【解説】
12年前にTVシリーズが始まり、日本ではWOWOWで放送が開始された。キャリーというコラムニストの語りで展開されるドラマは、彼女の3人の個性的な友人たちとの本音トークが満載で、世間体やしがらみにがんじがらめの日本女性にとっては胸のスクよう爽快感があった。しかも、アッケラカンと爆笑ものの彼女たちの恋の遍歴は、それまで性についてオープンに語れなかった女性たちを勇気付け、より明るく積極的に生きる道筋を切り拓いてくれた。だが、それだけではない。自分らしく生きること、社会人として責任あるキャリアを積むこと、愛する人との結婚、母親になることなど、女性がたどる人生を、その都度悩み苦しみながら真剣に立ち向かってきた。そんな彼女たちの生き様に感銘を受けては、なりたい自分を登場人物にダブらせて見てきたのだ。
映画製作にも匹敵するほどの才能と製作費を費やしたTVドラマは、撮影もファッションもインテリアも脚本も現実の世界を活写し、深刻な内容でもスッと心に浸透させるマジックをもっていた。決して絵空事ではないリアル感も他のドラマとの大きな違いだろう。
【STORY】
さてさて本作は、すったもんだの挙げ句にやっとミスター・ビッグと結婚したキャリーが、友人のスタンフォードの豪華結婚式からアラビアンナイトのような中東への旅を通じて、結婚について自問自答しながら、新たな幸せのポイントを教えてくれるという展開だ。
いろいろ回り道はしたけれど、ずっと追い掛けてきた1人の男・ミスター・ビッグとの結婚生活は、部屋もインテリアも生活スタイルもすべてキャリーのセンスで仕切られていた。だが、テレビを見ながら彼女が選んだカウチでくつろぐビッグを見て、何か物足りなさを感じていた。早くも倦怠期のような状態に、心に影を落とすキャリー。
完璧主義者のシャーロットは、あれ程望んでいた子供に恵まれたにもかかわらず育児ノイローゼ気味。ノーブラで若い魅力全開の子守が気になるものの、母親としての自分にも迷いを感じていた。着実にキャリアを積んで一流法律事務所で弁護士として働くミランダは、上司のパワハラに嫌気をさしていた。家族を犠牲にしてまでも働かなければいけないのか……そこは決断の早いミランダのこと。自分を必要とする職場が見つかるまであっさりとオフタイムをとる。相変わらずいい男に目がない肉食系の代表・サマンサは、大量のサプリを飲んで更年期と闘っていた。
そんな彼女たちが、サマンサのお陰でアブダビ豪華ツアーに招待される。極めてお肌の露出度の高い4人のこと、イスラム文化圏でのタブーは必至!トラブル連発の珍道中。それにしても、執事付きの最高級ホテルでの滞在はハンパな豪華さではない! そんな異国の空の下、キャリーは元カレのエイダンと再会する。運命的な再会に心躍らせる二人は……。果たして、4人は無事にアメリカに帰れるのだろうか?
【みどころ】
都会的ハイセンスなものからオリエンタル調の度肝を抜くようなものまで、ファッションショーさながらに魅せる衣装の数々。クレオパトラもシバの女王も顔負けのゴージャスぶりと軽快な音楽に、あっという間の2時間27分だった。
さらに、冒頭4人の登場シーンでは、12年前の姿と現在の姿をダブらせて見せてくれる。見ているこちらも時代の移ろいを感じて、思わず苦笑い。スタンフォードの結婚パーティでは、なんとあのライザ・ミネリが超ミニスカで歌い踊る!
さすが、ブロードウェイに顔の利くサラ・ジェシカ・パーカーらしい趣向だ。また、他の女性と談笑するビッグを見てキャリーがやきもちをやくシーンがあるが、そのお相手がペネロペ・クルス!
その他、歌手のマイリー・サイラスなど豪華なカメオ出演にワクワクの連続である。
男性を征服することが生きる証のようなサマンサにとって、ストレートに愛の表現ができないイスラム社会は何とも居心地が悪くトラブッてばかり。世界中どこへ行ってもアメリカナイズを通そうとするアメリカ人のエゴを皮肉っているようだ。
一番お行儀のいいシャーロットがお酒の力を借りて本音を吐露するシーンも、聡明なミランダの巧みな戦術が活きていた。そのミランダこそ今回の最大の功労者と言えるだろう。失業中ということもあって、言語や文化、習慣に至るまで誰よりも旅のリサーチをして、お疲れ気味のみんなのために粋なプランを組んでは旅の楽しみを盛り上げていた。(こんな頼りがいのある友達が欲しいもんだ)
そして、キャリー……エイダンとの“焼けぼっくり”騒動で本音を語って、思わずグっとくるシーンがある。「〜急に昔の自分が思い出されて…あの頃の私はニューヨーク中を駆け回っていた。ひとりの男を追い求めて…」そう、ミスター・ビッグに翻弄されながらも一途に彼を想い続けてきたキャリー。ずっとTVシリーズを見て来られた方なら、あの頃の彼女の苦悩ぶりをよ〜くご存じのはず。念願叶って結婚したのに…と、深く反省するシーンがいいのだ。キャリーの可愛らしさが光る場面だ。(サラ・ジェシカ・パーカーは本当に声がカワイイ!)