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★ 大阪アジアン映画祭2010



日本初公開&劇場未公開の珠玉のアジア映画が、大挙して大阪に上陸!

★期間:2010年3月10日(木)〜14(日)
★会場:ABCホール(朝日放送 新社屋内)
公式ホームページ→

  ★来日ゲストへの取材レポートこちら→

 ★暉峻ディレクターが語る大阪アジアン映画祭の魅力こちら→

 上映作品の紹介

冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
紡績姑娘(クーニャン)
ジージャー:頑固に、美しく、猛々しく

聴説
トルソ
デーヴD

KJ 音楽人生
見捨てられた青春
パパドム〜パパの味〜

ホワイト・オン・ライス
チャウ
東京タクシー

暉峻ディレクターが語る大阪アジアン映画祭の魅力
〜大阪アジアン映画祭プレ企画 映画連続講座より〜
メイン映画祭:3月10日〜14日、ABCホール、シネ・ヌーヴォほか

 日本初上映の珠玉のアジア映画が一挙に観られる大阪アジアン映画祭2010がいよいよ開幕です。1本の映画をつくるために、スタッフや俳優が国境を越えて集まることがますます本格的になりつつある現在、アジア各国の映画界の新しい息吹を感じさせる最新作がそろいました。
 何百本もの中から12作品を選ばれたのは、本映画祭のプログラミング・ディレクターの暉峻(てるおか)創三さん。映画評論家として、早くからアジア映画に焦点を当て、2002年、東京国際映画祭に「アジアの風」部門が設立されると共にプログラミング・ディレクターに就任、2009年から大阪アジアン映画祭に大きく貢献されています。

  今年初頭に大阪で行われた「映画連続講座」の最終回では、作品を選び終えたばかりの感慨も熱く、作品選定のコンセプトや、各作品の魅力について語ってくださいましたので、ご紹介します。

  「大阪アジアン映画祭では、他の映画祭ではとりあげられていない作品を上映するなど、オリジナリティにあふれた、独自の価値をもった映画祭にしていきたいと考えています。

  芸術的で難解な映画というよりは、むしろ庶民的な作品を選んでいます。映画祭に出品したがっているアート系の映画とは異なり、メジャーの庶民的(商業的)路線の作品は、地元で公開しただけで収支が賄われるので、製作側は、あえて映画祭に出すことをあまり考えておらず、交渉は大変でした。

 プログラミングの仕事は、映画を観て1本ずつ上映作品を決めながら、次の作品を考えてゆく作業なので、まるで将棋を打っているような感じです。

  アジアのマーケットもここ数年で急激に広がりつつあり、全作品を選び終えた時には、『これならいける』と強く手ごたえを感じました」
 今回の上映作品の中には、講座の受講生の一人が、マレーシア滞在歴が長く、映画監督に連絡をして、映画祭への応募を薦め、上映につながった作品もあるとのことで、そんな舞台裏をはじめ、各作品についての暉峻さんのコメントをご紹介します。
□『パパドム 〜パパの味〜』
(2009年 マレーシア 1時間55分)
アフドリン・シャウキ(監督兼主演)は、 “マレーシアの北野武”のような存在で、コメディアンとしてはマレーシアで知らない人はいないくらい。映画監督としても映画を何本もつくっており、俳優、司会者としてもアルチな才能を発揮。家族愛に目覚めた父の、不器用な娘への愛を描く、ハートウォーミングコメディ。
マレーシア映画では、ヤスミン・アハマド監督らニューウエーブ系と、現地で主流となっている作品(いわゆる商業系)とがあり、前者は日本の映画祭でも比較的上映される機会が増えているが、後者は海外で滅多に上映される機会はない。両者は今までマレーシア国内でも水と油のような関係だったが、本作では、ニューウエーブ系を代表するアーティスト、ピート・テオ(ミュージシャンでもあり、ヤスミン監督の遺作『チョコレート』(短編)のプロデュースも)が出演するなど、両者が歩み寄った形でつくられ、マレーシア映画界においても歴史上、画期的な作品。

□『ホワイト・オン・ライス』
(2009年 アメリカ 1時間25分)
 アメリカの日系人家庭を舞台にした爆笑アジアン・アメリカン映画。
アジア映画といえば、これまでアジア地域にだけ目を向けていればよかったが、今やアジア以外の場所で、アジア以外の監督によっても作られるようになっている。本作はアメリカ人の監督によって作られたアジア映画。デイヴ・ボイル監督は1本目も日本人を主人公に日本語の映画を作っている。
今までは“ハリウッド進出”だったのが、アジア人に生まれてこれなかった西洋人が“アジアに進出”するという逆のベクトルが生まれてきた。その例が、ダニー・ボイル監督(イギリス)の『スラムドッグ$ミリオネア』。この新しい時代の到来を実感してもらおうと選んだのが本作。

□『デーヴ D』
(2009年 インド 2時間24分)
私自身にとって大発見であり、これだけは見逃してほしくない作品。アヌラーグ・カシヤプ監督は、インド映画界で、ウォン・カーウァイ監督(香港)のような立場にいる。これを観たら、インド映画に対する印象が全く変わってしまうぐらいの衝撃を受けるのではないか。
インド映画といえば、主流であるミュージカル映画(商業映画)と芸術映画とがあり、本作は基本的に前者といえる。しかし、突然踊り出すという不自然さは克服しており、ハリウッドのミュージカル映画や『シェルブールの雨傘』のように、ミュージカルの場面が、映画に自然に溶け込んでいる。インドの安宿街が舞台になる場面もあり、『恋する惑星』や『天使の涙』に似たテイストがある。原作は『デーヴダース』というインドでは有名なラブストーリー。音楽が斬新で、インドで大プレイク。

□『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
(2009年 フランス・香港 1時間48分)
ジョニー・トー監督は、海外には滅多に出ない監督。というのも、常時、一人で7、8本もの映画にかかわっており、超多忙だから。今回、監督の舞台挨拶が実現したのは、まさに奇跡のようなこと。

□『紡績姑娘(クーニャン)』
(2009年 中国 1時間33分)
監督は、『トゥヤーの結婚』でベルリン国際映画祭グランプリに輝いた王全安(ワン・チュアンアン)。今回の新作上映の中で、最も世界的に名声のある監督の作品で、スタイルといい、完成度も高い傑作。

□『ジージャー:頑固に、美しく、猛々しく』
(2009年 タイ 1時間52分)
昨年度の本映画祭オープニング作品『チョコレート・ファイター』のジージャー・ヤニン主演で、製作者も同じ。「酔拳」をプラスして、前作以上のアクションを展開。

□『聴説』 
(2009年 台湾 1時間49分)
昨年、台北で開催されたデフリンピック(ろう者のオリンピック)に合わせて製作・公開された作品。若手俳優エディ・ポン演じる主人公とヒロインとが、手話や身振り手振りで会話する姿など、映画的な魅力にあふれている。2009年台湾映画ナンバーワン大ヒット作。

□『トルソ』
(2009年 日本 1時間44分)
自分にとっても大発見の作品。『誰も知らない』、『歩いても 歩いても』など是枝裕和映画のキャメラマンとして知られる山崎裕の、69歳にしての劇映画監督デビュー作だが、なんと若々しいことか。渡辺真起子と安藤サクラほか、今、日本の映画界で、もっとも繊細な演技のできる役者たちを集め、表情といい、仕草といい、すばらしい。画面自体がドラマ性を持っていて、物語も緩やかで、観ていて飽きることがない。

□『KJ 音楽人生』
(2009年 香港 1時間30分)
11歳にしてピアノ・コンクールで優勝した神童KJの成長を追ったドキュメント。チョン・キンワイ監督も、KJ同様、幼い頃からクラシックを学び、ニューヨークで音楽を勉強していたが、挫折し、アン・ホイ監督の脚本を書いたりしていた。本作が長編デビュー作で、新人監督ながら香港電影評論学会大賞グランプリを受賞。

□『見捨てられた青春』
(2009年 フィリピン 1時間31分)
マニラの貧民街を舞台に、4人の若者たちの想いが交錯していく物語。音楽も特筆。、

□『チャウ』
(2009年 韓国 2時間2分)
韓国映画では、怪獣映画の伝統はなく、これまであまりつくられてこなかったが、『グエムル 漢江の怪物』が登場。本作では、巨大人喰いイノシシが登場するが、おちゃめなシーンもあり、楽しんでほしい。

□『東京タクシー ディレクターズカット版』
(2009年 韓国・日本 1時間16分)
昨年6月にドラマ版が音楽専門チャンネルMUSIC ON! TVで放映されたが、本作とは全く別作品といえるくらいに異なっている。昨年10月の釜山国際映画祭に特別招待され、上映された。キム・テシク監督は、前作『妻の愛人に会う』でも主人公をタクシーの運転手に設定。
大の飛行機恐怖症のミュージシャンが、韓国の音楽フェスに出演するため、一路タクシーでソウルへ向かう。東京でも撮影されており、東京のシーンのあと、すぐフェリーで渡った釜山のシーンとなり、大阪や九州での撮影がなく残念。カーチェイスのシーンなど、日本での撮影が難しかったせいだろうか。 

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 時間の関係で端折りながらも、一つ一つの作品に込めた思いを熱く語ってくださった暉峻さん。映画祭では、各作品の監督らが多数ゲストとして来場され、上映後には会場との質疑も行われます。昨年同様、きっとこのディスカッションの場で、司会として、暉峻さんの語りが聞けるのが楽しみです。
なお、これら12作品のほかに、急遽、短編作品『八人目の侍』(3月14日(日)18時半〜19時、ABCホール、入場無料)の上映が決まりました。

  これは、アメリカ・ロサンゼルスで世界最大のショートフィルム映画祭「LA SHORT FEST」で最高賞「BEST OF FEST」を受賞したアメリカ映画で、黒沢明監督の名作『七人の侍』をモチーフにしており、全編日本語セリフです。

  『七人の侍』は、実は撮影開始前は八人の侍の予定で、ある事情で七人になってしまった、さて、この八人目の役者は・・というお話。撮影現場が舞台で、いい役をもらうため、監督に差し入れをしたりと、人情味たっぷりで、相当におもしろそうで、期待できます。

  このほか、昨年7月に急逝されたマレーシアのヤスミン・アハマド監督の追悼特集が、シネ・ヌーヴォで行われ、遺作『タレンタイム』も関西初上映されます。母と息子、若い男女、少女と少年など、人と人との間に生まれる細やかな愛情を深く、暖かく描いてこられたヤスミン監督。暉峻ディレクターにとっても、マレーシアが、遠く離れた異国の別世界ではなく、自分たちと同じ世界だということを気づかせ、マレーシア映画に目を見開かせてくれた方だそうです。『ムクシン』、『ムアラフ 改心』と未見の方は、ぜひシネ・ヌーヴォに足をお運びください。

  国は違っても、心は同じ。それぞれの人間模様に泣いて笑って、たっぷりの感動とともに充実した時間を過ごしてください。

(伊藤 久美子)ページトップへ


   
             
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