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『マジック&ロス』舞台挨拶

「マジック&ロス」より
©Magic and Loss Film Partners
『マジック&ロス』
ゲスト:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、杉野希妃、
     リム・カーワイ監督

(2010年 日本・韓国・マレーシア・香港・中国・フランス・アメリカ 1時間21分)

監督・編集・構成&プロット:リム・カーワイ
プロデューサー:杉野希妃
出演:杉野希妃、キム・コッピ、ヤン・イクチュン
原案:リム・カーワイ、ジュディス・ペルニン

12月3日(土)より大阪シネ・ヌーヴォほか全国順次ロードショー
公式サイト⇒http://magicandloss.com/

アジアン映画「マジック・ロス」舞台挨拶 大阪・九条のシネ・ヌーヴォで3日から上映が始まった映画「マジック&ロス」で、主演したヤン・イクチュン、キム・コッピの「息もできない」コンビと“インディーズ映画の女神”杉野希妃、それにマレーシア出身で日本在住のリム・カーワイ監督が満員のファンの前で舞台挨拶した。

アジアパワーが結集した多国籍映画にプロデューサーも務めた杉野は「2年前にコッピと会ったが『息もできない』の子とは知らなかった。映画とふだんの印象が全然違うのに驚いた。私の相手役にすぐコッピが浮かんだ。イクチュン(監督)さんには“バカンスに来ない”って頼んだら、台本も読まずにすぐ来てくれた」と裏話を明かして爆笑を誘った。
 昨年の「息もできない」でベストワン監督になったヤン監督は今回は役者として参加。「自分の撮影は7日間だったが、多様な国籍のスタッフに驚いた。今後もこういうところでやりたい」と“国籍不明映画”に魅せられた様子。

同じく「息もできない」で日本のファンを魅了したコッピは「同性愛的な映画はこの直前に撮っていたので、最初よりはうまく出来たと思う。10年映画やってきたがこんな多国籍のプロジェクトは初めて。楽しい経験が出来た」。

「新世界の夜明け」に続いてアジア相互交流を描いたリム監督は「バカンスのつもりでバカンスを楽しんで、楽しい映画を撮ろうとしたけど、うまくいかなかった。映画は難しいことがよく分かった」と苦笑い。 杉野は「私が2人を呼んだので彼らを守らなければ、と思った。砂浜でバタンと倒れるシーンではマット敷いたり…」。現場では異なる言語が飛びかい「会話がまったく分からなかった」そうだが、「伝えるべきことは私が伝えた。だけど、ほかのことは“まあいいかな”と」。

映画は香港のリゾート島にやってきた日本人女性と韓国人女性、それにホテルの男がからんで、不思議な森に魅せられていく幻想的作品。リム監督は「タイトルは“マジック&エロス”と変えてもいい。死と生、エロスとタナトスの映画」。杉野は「体感してもらえる映画なのでぜひスクリーンで見て」とアピールした

(安永 五郎)ページトップに戻る
★リム・カーワイ監督インタビュー

(左から、xxxxxxxxxxxxxxxxxx)
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★マジック&ロス

「マジック&ロス」より
©Magic and Loss Film Partners
<その2『マジック&ロス』ほか
〜現実と幻想、現実と虚構の間をさまよう魂〜
『マジック&ロス』

(2010年 日本・韓国・マレーシア・香港・中国・フランス・アメリカ 1時間21分)

監督・編集・構成&プロット:リム・カーワイ
プロデューサー:杉野希妃
出演:杉野希妃、キム・コッピ、ヤン・イクチュン
原案:リム・カーワイ、ジュディス・ペルニン

12月3日(土)より大阪シネ・ヌーヴォほか全国順次ロードショー
公式サイト⇒http://magicandloss.com/
  『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』
(映画祭の邦題『それから』を改題)
原題『After All These Years』
(2009年 マレーシア・中国・日本 1時間38分)

監督・脚本・プロデューサー:リム・カーワイ
出演:大塚匡将、ゴウジー、へー・ウェンチャオ

11月26日(土)〜 12月9日(金)大阪プラネット・スタジオ・プラス・ワン、全国順次公開予定
公式サイト⇒http://afteralltheseyears.jimdo.com/

マレーシア出身で、最新作『新世界の夜明け』が公開中のリム・カーワイ監督。第2作目の『マジック&ロス』、デビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(映画祭の邦題『それから』)が、大阪で相次いでロードショー公開される。

『マジック&ロス』は、アジア・インディーズのミューズと話題の女優兼プロデューサー、杉野希妃、2009年の各国の映画祭で賞を総なめにした韓国映画『息もできない』の監督兼主演、ヤン・イクチュンと主演女優キム・コッピの3人が出演。香港のアイランドリゾートにあるホテルで、日本人のキキと韓国人のコッピが出会う。満室という張り紙はあるものの、他に客は見当たらず、暇そうなベルボーイがいるだけ。時が止まったように静かなリゾートを舞台に、2人の女性は島の不思議な力に取り憑かれ、いつしか奇妙な関係に陥っていく…。

『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』は2部構成。第一部では、主人公の青年ア・ジェが10年ぶりに故郷に帰ってくるが、なぜか家族や町の住人は彼の存在を忘れている。レストランの店主だけが彼のことを覚えていたが、ア・ジェは殺人のぬれぎぬで処刑されてしまう。第二部では、死んだはずのア・ジェが別人格として、再び町に現れる。監督いわくジャンル的にはサスペンス映画とのこと。
最新作『新世界の夜明け』の公開にあわせ、監督に取材したお話の中から、この2作についてのコメントをご紹介します。

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○『マジック&ロス』について
本作の製作経緯について、監督は「北京電影学院に留学中の友人で、中国映画の理論を勉強していたフランス人女性ジュディス・ペルニンに会いに、香港のランタオ島のムイウォーを訪ねました。香港と違って、のんびりした雰囲気で、すごく不思議な感じがして、ぜひ映画に撮ってみたいと思いました。彼女もそこのホテルをめぐる映画を考えていたので、一緒にやろうということになり、ちょうどその頃、杉野希妃さんとも知り合い、提案したところ、僕の前作を観て、ぜひやりたいと言ってくれて、製作にこぎつけました」と振り返ってくれた。

本作では、日本人のキキと韓国人のコッピのほかに、客がいるようでいない、島の空気感が印象的だ。「ランタオ島の南端ムイウォは、香港中心部からフェリーで約40分で、ちゃんと人が住んでいるところなんです(笑)。香港がイギリスの植民地だった頃のリゾートで、そういう建物がたくさんあり、イギリス人はじめヨーロッパの人が多くいます。でも、僕は、あたかも文明から孤立したような雰囲気を出したかったので、わざと無理やり、キキとコッピが泊まっているホテルしか撮らないようにして、他の建物を写さなかったのです」

韓国映画の傑作『息もできない』の主演二人が参加という豪華キャストについて、監督は「僕とペルニンとでアイデアを出し合い、脚本なしでバカンス映画を撮ることになりました。キャスティングでは、まず杉野さんが決まり、杉野さんがイクチュンを通じてコッピと知り合い、2人を香港のリゾートに遊びに来ないかと誘って、バカンス映画を撮ろうという感じで実現しました」

ロケは約2週間で、ほとんど自然光で撮影したとのこと。天気にあわせて屋外や屋内で撮影したというが、実際の撮影現場はどんなものだったのだろう。「あらすじがあるだけで、あとは、役者のアドリブにまかせ、セリフもなし、脚本もなしでした。俳優さんには、こういうストーリーなので、こんなふうに話しかけてくださいと状況を説明してしゃべってもらいましたので、本当に、どのシーンもぶっつけ本番でした」「最初に考えていたストーリーと、実際に作品になったものとは全然違います。今回、あらすじを考える前にあまりロケハンをしておらず、キャスティングをしてからでした。だから、ロケハンで、島の奥地にある滝で自殺した人がいると聞いたり、いろいろおもしろいことを発見し、“死”というテーマを映画に入れたらおもしろいと思い、ストーリーを書き直しました。編集する時に、さらにアイデアが浮かび、より不思議な感じに仕上がったと思います」

○『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』について
監督にとって初の長編第一作目に当たる。「2年前の2009年5月から6月にかけて北京郊外で撮りました。今までつくった長編3本の中では、撮影の準備期間が一番長く、脚本にも時間をかけていて、一番思いがこもった作品です。3本とも全く作風が違う作品なので、この違いを体験してほしいです」と監督は熱く語ってくれた。「舞台は、中国のどこかわからないようにしています。都会でもいいし、中国人がたくさん住んでいるところならどこでもよいです。僕には、場所の具体性をはぎとりたいという思いがあるようで、地域の匿名性を意識しています」

『マジック&ロス』も、舞台は架空的な香港のつもりと語っていた監督。新作『新世界の夜明け』も、現実の大阪・新世界を、監督が感じたままに新たに作り変えたものといえるかもしれない。

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今年3月に開催された「大阪アジアン映画祭2011」で『マジック&ロス』が日本初上映された際、男性同士より女性同士の方が相手により神秘的なものを感じるのではないかとの観客からの質問に、監督は、相手を惹きつけたいと思った時、その人の真似をしたり、その人自身になりたがる願望があるのではないか、それが、相手になり代わることにもつながるのでは、と答えている。キキとコッピが、はじめは英語でしゃべっていたのが、段々、相手の言葉を話すようになっていくのも興味深い。

また、『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』のちらしで、監督は、この物語は決してフィクションではなく、虚構が現実に侵入する可能性をラストで示せたのではないかと述べている。『マジック&ロス』でも、現実と幻想、生と死が入り混じったような不思議な世界の感触が、心に残る。日本に長く留学、滞在し、日本語も中国語も堪能なリム・カーワイ監督。その無国籍性が作品にどう反映しているのか、ぜひスクリーンで確かめてほしい。『アフター〜』は、新作の公開にあわせ急遽、公開決定したとのことで、ちらしには、黒沢清監督もコメントを寄せておられる。一人のインディペンデント映画出身の若手監督作品を一挙に観られるチャンス。日本での学生時代、サラリーマン時代には、多いときは年間500本もの映画を観ていたというリム・カーワイ監督。豊富な映画史を踏まえ、これからさらなる変化と成長ぶりを見守っていきたい。

(伊藤 久美子)ページトップに戻る
新世界の夜明け

「新世界の夜明け」より
©CINEMA DRIFTERS2011
<その1『新世界の夜明け』>
〜大阪新世界と北京の“今”を撮る〜

(2011年 日本・中国 1時間40分)

監督・脚本・編集:リム・カーワイ
出演:史可、小川尊、宮脇ヤン、友長光明、JUN、友長エリ

シネ・ヌーヴォXにて上映中〜11/25(金)まで
公式サイト⇒http://shinsekainoyoake.jimdo.com/

北京に住むココは、ステキなクリスマスを過ごしに大阪へ、留学中の友達を訪ねてやってくる。しかし、案内されたのは大阪の下町、新世界の安宿。華やかな特大ツリーを思い描いていたココには驚きの連続。とんでもない一日が始まる。夜明けを迎えたとき、ココの目に映るのは…。

マレーシア出身で、大阪大学、北京電影学院で学び、どこにも定住せず漂流を続けるリム・カーワイ監督。昨年CO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪の略称。映画人材育成プロジェクト)に応募した企画案が見事、選ばれ、年末に撮影したのが本作。監督第3作目に当たる。第2作目の『マジック&ロス』、デビュー作『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(映画祭の邦題『それから』)が、大阪では11月末から12月にかけて相次いでロードショー公開される予定で、3本観ればその作風の違いと幅の広さに驚くにちがいない。今、注目の新人監督。

10月末の東京国際映画祭アジアの風部門で『マジック&ロス』が上映され、主演の杉野希妃さんとともにグリーンカーペットを歩き、興奮さめやらぬ監督に公開直前、お話をうかがった。監督は、大阪、東京と、映画の公開にあわせトークをされるなど、観客とも密接な交流を図り、自ら精力的に宣伝にも取り組まれている。11月3日の映画プロデューサーでCO2運営事務局長でもある富岡邦彦さんと監督とのトークの内容とあわせ、2回に分けてご紹介します。今回はまず公開中の新作『新世界の夜明け』についてです。

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監督は、マレーシア生まれで、高校を出た後、大阪大学に留学して電気工学を学び、卒業後は東京で6年間エンジニアとして働く。「学生時代から映画が好きで、いつしか観るだけでは物足りないと感じるようになりました。映画を撮ろうと思ったきっかけはエドワード・ヤン監督(台湾)です。彼の作品を観ると、自分も絶対映画を撮りたくなるし、人に映画を撮らせる作品だと思います。ヤン監督も理系出身で、アメリカでエンジニアをやっていて、辞めて映画を撮るようになりました。僕も理系で発想が同じで、ヤン監督の影響を受けて、映画をつくる気持ちになったのですが、実行に移さないままでした」「会社で働くようになってから、理系のことばかりやっていて、自分に合わないんじゃないかと思い始め、そのときヤン監督のことを思い出し、思い切って辞めたんです」

大阪新世界の端にフェスティバルゲート(遊園地施設)ができたのが1997年。それ以前から、新世界の古い映画館に行ったことがあるという監督。今よりもずっとごちゃごちゃした空間で、大学生で映画青年でもあった監督は、新世界で映画を撮りたいと思ったそうだ。それから15年。「ちょうど2009年7月に日本政府が、中国人向け個人観光ビザの発行をスタートさせました。それまで団体にしか認めておらず、緩和したのです。かつて僕が東京にいた頃、銀座や新宿、秋葉原は、中国の観光客が非常に多く、でも、個人の客はいませんでした。だから、個人旅行の女の子が大阪に来て、想像と全然違う“新世界”に行ったらおもしろいんじゃないかと思って、企画を書き始めました」

本作のおもしろさの一つは、冒頭、近代的なビルが立ち並び、明るくきらびやかな街が北京で、一転して、古い建物が雑然と並ぶ街が大阪という対比。「ギャップを出すためには新世界が一番おもしろいと思いました。中国に行ったことがない日本人にとって、中国のイメージは昔のままです。日本で上映される中国映画も、農村とかが多く、北京でも胡同(フートン)とか昔の街並みです。だから、逆のもの、日本人が知らない中国のイメージを見せたいと思いました。北京は、道路も広いし、建物も大きい。照明も多く、節電とかエコとか全然気にしておらず、すごく華やかです」本作でも来日前にココが持っていたのは日本の雑誌付録の手帳。日本のファッション誌が中国の女性たちの流行をリードしているともいわれ、大阪の新世界は、中国人にとっても、知らなかった日本の発見になるのではないか。

本作を観ていると、何度か、カメラのすぐ前を自転車が通ったり、人が歩いていく。「新世界という場所柄、自転車や人がカメラの前を通るのを止めることができませんでした。止めたりしたら、逆にからまれます(笑)。音もうるさかったりして、同じショットを何回も撮って、一番邪魔が入っていないものを選びました」と、新世界でのロケーション撮影が、一番苦労された点だと語ってくれた。「もちろん、商店街の会長さんの許可はもらっていますが、ほとんどゲリラ撮影で、何が起きるかわかりませんでした。ジャンジャン横丁でも撮っていますが、役者たちの周りに映っているのは、そのときそこを歩いていた人ばかりです」深夜なら人が少ないので、撮影期間2週間は、ほぼ毎日、撮影は昼の12時から夜明けまで続き、体力的にもしんどかった中、役者もスタッフも寝ないでやってくれたそうだ。

監督と一緒に北京に行き、撮影に一部立ち会った富岡さんによれば、北京は世界で一番映画を撮るのに自由なところで、どこでゲリラ撮影しても何も言われず、やりたいことができるので驚いた、とのこと。本作のカラオケボックスのシーンでも、いきなり無許可で照明機材を持ち込んで撮影を始めたところ、店の人が何か言いに来たが、中国人女性の助監督と3回ほど押し問答の末、撮影できたと語ってくれた。

新世界で宿を営むマサノブと留学生のアイヴィが喫茶店で珈琲を飲んでいるのを窓越しに撮り、静かにカメラが後ろへ引いていくシーンがある。「撮影監督がやりたいことは、任せてやってもらいますが、カメラの位置は自分で決めます。このシーンは窓越しで撮影したかったんです。ズームインにするかズームアウトか迷っていて、ズームアウトなら、どうしたらいいか途方に暮れる感じが出るし、意味が違ってきます。結局、撮影時には決められず、レールを引いて両方撮りました」

撮影中、監督として譲れないところを尋ねると、「基本的に切り返しショットは撮りたくないです。登場人物を同じ画面の中におさめて撮るので、カットを割るのが少ないし、長回しが多い。アップも使いたくありません。全体をみせたい、どういう動きかを伝えたいと思うので、ワンシーンワンカットが多くなりました」

本作では、大阪の新世界のほかにも、飛田本通商店街、鶴橋魚市場、天王寺公園、大阪湾と、大阪の人なら見覚えのある風景に満ちている。天王寺近くの環状線、大和路線と3つの電車が平行に重なり合ってすれ違う風景もおもしろい。ココとマサノブらがラーメンを食べて温まるシーンがあるが、そこにラーメンの屋台がいつも出ているわけではなく、監督が選んだところにラーメンの屋台を呼んで来て、椅子や机を置いてセットしたそうで、撮影場所にはこだわったとのこと。

一番みてほしいシーンや観客へのメッセージについて、監督は、「全部がみどころです。ぜひ観たことがない中国と日本を体験してください。そして、皆それぞれの新世界を見つけてください。クリスマス映画なので、カップルで観てもらったら、ぜったい幸せになると保障します」とにっこり笑って答えてくれた。
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 ココを演じる史可(シー・カー)さんは、普段も“ココ”という愛称で呼ばれていて、キュートで、新世界をさまよい、駆け抜ける異邦人にはぴったりの適役。ホテルで働くアルバイトの中国人の男子留学生との会話が心に残る。監督は、謎の男の正体をココが知らされるシーンとか説明的なシーンは省略し、一夜に起きた出来事を一気にテンポよく描いていく。ストーリーよりも、場所の空気、雰囲気をつかみとることに、重きを置いているような気がした。だから、夜の商店街のどたばたの追いかけっこや、映画に映った大阪の街を楽しんでほしい。照明も凝っていて、ファンタジックな世界にもなっている。ダイレクトに北京や日本の状況をつかまえようとしているとは、富岡さんの評。監督は、今は大阪に居を構えており、新しいビルと古い建物が混在している北区中崎町を舞台に撮りたいとのことで、どんな世界が繰り広げられるのか楽しみだ。
   
             
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