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★家族の庭
(C)2010 UNTITLED 09 LIMITED, UK FILM COUNCIL AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
『家族の庭』 (Another Year)
〜映画は冬で終わるが,人生にはまた春が来る〜

(2010年 イギリス 2時間10分)
監督・脚本:マイク・リー
出演:ジム・ブロードベント,ルース・シーン,レスリー・マンヴィル
    ピーター・ワイト,オリヴァー・モルトマン,
    カリーナ・フェルナンデス,デヴィッド・ブラッドリー,
    マーティン・サヴェッジ

2011年11月26日(土)〜銀座テアトルシネマ、テアトル梅田、
12月10日(土)〜シネ・リーブル神戸、近日〜京都シネマ、
他全国にて順次公開
公式サイト⇒  http://www.anotheryear-movie.com/

 トムとジェリーは,18歳で出会い,互いに支え合ってきた初老の夫婦だ。トムは地質学者で,ジェリーは心理カウンセラーとして働き,余暇にガーデニングを楽しんでいる。彼らの家には,息子ジョーはもとより,ジェリーの職場の同僚メアリー,トムの幼馴染みのケンらが訪ねてくる。夫婦は,これらの人々を無批判に受け止めることはないが,冷淡に突き放すこともない。おそらく,その程よい距離感が周りの人々に安心感をもたらすのだ。
 ケンは,休暇を過ごす相手が誰もおらず,自分の居場所さえ失い,メアリーに近付くが拒絶される。また,トムの兄ロニーは,妻を亡くして生きる気力を失う。その息子カールは,満たされない思いを抱えて苛立ち,誰にも心を開くことができない。一方,ジョーの恋人ケイティは,どんなときでも笑顔を絶やさず,現実の苦さをユーモアで包み込んでいく。人生の厳しさが渦巻く中でも,何とか折り合いをつけて生きていかなければならない。
 春・夏・秋・冬と移り変わる季節を背景として,ストーリーよりもキャラクターに重点を置き,人生の哀歓をスクリーンに反映させていく。マイク・リー監督の特徴は,脚本に描き込まれた人物を俳優に演じさせるのではなく,俳優の即興を重ねながら脚本を練り上げていくことにあるという。リハーサルを繰り返すことで,スクリーンに表れない登場人物のそれまでの人生が俳優の中で醸成され,その人物像に奥深さが生まれてくるのだろう。
 監督は,メアリーに焦点を絞っていく。彼女は,結婚や恋愛に破れ,孤独や悲しみを抱えているが,前向きな姿勢を失わず,自分にマッチしたパートナーを求め続ける。ラストでは,楽しげに話しながら食卓を囲む人々をカメラがゆっくりと一人ずつ映していく。ジェリー,ケイティ,ジョー,トム,ロニー,そして最後にストップしてメアリーの表情を映し続ける。自分の人生を改善するための新たな選択をする,その直前の姿が胸に染みる。
(河田 充規)ページトップへ
(C)2010 UNTITLED 09 LIMITED, UK FILM COUNCIL AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
   
             
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