topへ
記者会見(過去)
旧作映画紹介
シネルフレバックナンバー プレゼント
記者会見レポート
★『亡命』 翰光(ハン・グァン)監督インタビュー

(C) 2010 SIGLO
『亡命』 翰光(ハン・グァン)監督インタビュー

(2010年 日本 1時間58分 配給:シグロ)
監督:翰光(ハン・グァン)

2011年6月4日から第七藝術劇場、
7月2日から神戸アートビレッジセンター、
7月下旬京都シネマ にて公開
公式サイト⇒  http://www.exile2010.asia/jp/
 経済大国になりつつある中国は、内部にさまざまな矛盾をはらんでいることは知っている。中国は北京五輪、上海万博とビッグイベント続き、自動車販売が年間1000万台でアメリカを抜いて世界1位。GDPは近年停滞気味の日本も超えた。華やかな繁栄にばかり目が行くが、天安門事件(1989年6月4日)で世界中に知られたように圧政、人権無視の大国でもある。中国の歴史的な矛盾を告発したのがドキュメンタリー映画『亡命』である。監督は日本在住の中国人・翰光(ハン・グァン)監督。映画はすでに中国公安当局に知られ、公開後は「帰国不可」となることを覚悟して作った。タイトル通り、政府に目を付けられアメリカやヨーロッパに亡命した人々を丹念にインタビューした労作である。祖国を愛しながらも、帰れない詩人、芸術家、画家、文化人、活動家…彼らの苦渋の中国批判、その中に祖国、故郷への限りない愛がにじみ出ている。
写真@
――この映画のことは中国に知られていない?
公安は知っている。反体制的な内容であることも。でも、中国国内で大きな影響を与えなければいい、と思っている。今は公安も手が足りない。国内だけで手いっぱいです。1人自宅軟禁するのに12人必要なんです。そんなにたくさんの人間に目を光らせることはできない。今の公安はおおむねお金で解決する。中国では人よりも「声」を監禁する。この映画は“禁じられた声”を解放する映画です。
日中の問題はどちらも歴史を改ざんしている。私の目的は「真実を言わせること」。亡命者にしか話せないことですから。
――天安門事件以後、亡命が増えているのは日本でも知られているが・・・?
人民大衆はあれ以後、大事にされていない。嘘が通るようになった。お金や富、高級マンション…「今儲けないと将来はない」と信じ込んでいる。一部権力者だけに富が集まるようになって、権力がほしい、お金がほしいとみんなが思っている。この映画は「ノーといったら2度と祖国に帰れない」ことが分かる。中国は経済大国になったけど、人権は小国です。
写真A
――亡命者には歴史的な古強者もいる。亡命者の歴史がそのまま、中国の近代史でもある。
60年間の中国(共産党)の間違いをついた映画です。もっと古くは孫文の辛亥革命(1911年)、日中戦争、国民党との戦争、共産党政権の成立、毛沢東の文化大革命からケ小平、天安門事件で一気に増えた。バブルはいずれはじける。今は必死に人民大衆の不満を抑えている党幹部も、その時にはもう抑えきれない。
――撮影はいつから?
2008年6月4日、ワシントンで楊建利さん(政治活動家)が最初で2年、3年近くかかりました。アメリカの西と東、フランス、イギリス、スウェーデンなどヨーロッパを回った。20人に会って13人のインタビューを編集した。撮影は順調だった。「マイノリティの声を伝えたい」という意図を分かってくれた。
アメリカで亡命者のデモもやりました。直接のきっかけになったのはやっぱり天安門事件。プロデューサーは「天安門事件は絵で」という考えだったが、私は動画で行きたかった。
――壮大なこの映画を一番見せたいのは?
中国人に見せたい。無理でしょうが。留学生にも見てもらいたいけど、見ても反感持つかもしれない。国内で洗脳されているでしょうから。

――ネット時代、映像が中国に流れ込むこともあるのでは?
パソコンのプロが遮断しているという話です。ネットでも“万里の長城”を築いているんです。ネットの壁を乗り越えることは出来ないでしょう。

――製作には相当な決意が要ったと思うが?
この映画を残せたらすべてを失っても悔いはないですね。娘には「お金にならない映画作らないで」と言われましたが…。

【解説】
ハン監督は日本を拠点に映像や文章で活躍。1987年に留学生として来日、1989年以降、文化人や知識人が中国大陸から姿を消し海外に亡命していることを知り、作家として民主化を求める亡命者の思想を伝えるために製作した。制作・編集と撮影協力はアメリカのドキュメンタリー映画監督、ジャン・ユンカーマン。

 登場するのは鄭義(作家)、高行建(劇作家、画家)、王丹(歴史学者)、楊建利(政治活動家)、張伯笠(牧師)、胡平(牧師)、黄翔(詩人)、徐文立(政治家)、馬徳昇(画家)、王克平(彫刻家)、陳邁平(小説家、劇作家)ほか。

【写真@Aの説明】温和な表情でドキュメンタリー映画「亡命」の意図を語るハン・グァン監督

(安永 五郎)ページトップへ
   
             
HOME /ご利用に当たって