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 『シスタースマイル ドミニクの歌』 セシル・ド・フランス 単独インタビュー
            
( 2010年3月19日(金) ホテルグランドハイアット東京にて


(C) 2009 PARADIS FILMS - LES FILMS DE LA PASSERELLE - EYEWORKS FILM & TV DRAMA - KUNST & KINO
『シスタースマイル ドミニクの歌』 (Soeur Sourire)

(2009年 フランス,ベルギー 2時間04分)
監督:ステイン・コニンクス
出演:セシル・ド・フランス,サンドリーヌ・ブランク,マリー・クレーメル

2010年7月、シネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
関西では、今夏〜梅田ガーデンシネマにて公開

公式サイト⇒http://www.cetera.co.jp/dominique/index.html
〜時代に封じられたシスターの夢〜

 『スパニッシュ・アパートメント』で初めてセシル・ド・フランスを見て以来、若さ溢れるチャーミングさとしなやかな美しさに魅了されてきた。その後も『モンテーニュ通りのカフェ』や『ジャック・メスリーヌ』など、作品毎に違ったキャラクターを見事に演じ分け、益々目が離せない女優に成長してきている。

 本作は、1960年代の初めに世界中で大ヒットし、世界各国でカヴァーされた名曲『ドミニク』を歌った実在の歌手の物語である。女性解放が叫ばれ、自由な生き方を求める若者が多かった時代、自分の意志を押し通したため傷付いてしまう波瀾万丈の女性を、セシルは実に愛らしく健康的に演じている。


【プロフィール】

1975 年7 月17 日 ベルギー生まれ。17歳からパリで演劇を学び、2002 年セドリック・クラピッシュ監督の『スパニッシュ・アパートメント』でセザール賞主演女優賞を、2005 年には同じくクラピッシュ監督作『ロシアン・ドールズ』で助演女優賞を受賞。2004 年公開の『80 デイズ』でハリウッドに進出を果たし、2010 年公開のクリント・イーストウッド監督の新作『Hereafter(原題)』にも出演が決定している。
【STORY】
1960年代のベルギー。町のパン屋を営む夫婦の一人娘ジャニーヌ・デッケルスは、稼業を継ぐことを強要する母親から逃れるため修道院へ入り、歌の才能を見出され『ドミニク』という世界的大ヒット曲を生み出す。更に、自由に歌うことを求め還俗するが、『黄金のピル』という女性解放の先鋒をゆく曲を歌って教会の反発をかい、歌手活動ができなくなってしまう……。




―――― 実在の人物ということで深い人物解釈が求められたと思いますが、役作りのための工夫は?
撮影前の準備段階ではたっぷりと時間をかけるようにしています。というのは、演じる役柄が自分の肌としっくり馴染むことが必要だからです。

―――― 具体的には?
先ず肉体的準備ですが、今回の場合はギターと歌を習うことでした。勿論、監督ともいろいろ話しをして、様々な資料を読み込むことも必要でした。この準備段階の時間というのが私の一番好きな時間でもあります。それは様々なことを体験したり、想像したりすることによって、夢を頭の中で描いて旅をすることができるからです。しかも、自分の時間のリズムの中で生活しながらできるのが好きですね。これが撮影に入ると、自分のリズムではなくなるので、いつもあたふたと時間に追われるように仕事をしなければなりません。

―――― 今回の役は、学生の頃のマニッシュなスタイルが多かったようですが、体を鍛えたのですか?
いえいえ、そんなことは一切しておりません。実は2年半前に出産しまして、この撮影の頃はまだ出産後の脂肪たっぷりの体形だったんです。他の作品の場合は、撮影前にはダイエットして体を絞るのですが、この作品のジャニーヌはそんなに美人でもなかったので、出産後の体形を上手く使えて、シメシメといった感じでした(笑)。

―――― 『ジャック・メスリーヌ』の時のパワフルな表情が印象的でしたが、今回の役柄との違いで何か工夫をされましたか?
そう言って頂けると嬉しいです。登場人物になりきるため自分自身を完全に役に投じることはせず、いつも別の意識をもって、自分と役柄をコントロールして演じています。

―――― 客観的に自分自身を見つめながら?
そうです。自分は常に変幻自在な女優として、作品の中のひとつの道具として使うようにしています。彫刻を作る時の粘土のようにどんな形にもなれるように心掛けているのです。いつも誠実にその役柄や物語に寄り添えるように努力しています。
【以下は、トークショーにて】
―――― ジャニーヌのどこに一番興味を持ちましたか?
誰でも知っている曲を歌っている人ですが、彼女が持っている複雑な内面に興味を持ちました。特に彼女の反抗心に興味があって、シスターとして『黄金のピル』を歌って教会から反発をかうなんて、英雄ですよ。若者と語り合う自由な活動もしていた反面、母親との悪い関係から自分自身を愛することを教わってなかったため、攻撃的だし、肉体的にも嫌悪感を持っていたようですし、わがままで子供っぽかったり、自分自身を見直せないといったり、密度の濃い人物だと思いました。そんな人物の方が俳優として力を発揮できるのではないかと思ったんです。

―――― 当時としては、相当変わった人だったのでしょうね?
確かに変わった人だったようです。いま生きていれば、修道院ではなくチベットなどへ行って、自分を抑圧することから逃げてしまうと思いますよ。

―――― 実在の人物を演じる上でのアプローチは?
『ジャック・メスリーヌ』に続いて2作目ですが、今回は責任を重く感じました。資料を沢山見たり読んだりする度にイメージは膨らんでいきましたが、現在の私達に訴えるテーマを多くとりあげる監督と話し合い、取捨選択していきました。

―――― 歌は実際ギターを弾いて歌ったのですか?
はい、すべて自分で歌っています。コンサートのサントラは違います。実際の彼女はクリスタルのような澄んだ声です。とても及びませんが、自分で歌いたいと思い、4〜5ヶ月は練習しました。

 ベルギーの方は真面目な方が多いと聞いたが、彼女も役作りのためには徹底しているようだ。本作の父親役を演じているヤン・デクレール氏が、昨年秋大阪ヨーロッパ映画祭で来日した際の大阪市内での撮影現場に立ち会ったことを伝えると、「それはラッキーでしたね。あの方はベルギーでもとても尊敬されている俳優ですよ」と優しく語ってくれた。

 今年のフランス映画祭にはセシルの主演作が2本もあった。本作の他に『スフィンクス』というサスペンス映画だ。濡れ衣を晴らすため囮捜査をする警官の役で、セクシーなドレスファッションもあり、アクションもこなすといったマルチぶりには感心した。

  今年の取材の一番の目的は、セシルに会ってインタビューすることだった。それが実現できて本当に嬉しい。気さくにインタビューに応えてくれたセシルを始め、配給のセテラ・インターナショナルの関係者の皆様にも心から感謝したい。
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