、父親が亡くなって…
カメラで父と対峙(じ)してきましたね。父と私の関係修復、再構築でしたね。

――今も入国拒否のままだけど、今後の北朝鮮に望むことは
国が安定してほしい。公務員の給料だけで生活できるようになってほしい。みんな何かほかの仕事をして生計を立ててます。言論の自由がほしい。これまで日本では、大規模なマスゲームか極貧の生活か、両極端の絵しか知らないので、こういう暮らしもあると知ってもらえたら。

――今作の編集は?
2009年夏にソウルで編集した。韓国では3月に公開。韓国の人は、親戚を見るような思いで見ていたようですね。脱北者も多くて(私に)「ありがとう」という人もいました。
――13年間で家族の映画を2本撮って、次は?
3本目は劇映画です。すでに脚本も完成してて、日本人キャストもほぼ決まってます。8月ぐらいに撮影に入ります。在日の人を描いた映画は少なくないですが、「GO」など、これまでの映画とは違ったものにしたいですね。
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 その存在だけでドラマチックなヤン・ヨンヒ監督。様々に屈折した道を歩んで来ただろう自分を振り返り、新たに困難な人生に踏み出した姪ソナへの愛情にあふれた映像が見る者に迫る。それは監督の新たな自己発見に違いない。“家族の記録”をひとまず卒業したヤン監督は、これからどこを目指し、どんな飛躍を遂げるのだろうか?
◆「愛しきソナ」(4月30日公開)
 帰国事業で70年代に北朝鮮に移り住んだ3人の兄と、姪のソナに焦点を合わせ“近くて遠い二つの国”をつなぐ複雑な家族の模様を描くドキュメンタリー。


◆ヤン・ヨンヒ(梁英姫)監督 
大阪市生まれの在日コリアン二世。東京の朝鮮大学校を卒業後、教師、劇団女優、ラジオパーソナリティを経て1995年から映像作家。報道番組のニュース取材、やコメンテーター。1997年からニューヨークに滞在。2003年に帰国後、2005年にデビュー作「ディア・ピョンヤン」を発表。ベルリンなど多くの国際映画祭で受賞するが、この作品が原因で北朝鮮政府から入国禁止令を受ける。
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