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★ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路

(C) copyright 2010 Les Films Alyne
『ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路』
(NANNERL, LA SOEUR DE MOZART)
〜時代の波に呑まれるナンネルの哀しみが迫る〜

(2010年 フランス 2時間)
監督・脚本:ルネ・フェレ
出演:マリー・フェレ,マルク・バルベ,デルフィーヌ・シュイヨー,ダヴィッド・モロー,クロヴィス・フワン,サロメ・ステヴナン,リザ・フェレ

2011年4月9日(土)〜Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
関西では、4月23日(土)〜テアトル梅田、5月14日(土)〜京都シネマ、近日〜シネ・リーブル神戸 
公式サイト⇒  http://nannerl-mozart.com/pc/






 1766年6月ころ,モーツァルト一家のヨーロッパ演奏旅行は3年目に入っていた。ヴォルフガングは10歳半ば,姉ナンネルはもうすぐ15歳だ。この史実を踏まえながら,大胆なフィクションを織り込み,ナンネルの哀しみを視覚化していく。彼女は,弟と比べても遜色のない音楽的才能を持っていたが,その才能を存分に開花させることができなかった。父レオポルドから作曲は女性には難しすぎると言われる。彼女はそんな時代を生きていた。

 モーツァルト一家は,ヴェルサイユに向かう途中で馬車の車軸が折れて近くの女子修道院に身を寄せる。そこではルイ15世の王女のうち3人が養育されていた。その1人がルイーズで,ナンネルの1歳年下という設定だ。ナンネルは,ルイーズから宮廷にいる恋人への手紙を託される。それが切っ掛けで,ルイーズの兄の王太子ルイ・フェルディナンと出会い,作曲の才能を高く評価される。正にそのとき,彼女の人生はバラ色に染まっていた。

 撮影は実際にヴェルサイユ宮殿で行われたらしく,宮廷のシーンはきらびやかだ。ナンネルとヴォルフガングのデュオ等,クラヴィーアやヴァイオリンの音色が清らかで,耳に心地よい。ナンネルが作ったという曲も演奏されるが,違和感がない。実際にはナンネルの作品は残っておらず,マリー=ジャンヌ・セレロの創作だというから驚く。また,ナンネルが人生の岐路に立って海を見詰めるシーンで流れる曲は,苦しい胸の内を映している。
 ナンネルは,家族と離れて音楽に専念するが,一世一代の晴れ舞台は余りにも短い。時代は彼女が思いを遂げることを許さず,再び家族の許へ戻る。パリでの最後の夜,家族が散歩に出掛けた後,一人残ったナンネルが楽譜を燃やすシーンが痛切に迫る。そこには彼女の過去だけでなく未来も込められていたはずだ。前半でナンネルとヴォルフガングとの絆が丁寧に描かれているだけに,「大人になってしまった」というナンネルの言葉が重い。
(河田 充規)ページトップへ
   
             
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