topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント

『育子からの手紙』 来阪キャンペーン

『育子からの手紙 』
ゲスト: 村橋明郎原日出子

(2010年 日本 1時間46分)
監督:村橋明郎
原作:副島喜美子「育子からの手紙」(筑摩書房刊)
出演:宮崎香蓮、原日出子、有森也実、天宮良、颯太、佐藤B作
4月17日〜梅田ガーデンシネマのほか、関西各地で上映会あり
公式サイト⇒http://film-crescent.com/ikuko/
 15歳の若さで小児がんで亡くなった少女育子と、母娘ほど年齢の離れた主婦とが、手紙のやりとりを通じて互いに励ましあい、支えあったノンフィクション「育子からの手紙」の映画化。原作者の副島喜美子さんは、入院中に同じ病室の育子と出会う。退院後も、育子が亡くなるまで二人の文通は続く。最後まで希望を失わない育子の姿と、病いと闘う同志のような二人の強い絆に胸打たれる。映画の公開を前に、村橋明郎監督と、副島さんを演じた原日出子が来阪。合同記者会見が行われるとともに、公開に先駆けて行われた試写会で舞台挨拶が行われたので、その概要をまとめて紹介する。
20年前に書かれた原作を甦らせようと思ったきっかけについて、監督は「主人公がどうやって亡くなったかよりも、限られた時間をどう前向きに生きたかが、原作にちゃんと描かれていたことに感動しました。それに、メール全盛の時代だからこそ、手紙の重みを大切にしたいと思いました」
 泣かせるだけの映画にはしたくなかったという監督。「決して諦めない」という育子が持つ明るさとパワーを全体に盛り込みながら撮ったそうだ。原も「育子が綴った手紙を読むと、本当にユーモアのある子だったことが分かります」と語った。

 劇中と同じように、育子を演じる宮ア香蓮と原も、互いに手紙を書いて、文通していたそうだ。普段から手紙を書きますかとの問いに、原は「お礼状とか、家族の記念日などに送るカードぐらいでしょうか。でも、この撮影後はマメに書くようになりました」
 宮アは、お世話になった人やスタッフなど全員に手紙を書いていたそうだ。監督は「僕には全然手紙をくれなくて、嫌われてるのかなと思ってました(笑)。でも、多分、最後にくれるかなと思って、僕も最終日に手紙を書いて持って行って、交換しました。彼女は、映画で、重要な役をやるのは初めてで、不安だったと思うのですが、手紙の最後に、育子という役が本当に自分でよかったのかどうか不安と書かれていて、僕は、彼女がそういうことを書いているとは知らず、彼女に送った手紙に、この役は香蓮でよかったと思うと書いて送っていたので、意思が通じていたなと思いました」と手紙で思いを伝えあうことの喜びを語った。
 育子の気持ちを素直に表現し、最後まで明るく演じきった宮ア香蓮の主役への抜擢について、監督は「オーディションで25人ほどの中から2人に絞り、最終段階まできた時点で、あるプロダクションからいい子がいると紹介され、彼女が部屋に入って来た瞬間、『この子だ!』と決めました」と話した。監督が「1か月の間、香蓮は育子を生きたんだと思います」と語ると、原も「香蓮ちゃんは映画を通じて、とても成長しました。最初と最後の手紙の読み方も全然違っていました」と宮アの好演をたたえた。

 映画を観ている間、悲しい運命にもめげず気丈に生き抜く育子の姿に思わず涙を抑えられなくなるが、実際、撮影中も、スタッフたちが涙ぐむシーンはいっぱいあったそうだ。監督は「みんな撮りながら泣いてました。私はあえて冷静に構えていたかったのですが、育子が修学旅行から帰ってきて母親に礼を言うシーンでは、もう涙をこらえることができませんでした。その時は、近所の人達が見学にきていたのですが、泣いてる顔を見られまいと後ろに顔を背けたら、見学の人達も皆泣いていて…(笑)」
 「あまり泣きすぎてはいけないと、私が泣くシーンはカットされました」と笑う原。この作品で一番思ったことについて、「日々漫然と過ごしていると、何を目的に生きているのか分からなくなります。生きる力とは?副島さんと育子の生き様を見て、もっと自分にもやれることがあるのでは?と思えてきました。足があって、元気なんだから、怠けてはいけない!生きる時間を大切にしなければ!と思いました」

 映画を撮るということは、大変なことが楽しいので、苦労は全然ありませんと、穏やかな笑顔で話す監督。「あえて苦労したことをあげるなら、真夏に真冬を撮るのは大変でした」最後の育子の手紙は、監督が書き加えたもので、原作にはないものだそうだ。
 「人は一通りの人生しか生きられませんが、芝居を通じて自分では到達できないところを見せてもらえ、今回は特に勉強になりました」と感慨深く語る原が、最後に、「人間を赤裸々に描いた地味な作品ですが、本当のことをまじめにつくった映画もたまにはじっくり観てもらうのもいいかなと思います。ぜひお友達や家族を誘って、家族の中に会話が生まれたらいいなと思います」と挨拶をして、舞台挨拶を締め括った。

(伊藤 久美子)ページトップへ

ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって