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  『ばかもの』
  金子修介監督インタビュー
★『ばかもの』金子修介監督インタビュー

(C)
2010「ばかもの」製作委員会

『ばかもの』金子修介監督インタビュー
〜成宮&内田が大胆かつ繊細に演じる10年愛〜


(2010年 日本 2時間)PG-12
原作 絲山秋子『ばかもの』(新潮社刊)
監督 金子修介 
出演 成宮寛貴 内田有紀 白石美帆 中村ゆり 浅見れいな 岡本奈月 浅田美代子 小林隆 池内博之 古手川祐子

2010年12月18日(土)〜 シネ・リーブル梅田 シネマート心斎橋にて公開
公式サイト⇒ http://www.bakamono.jp/ 

 19歳の気ままな大学生・ヒデと田舎のスーパーで働く27歳の額子。額子の逆ナンで出会った2人は本能のまま互いを求めあい、自由で満たされた日々を送っていた。だが、ある日。額子は別の男と結婚すると宣言し突然ヒデを捨てる−。呆然と立ち尽くすヒデには、狂おしい額子への想いだけが残された。大学を卒業して新たな女性と付き合うも額子への気持ちを拭いきれないヒデは、やがてアルコールに依存するようになり、人格が変わったように人生の底辺まで堕ちていく‥。
2人の男女の10年にわたる忘れられない恋を通して、人間の愚かさと愛する歓びを描く芥川賞作家・絲山秋子の原作『ばかもの』を『デスノート』の金子修介監督が映画化。ヒデの破滅と再生を丁寧に演じわけた成宮寛貴と、クールでどこか影のある額子に扮した内田有紀の体当たり演技に引き付けられる。
 初めて女性を知り有頂天になった少年が、喪失を経て下降しながらも少しずつ大人になっていく過程が秀逸。額子が持ち去った心は、額子にしか埋められない。恋愛で受けた深手の傷は、完全に癒されるまで時間がかかるものだ。金子監督は2人が離れて再会するまでの期間を1999年から2009年までの10年に設定した。
  「実は原作に時代設定はハッキリと描かれていないんです。具体的なものはなく、ただ“長い間”とだけ表現されていた。じゃあ、長い間ってどれくらいかと自分の人生に照らし合わせて考えた時に、10代の終わりからの10年間かなと。初めは1985年からの10年を背景に想定していたのですが、絲山さんがこの話は現在だと。今の若者にアピールしたいとリクエストがあったので、1999年から2009年に設定しました。」

金子修介監督
 「19歳から29歳って色んな女性と関わっていく年頃で、自分も“ばかもの”だったよなと誰もがリアルに感じられる年代。日本の10年を俯瞰しつつ、突き放しつつ、寄り添いつつ描いていきました。でも、自分もばかだったと共感できるから、冷たくしようと思っても突き放しきれない所はありましたね。」
 ヒデ役の成宮は、とても柔軟に難しい役をこなしている。無邪気な学生時代から、酒を飲んでは家族や友人に八つ当たりするアルコール依存症の時期まで的確に演じ分けた。「成宮くんには10年を5パターンで演じて欲しいと伝えました。チェリーボーイの頃、捨てられて呆然としている時期、大人になって社会へでた時、アルコール依存症、再生の5通り。彼は魅力もテクニックもあって、底が深く演技の幅が広い。周りにも気を使うし、人懐っこいので皆いつの間にか成宮くんのことを好きになる。僕も打ち合わせの段階から彼とちゃんと仕事をしたいなと思ったし、そう言う風に思わせる力がある。」
 額子役の内田もヒデと肉体的につながっていた前半から、精神的に弱さを補い合う後半まで吹っ切れた演技を見せている。「内田さんは『クワイエットルームにようこそ』でしっかりした女優さんになってきたなと思っていた。原作を読んだ時に、強烈なキャラクターの額子を内田有紀がやったら面白いんじゃないかと呟いたら現実になりました。内田さんは僕以上に額子を理解してくれていたと思う。」
 作品のタイトルにもなっている「ばかもの」という単語は劇中にも2度セリフとして登場する。普段はあまり使う機会のない言葉だが、このひと言に監督はどんな思いを込めたのか。「ヒデも額子もお互いが人生で1人のかけがえのない異性だと初めは分かっていない。2人はそういう意味でばかものだったけれど、いつまでもばかものじゃいけないよというメッセージを込めてラストは祝福したかった。言葉としては、愛嬌のある言葉ですよね。額子にばかものと言われていたヒデが、最後にばかものと言い返す。そのつながりは、それまでの2人の10年間を表しているのかもしれません。」
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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