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★英国王のスピーチ

(C) 2010 See-Saw Films. All rights reserved.

『英国王のスピーチ』 (King’s Speech)
〜いかにコンプレックスを克服するか〜


(2010年 イギリス=オーストラリア 1時間58分)
監督 トム・フーパー
出演 コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、
    ヘレナ・ボナム=カーター
2011年2月26日(土)〜Bunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズ(シャンテ、梅田、なんば、二条)、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー
公式サイト⇒ http://kingsspeech.gaga.ne.jp/



 人間、誰だって何らかのコンプレックスを持っている。ぼくなんぞ、1つ、2つ、3つ……、わ〜っ、8つほどある! かといって別段、困ったことはないが、日常業務に差し障りがあるとなると大変だ。この映画の主人公、英国王ジョージ6世(コリン・ファース)のように〈国家の顔〉ともなれば、なおさら。

 かの国王は重い吃音に悩まされていた。現在のエリザベス女王の父君である。日本では陰が薄いが、第2次大戦中、首相のチャーチルと共に国民を鼓舞し続けた御仁として英国では今なお人気を誇っている。公の場やラジオ放送では、王室ならではの威厳と気品ある演説が要求される。大英帝国の威信もかかっている。結婚披露宴のスピーチどころではない。なのにジョージ6世は、聴くのが辛いほど思うように喋られない。あゝ、致命的。冒頭のシーンからぼくはハラハラさせられっぱなしで、知らぬ間に口をもぐもぐさせていた。
 そんな国王にオーストラリア人の言語聴覚士ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)が身分を無視して、対等な関係で施療に当たる。よほど信念があるのだろう。その過程で、左利きとX脚を矯正させられた幼少期の苦い体験や家庭環境がトラウマになっていることがわかってくる。2人は本音をぶつけ合い、次第に友情が芽生えていく。そこが物語の軸となるが、兄王の「王冠を賭けた恋」のせいでやむなく(嫌々?)王位に就き、戦争に突入するという時代の流れが加味される。非常に重層的である。映画はこうでなきゃアカン。
 クライマックスとなる世紀のスピーチは、荘重なベートーベンの交響曲第7番第2楽章をバックに流していた。どうして今から戦うドイツの音楽を使ったのか。英国のエルガーの楽曲にすればいいものを。敵を呑み込む? いや違う。耳に障害を持ちながらも偉業を残したベートーベンの姿に重ね合わせたのだ。ぼくはそう思っている。深読みかな〜。
(武部 好伸)ページトップへ
   
             
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