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★僕と妻の1778の物語
『僕と妻の1778の物語』
〜君の笑顔のために僕のすべてを捧げよう〜

(2010年 日本 2時間18分)
監督:星護   原作:眉村卓
出演:草g剛 竹内結子 谷原章介 吉瀬美智子 陰山泰 小日向文世 浅野和之 佐々木すみ江 大杉漣 風吹ジュン

2011年1月15日(土)〜TOHOシネマズ梅田 TOHOシネマズなんば アポロシネマ8
公式サイト⇒ http://bokutsuma.jp/
 草g剛主演の名作ドラマ“僕シリーズ”の映画版がついに公開。スキルス胃癌で余命宣告された教師の葛藤を描いた『僕の生きる道』、妻に離婚を切り出された男と残された娘の絆をつないだ『僕と彼女と彼女の生きる道』、自閉症の青年のまっすぐな生き様を捉えた『僕の歩く道』。このシリーズ3部作は視聴率にも反映されているように多くの人々の心を捉え感動を呼び起こしてきた。それは常々ヘビーな題材を扱いながらも、自分自身の人生と正面から向き合う大切さを最大のテーマに掲げ一貫して伝えてきたからだ。逃げることのできない困難に直面したとき、自分と納得いくまで対話し一歩ずつ先へ進んでいった“僕シリーズ”の主人公たち。その前向きで力強い姿勢は映画となった『僕と妻の1778の物語』にもきっちりと受け継がれており、いつになくさわやかな感動を届けてくれる。

 映画は、余命1年を宣告された妻のために毎日1話の短編小説を贈ったSF作家・眉村卓の実話。根っからのSF好きでいつも空想ばかりしている子どものような朔太郎を草g剛、そんな夫を見守り優しく支える妻・節子を竹内結子が演じる。2人は本当に幸せに満ち溢れた夫婦で、ちょっとした会話からもお互いがお互いを必要としていることが見て取れる。それは妻が病気になってからも変わらない。2人はずっと“サクとせっちゃん”であり続けた。

 ある意味本作は、初めからオチの見えている映画でもある。だが、決して死を取り上げてあからさまに泣かせるようなことはしないし、闘病を押し付けた暗い作品でもない。サクは医師から笑うと免疫力が上がると聞いたのをきっかけに、笑える小説を節子のために書き始める。その結果“連載”は1778話、約5年もの間続いた。もちろん、毎日小説を書き続けたことは偉業であり、余命が4年近くも延びたのは奇跡かもしれない。だが、それはただの結果にすぎない。この夫婦の本当にすごい所は、互いをとことん愛し尽くした姿にある。すべては君の笑顔のため。そんな一途で無償の愛が、皆の心を動かすのだ。

 いよいよの時が迫る中、消灯された病院の廊下でサクが原稿を書くシーンが目に焼きついて離れない。月明かりに照らされた廊下はまるで教会のような穏やかさを放っていて、彼を見守る人々がキリストやマリアさまに見えてくる不思議さ。おそらく、あえてそう演出しているのだろうが、時おり挿入されるファンタジックな映像と相まって、避けられない悲劇にもどこかポジティブな空気が与えられていると感じた。

 主演の2人は『黄泉がえり』以来8年ぶりの共演となるらしいが、かなり相性がよく安心して見ていられる。草gは今まで演じた役の中でサクが一番素に近い役なのではないか。50話くらいでネタにつまり、節子に「もう無理して書かなくていいよ」と諭されても「いや絶対に書く!」と頭を抱えつつも諦めようとしない所とか、友人に「お前、女運だけはよかったな」と言われて嬉しそうにニコニコしている笑顔とか、草gの優しさと子供っぽい純粋さが全面に活かされていたように思う。

  そして、1778話を書くラストシーン。この回だけは、筆は紙をすべらず空を切っていて何を書いたか中身は明かされない。ただ、最終話はSF小説ではなく節子へのラブレターだという。天国にいるせっちゃんだけが知るサクの心の声。その原稿用紙をサクがふわりと空へ羽ばたかせる時、青く広い空の彼方にせっちゃんの笑顔を見た気がした。
(中西 奈津子)ページトップへ
   
             
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